『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』を2025年10月10日に読んだ。
目次
- メモ
- 問題解決は服を選ぶのと同じ p29
- 「バレなければOK」もアリ p30
- 抜け道にはリスクもある p32
- p47
- p65
- ビジネスに唯一絶対の正解はない p66
- 自分が関わることで状況は改善するか p68
- 雨を止めようとしていないか p70
- 確定した事実は変えられません p73
- 有名な例題「エレベーターが遅い問題」 p74
- 「エレベーターが遅い」は問題の本質じゃない p76
- 調べものはストレスフリーで p82
- ムダ玉は極力撃つな p86
- 決裁者の基準は何か p88
- 「誰かが損する」を受け入れる p89
- 最適解を選んでも誰かが損をする p90
- 完璧よりも、そこそこのものを早く p100
- 処理速度が速いと労力も少なくて済む p102
- 知り合いが多いほど解決力は高くなる p112
- 「パクる」はビジネスの王道 p115
- ライバル企業に潜り込むのが近道 p117
- p126
- そのリスクは、唐辛子系か?わさび系か? p128
- 「やめたほうがトク」というカード p131
- 負け戦の賢い戦い方 p134
- 判断材料はつねに変わる p139
- 情報を組み合わせると答えを出せる p143
- スキル×スキル=希少性 p154
- お客は待たせてもいい p174
- 将来どう評価されるか p177
- 他人の感情やモラルは考慮しない p186
- 「やらないほうがいい」は合理的な結論 p190
- 上司は教育できない p202
- 世帯課税は若者にとっておいしい p260
- 非大卒の成功モデルがない p267
- 事実が増えると正しい判断ができる p277
- 負けたときに何を得られるか? p279
- どんな問題でも解決できる究極の方法 p280
メモ
問題解決は服を選ぶのと同じ p29
「問題解決」というと、最近ではビジネス書のテーマとしても人気のようですが、別に難しいスキルではありません。
たとえば、大きなプロジェクトのプレゼンがある日に、どういう選択をするか。
・スーツを着ていったほうがいいのか、それとも普段着のほうがいいのか
・取引先との交渉にどんな店を選ぶのか
・連れていくメンバーは同性がいいのか、異性がいいのか
どれを選択するかで成功確率は変わってきます。
じつは、こういう選択や判断も問題解決のスキルだったりします。
なので、別に難しいスキルではなくて、誰でもふだんから使っている能力なんですよね。
ちなみに、問題解決と似た言葉に「課題解決」があります。
この違いは、問題が表面化しているか、していないかにすぎません。
まだ問題になる前の状態なら「課題」ですし、すでに表面化していたら「問題」という違いで、どちらも解決のプロセスは同じです。
問題解決力が高い人は自分で問題を設定することもできるので、目標を実現する能力も高くなるでしょう。
というわけで、本書では初めて、僕の問題解決のメソッドを体系的に説明したいと思います。
「バレなければOK」もアリ p30
ただ、僕の問題解決の方法は、ほかの人とかなり違うかもしれません。
僕は問題解決をするときに、人から“ずるい”と思われる手段も含めて解決策を考えます。
「ずるい」にもいろいろあります。
法に触れなければアリの場合もあるし、バレなければOKの場合もあります。
たとえば、2005年に、堀江貴文さん率いるライブドアがフジテレビの筆頭株主だったニッポン放送を買収しようとして、大きな騒動になりました。
メディアでも連日報道され、時間外取引で株を買い占めるのはずるいという論調が高まったりして、結局買収は実現しませんでした。
でも、株を売りたい人と買いたい人がいて、時間外取引という仕組みは存在しているのだから問題はないはずです。
それがずるいのであれば、そのシステムをなくせばいいだけなので。
実際、この買収騒動のあとに証券取引法が改正されたので、それまでは合法だったということになります。
このように、人が「ずるい」と言うときの大半は感情論なので、何かを判断するときに考慮する必要はないんです。
他人の感情や世間体、モラルなどは時間が経てば変わる不確定要素なので、考えるときの軸にしないほうが問題は解決しやすくなります。
なので僕は、物理的な被害や被害者がいないのであれば、問題解決をするときにずるい手を使うのはアリだと考えています。
抜け道にはリスクもある p32
冒頭で書いたように、僕は問題解決をするときには、まず「どこかに抜け道はないか?」と考えます。
ふつうの人がやるだろう正攻法を想像したうえで、「それよりも効率的な解決法はないかな」と考えるんです。
でも、抜け道を選ぶということは、もちろんリスクもともないます。
そもそも抜け道が見つからないこともありますし、進んでみたら行き止まりというケースもあります。
誰も通ったことがないけど成功確率が高い抜け道なんて、そうそう見つかりません。
ノーリスクの最短ルートがあったら、みんなその道を選びますからね。
だから、最短ルートを選ぶ代わりに何かをあきらめる場合もあるので、そのリスクが許容できるものかどうかを確認する必要があります。
僕のリスクの許容範囲は人とずいぶん違うかもしれませんが、本書では、ふだんから僕がやっているリスク評価のコツや耐性の考え方もまとめました。
あと、勘違いしてはいけないのは、抜け道を見つけたからといって努力が不要になるわけではありません。
抜け道を使っても、最後に「この部分だけは努力しないと成功しないよね」という部分だけは残るときもあります。
なので、この本でいう「抜け道」というのは、考え方です。
自分の考え方を少し変えることで、ムダな努力や回り道をしなくて済む、という意味です。
「どこかに抜け道はある」
そういう前提で物事を見るクセをつけると、結果として抜け道を見つけやすくなります。
成功体験と失敗体験を積み重ねていくと、だんだんと抜け道を見つけるコツが身についていきます。
そうしたらきっと、いまよりも、人生でうまくいく確率が上がるはずです。
p47
いまの時代は、勉強をする方法がたくさんあります。
お金や時間といったリソースがたっぷりあるなら、好きなだけ費やす方法で勉強すればいいのですが、大半の人はリソースに限りがあります。
だからこそ、どんな方法を選ぶかはとても重要です。
ケチだからといって問題解決力が高くなるわけではないのですが、お金を持っていない人のほうが抜け道を見つける確率は高いかもしれません。
お金がないほうが「何とかするにはどうすればいいか?」と必死に知恵を絞るからです。
お金がある人は「お金を払って解決すればいいじゃん」となるので、そもそも抜け道を見つける必要もないですしね。
p65
まず、問題が起きてから解決するまでのプロセスは、次の4つのステップに分けられます。
STEP1 問題を分析する
STEP2 情報を集める
STEP3 解決策を立てる
STEP4 解決策を実行する
この4ステップは、わりと一般的なプロセスだと思うのですが、それぞれの工程で「どう考えるか」「どういう選択をするか」で、かかる時間や労力、そして手に入る結果がずいぶん変わってきます。
ビジネスに唯一絶対の正解はない p66
目の前で問題が起きたとき、あなたならまず何をするでしょうか?
問題解決をするときに、最初にすべきなのは、「それがどんな問題か」を把握することです。
問題はタイプによっていろいろな分け方ができるのですが、僕はまず2つに分けて考えます。
よく使うのは、その問題はすでに「答えがわかっている問題」なのか、それとも「答えがわかっていない問題」なのか、という分け方です。
「答えがわかっている問題」というのは、「鎌倉幕府をつくったのは誰か?」や「この三角形の面積を求めよ」といった、学校のテストで出るような問題のことです。
こうした問題は、教科書を読んで調べたり、公式を覚えたりすれば誰でも答えを導き出せます。
すでに誰かが答えを出している問題や「答えがわかっている問題」は、自分で考え答えを出そうとするのは時間のムダなので、調べてしまったほうが速いです。
一方で、社会に出てから直面する問題は、「答えがわかっていない問題」のほうが多いでしょう。
こちらは学校の勉強のように、唯一絶対の正解はありません。
たとえば、「新商品がまったく売れないけれど、どうしたら売上を伸ばせるか?」という問題に、絶対の正解を見つけ出すのは難しいでしょう。
パッケージのデザインが悪いのか。
それとも、宣伝の仕方が悪いのか。
ひょっとしたら、そもそもその商品自体に魅力がないからかもしれません。
さまざまな原因と仮説が考えられるので、一概に「これが答えだ」と特定できることのほうが少ないでしょう。
このように、大人になってから直面する問題の多くは、「答えがわかっていない問題」です。
なので、この本で取り上げる問題は、基本的に「答えがわかっていない問題」になります。
自分が関わることで状況は改善するか p68
問題を整理する方法は、ほかにもあります。
僕がよく使うのは、「自分が関わることで状況が改善する問題」か、それとも「自分が関わっても結果が変わらない問題」か、という分け方です。
たとえば、目の前で人が倒れていて、たまたま通りがかった医者が医療行動をしていたとします。
命に関わるかもしれない大きな問題なのですが、その場で僕にできることはあまりないんですよね。
医者に「何か手伝うことありますか?」と聞いて、「救急車呼んでください」と言われたら、119番に電話する。
あとは傍観者でいるしかありません。
もちろん、自分が関わることで状況が改善する問題であれば、自分ができることをするのですが、この例のように大きな問題だったとしても、自分が関われることがない場合もありますからね。
あとは、「いますぐ解決しなければいけない問題」か、「問題が起こるまで放っておいてもいい問題」か、と緊急度で分ける方法もあります。
もし、「1年後に地球に巨大隕石が落ちてきます」となったら、あなたなら、どうしますか?
たぶん僕は、何もしないと思います。
人類がどうがんばっても避けられる問題ではないので、もう「これはムリだな」とあきらめます。
むしろ、残りの1年間をどうやって楽しく暮らすかを考えるでしょう。
仮に、隕石が衝突することを僕だけが知っていたとしても、何もしません。
世界に知らせたり、みんなで脱出方法を考えるといった活動をし始めると、たぶん世界中がパニックになって、もっと面倒くさいことになると思うので、黙っています。
このように問題の整理の仕方はいろいろあるのですが、僕は「自分が関与しても結果が変わらない問題」や「放っておいてもいい問題」などは、いくら考えても仕方がないと思っているので、基本的に関与しないようにしています。
雨を止めようとしていないか p70
問題点を正確に把握するうえで、大事なことがあります。
それは、問題と事実を切り分けることです。
たとえば、あなたが外を歩いていたら雨が降ってきたとします。
この場面で、「さて、どうやって雨をやませようか」と考える人はいないですよね。
ふつうは、傘をさすか、雨宿りをするか、濡れて帰るかといった対処法になるでしょう。
「雨が降ってきた」というのは、事実であって、問題ではありません。
雨の例を出すと、「それはそうでしょ」と考える人が多いと思うのですが、問題と事実をごっちゃにしてしまうケースはよくあるんですよね。
それは問題なのか、それとも事実なのか?
自分の力でどうしようもできない、すでに確定した事実は、どんなにかんばっても変えることはできません。
だから、それは問題ではなく、事実として受け止めるしかないのです。
あえて極端な例を挙げますが、たとえば僕が事故で左手を失ったとします。
もし自分がそうなったら、大きなショックを受けたり、後悔したりする人が多いでしょう。
でも、もし僕がそうなったとしても、「あの道を通らなければ事故を避けられたかもしれない」「事故の前に戻れたら」とは、おそらく考えないと思います。
事故にあって左手を失ったことは、もう変えようのない事実なんですよね。
だから、僕はそれよりも、「左手なしでどうやって暮らしていくか」を考えることに時間を費やすでしょう。
最近はテクノロジーが進んでいて、人間の神経系に直接接続して動かせる義手なども開発されているので、最新の研究状況を調べてみたり、「この研究に参加したらタダで義手をもらえるかな」と研究チームに連絡を入れたりするかもしれません。
昔は義手を買うとなると100万円以上していたのですが、近年は3Dプリンターなどでつくられた、安くておしゃれな義手も登場しています。
実際、SNSなどを見ると、かわいい義手やカッコいい義足など、思い思いのデザインを施した義肢をつけている人はたくさんいるんです。
義肢のモデルやアイドルなど、自分らしく生きている人たちもいます。
そういう情報を知っていると、問題に直面したときにも、考え方の選択肢が増えると思います。
確定した事実は変えられません p73
もちろん僕も、ふとしたときに「ああ、左手なくなったんだなあ」と考えることはあるかもしれません。
でも、それよりも義手の能力をいかに高められるか、左手を失ったことをどうプラスにできるかに頭を使う気がします。
なかには、「もし自分がそうなったら、そんなに割り切って気持ちを切り替えられない」と思う人もいるでしょう。
でも、じつは問題と現実を切り分けることは、何も特別な考え方ではなくて、たいていの大人はやっていることなんです。
たとえば、40歳すぎて「オレもイケメンだったらジャニーズに入れたかも」とか「もう少し足が速ければオリンピックに出られたのに」と本気で思い続けている人って、あまりいないですよね。
たいていの人は、大人になるまでの間に「これはもう変えようがないよね」という事実をいくつも受け入れてきたはずなんです。
少し極端な例を挙げてしまいましたが、どんな人でも自分でコントロールできない、確定してしまった事実は変えられません。
なので、問題解決においても、問題と事実をきちんと切り分けたほうが、合理的な解決策を導き出せると思います。
有名な例題「エレベーターが遅い問題」 p74
問題を整理するうえで、もう一つ重要なことがあります。
それは、どこが問題点なのかを見極めることです。
この問題点の見極めがじつは難しくて、問題の本質を見誤ると解決策も間違えてしまいます。
「問題点を見極める」のが大事なことがよくわかる、有名なエピソードがあります。
ある古いオフィスビルで、テナントに入っている企業やビルの利用者から「エレベーターが遅い!」というクレームが増えて問題になっていました。
エレベーターは2台あるのですが、どちらも制御システムが古くて、昇降スピードも遅いので、待ち時間が長いというクレームです。
さて、あなたがオーナーなら、この問題をどうやって解決するでしょうか?
まず思いつくのは、
・高層階用と低層階用に分ける
・最新の制御システムに取り換える
・エレベーターの台数を増やす
といった解決策でしょう。
このビルのオーナーも、専門家に調べてもらったところ、こうした解決策を提案されました。
でも、いずれも費用がかかりすぎて、このビルの賃料収入ではムリでした。
その間もクレームはなくならず、困りはてたオーナーは部下にアイデアを出させます。
そして、そのアイデアを採用したところ、最小限の費用でクレームは1件もなくなりました。
いったいどんな方法をとったのでしょうか?
「エレベーターが遅い」は問題の本質じゃない p76
その解決策は、「各階のエレベーターの前に大きな鏡をつける」でした。
エレベーターの前に鏡を設置してみると、待っている人は身だしなみや髪を整えたり、お化粧のチェックをしたりして、待ち時間が気にならなくなったそうです。
このエピソードのポイントは、オーナーにとって「問題の本質は何か」なんです。
問題の本質は「エレベーターが遅い」ことではありません。
「クレームをなくす」ことだったのです。
だから、クレームさえなくなれば問題は解決するので、別にエレベーターが遅いままでもかまわないわけです。
実際、エレベーターの待ち時間はまったく同じなのに、鏡を設置したら誰も困らなくなったわけですからね。
もし、「エレベーターが遅い」ことが問題の本質だと思い込んでいたら、エレベータを速くするために最新の制御システムに取り換えたり台数を増やしたりして、お金も時間もかかります。
でも、そのわりに数十秒速くなっただけなら、体感的にはあまり待ち時間が変わらず、もしかしたらクレームは続いていたかもしれません。
その意味でも、問題点を見極めて、最小限のコストで利用者の不満を解消したこのエピソードは、見事ですよね。
それだけ問題点を見極めることが重要だ、というお話です。
調べものはストレスフリーで p82
僕は半分引きこもりのような生活をしているので、おそらくふつうの人よりもネットで調べものをしている時間が長いと思うのですが、情報収集をするときにマイルールがあります。
それは、「ネット検索をするときには、スマートフォンを使わない」です。
出先でどうしてもというときに使うことはありますが、基本的にネット検索はパソコンでします。
なぜかというと、調べものは極力、ストレスフリーでしたいからです。
まず、僕は検索結果を100件表示にしています。
1度に見られる情報量をできるだけ多くするためです。
検索結果をスクロールしながら使えなさそうなタイトルはどんどんスルーして、信用できそうなタイトルだけを次々に開いていきます。
でも、スマホだと10件表示とかになるので、1件ごとに次の検索結果を読み込まないといけなくて、何倍も時間がかかるんですよね。
あと僕は、信用できそうなページを、タブで次々に開きます。
4つ、5つのページをパーッと流し読みしていって、使えなさそうなページがあれば次のタブにどんどん移る。
こうすると、たいていの調べものは1分くらいで済んでしまいます。
信用できなさそうなページに関しても、パソコンなら画面が大きいのでページを開いたらパッと見ただけで「このページはヤバいな」って見抜けるんです。
でも、スマホは画面が小さいので、かなりスクロールしないと判別できないのも面倒です。
おっくう調べている最中に億劫に感じるとやらなくなってしまうので、ネット検索はできるだけストレスがたまらないようにしています。
ムダ玉は極力撃つな p86
情報収集をする際に、僕が大事にしているのはヒアリングです。
たとえば、仕事で新規事業の話を持ちかけられたとします。
僕はそういうときには、予算やスケジュールはもちろん、目的やゴールは何か、決裁者が誰かまでしっかり聞きます。
「目的はこれですよね」「このかたちだったら予算内に収まりますか?」などと、担当者に一つひとつ確認しながら進めていきます。
クライアントなどの相手がいる問題や目標の場合に、とくに重要なのは「相手の目的が何か」です。
たとえば、新しくマンガのサイトを立ち上げたいという場合なら、売上を上げたいのか、単にマンガが好きだから始めたいのかを、最初にはっきりさせます。
おしゃれな新規事業を立ち上げて華々しく見せたいと思っている会社に、儲かる事業を提案しても時間のムダですからね。
だから、できるだけ相手に直接ヒアリングして、極力ムダ玉を撃たないようにします。
僕はわりと人にずけずけと質問するタイプなのですが、さすがにビジネスのときはストレートに聞きません。
「こういう感じはどうですか?」などと提案すると、「それならこっちのほうが」などと返ってくるので、何回か質問して相手のニーズを絞り込んでいきます。
ほかにも、「売上は伸びるんですが、担当者の人が忙しくなるプランと、あまり売上は伸びないけれど、そのぶん担当者は何もしなくていいプランがあります。どちらがいいですか?」などと、2択にして絞り込むこともあります。
決裁者の基準は何か p88
あと、必ず聞くようにしているのは、「決裁者がどういう基準で決めるか」です。
決裁者に直接聞けない場合は、担当者から過去の傾向などをヒアリングして、その範囲の中で松竹梅のようにバリエーションを提案して当てにいきます。
もちろん、予算の確認はマストです。
1000万円規模のプロジェクトなのか、億円規模のプロジェクトなのかで、やることはまったく違うので。
ときどき、「いくらお金がかかってもいいから」と言う人もいますよね。
僕はそういうときには、「じゃあ、20億円ください」って返すようにしています。
すると、絶対にOKにならないんですよ。
そういう人に限って、じつはそんな権限を持っていなかったりします。
問題解決であれ目標達成であれ、できるだけムダ玉を撃たないためには、しっかりヒアリングをして相手のニーズを絞り込むことが重要です。
「誰かが損する」を受け入れる p89
情報収集の次は、解決策の立案です。
解決策を考えるときに、多くの人が陥りがちな間違いがあります。
それは、「みんなが満足する解決策」を考えようとすることです。
残念ながら、世の中の大半の問題には、すべての人が満足する解決策はありません。
ほとんどの問題は、これまでに頭のいい人たちがあれこれ考えたりしているので、誰も損をしない解決法があれば、すでに実現しているはずなんです。
だから、解決策を考えるときには、「誰かは損するけど、こういうかたちでやったら、もう少しうまくいく」とか、「ある程度のマイナスを許容してプラスにする」という方法しか、たいてい残っていません。
なので、「国民全員やすべての利害関係者とか、みんなが満足する解決策は基本的にもうないよね」という前提を、まず受け入れるところから考えたほうが近道だと思います。
もちろん、誰にもメリットがない解決策だと問題解決にはなりません。
なので、解決策を考えるときには、まず「みんな」ではなく「誰にメリットがあるかたちがいいのか」を最初にはっきりさせることが大事です。
最適解を選んでも誰かが損をする p90
では、ビジネスの問題解決の場合は、誰のメリットを考えればいいのでしょうか?
答えはシンプルで、「決定権を持っている人」です。
僕は初めて仕事をする相手には、必ず「この仕事は誰がOKを出したら進むのですか?」と聞くようにしています。
決定権を持っていない人の意図に合わせて、いくらクオリティの高いものを提案しても意味がないですからね。
なので、最初に決裁者がどんな意図や目的でやりたいのかを明確にさせます。
たとえば、ある人が自ら会社を立ち上げて、たとえ赤字になっても成功するまでやり続けると決めたプロジェクトがあるとします。
ふつうなら利益の最大化が会社にとってのメリットなのですが、この場合、利益よりも社長の「このプロジェクトを成功させたい」という思いのほうが重要なんですよね。
だとしたら、たとえ万年赤字であってもプロジェクトを続けることこそが正解になるんです。
というわけで、解決策を考えるときには、最初に「誰にとってのメリット」が求められているのかを確定させます。
「誰にとって」の「誰」は自分の場合もありますし、お客や上司、奥さんの場合もあるでしょう。
一方で、ターゲットを絞ると、導き出した解決策に不満を持つ人も出てきます。
でも、みんなが満足する解決策はないので、そこはもう割り切るしかありません。
たとえターゲット以外の人たちが納得しなかったり、マイナスを被る解決策であっても、ターゲットが納得しているのであれば、それが最適解だと思います。
完璧よりも、そこそこのものを早く p100
さて、解決策を立てたら、次はそれを実行に移すのですが、解決策を実行するときにも大事なことがあります。
それは、「100点を目指さないこと」です。
どういうことか、例を出して説明しましょう。
たとえば、取引先に納品するときに、完璧なクオリティを目指して2週間かけて納品するのと、70点の完成度だけど3日で納品するのとでは、ビジネス的にはどちらが正解でしょうか。
もちろん、クオリティもスピードも期待以上の結果を出せるのがベストですが、それができるのは一握りの人だけです。
だとしたら、それ以外の人はどちらを優先したほうがいいのでしょうか?
学校のテストであれば2週間かけても100点を取ったら褒められるでしょう。
学生時代はそれでOKなのですが、社会人になるとルールが変わります。
ビジネスでは、2週間で100点よりも3日で70点取る人のほうが評価されたりします。
取引先にしてみれば、「2週間かかるんだったら、3日で仕上げてくれる人に頼むわ」となりますからね。
なので、短い時間である程度の結果をポンポン出せたほうが売上は増えると思います。
処理速度が速いと労力も少なくて済む p102
そもそも、社会に出ると、学校のテストのように絶対の正解がある問題のほうが少なくなります。
たとえば、新商品のデザインがAとBの2案あって、どちらがいいかを考えても、正解はないんですよね。
仮にAを選んでよく売れたとしても、もっと売れるデザインがほかにあったかもしれません。
Aが正解だったという証明はできないですからね。
なので、ビジネスでは、唯一絶対の正解は基本的にありません。
だから、許容範囲であれば、さっさと答えを出して、次に移るほうが賢明です。
80点のものを100点にする労力に比べたら、50点のものを70点にするほうが難しくないですからね。
クオリティを高めることにコストをつぎ込むぐらいなら、「ある程度解決しているから、もう次」と割り切って、サクサク進んだほうが効率的なのは言うまでもありません。
もちろん、医師や弁護士のようにミスが許されない仕事は別ですが、問題解決の場合は、処理速度が速ければ速いほど時間や労力といったリソースも少なくて済みます。
費用対効果で見ても、処理が速いほどコストが下がって利益は高くなりますからね。
知り合いが多いほど解決力は高くなる p112
丸投げというと無責任に聞こえるかもしれませんが、いろいろとメリットもあるんです。
仕事を丸投げするときには、できるだけ自分が何もしなくてもいいように、デザインはあの人に振ろう、プログラムはシステムをつくって自動化しよう、この作業は全部丸投げしようとあれこれ頭を使います。
その結果、仕事を割り振るスキルが上がるんですよね。
仕事を振った相手がどれくらいのパフォーマンスを上げるのかは、振ってみないとわかりません。
いざ振ってみたら思っていた以上の成果を上げたり、仕事ができそうに見えたのにじつは頼んではいけない人だった、というケースも当然あります。
でも、たとえ失敗したとしても、スタッフの能力を知る機会になるので、得られるものはあるんです。
「人に振る」メリットは、自分がラクになるだけではありません。
振られた相手にもメリットはあります。
たとえば、上司が仕事の割り振りを決めたら、部下たちは言われたとおりにやるしかありません。
でも、丸投げされると、すべて任されるわけなので、振られた人は仕事の割り振りを考えざるをえません。
自分で担当する仕事と人に振る仕事を分けて、それから誰に何をお願いするかなどに頭を使います。
じつは、これって管理職のスキルなんですよね。
だから、丸投げされた人はもちろん大変なのですが、処理するうちにマネジメントの経験値が上がることになります。
どうでしょう。
丸投げにも、いろいろなメリットがあることがわかってもらえたかと思います。
自分のお金や時間といったリソースは限られているので、それをいかに最小限にして処理するかは、仕事であれ問題解決であれ基本です。
一生懸命がんばって儲けるよりも、何もしなくても成果が上がる仕組みを増やしたほうがラクなのは言うまでもありません。
いずれにせよ、問題解決する場合は、自分以外の人のリソースを使うことも多いので、知り合いが多い人のほうが解決能力は高いとも言えます。
「パクる」はビジネスの王道 p115
ある日、あなたは上司に呼び出されて、新商品の開発を任されたとします。
上司から与えられたこの課題を、もっとも効率よく解決するには、どうしたらいいでしょうか?
新商品や新規事業の開発をするときに、いちばん賢い方法は、成功例を「パクる」ことです。
たとえば、ライバル社がヒット商品を出していたら、最初にやるべきことは「マネ」です。
ヒットした商品は、ライバル社がいろいろと試行錯誤した末に世に出した最適解なわけです。
だから、まずはマネしてみて、そのうえで改良できる部分があれば変えていくのが、いちばん効率的です。
パクるというと抵抗感がある人もいるかもしれませんが、成功例をマネることは、じつはビジネスの王道だったりします。
地方で大人気のあんパンをパクって東京で似たようなアンパンを売るといった事例は、昔からいくらでもあります。
いわゆる「2匹目のドジョウ」を狙う手法ですね。
ソフトバンクグループの会長の孫正義さんも、欧米で成功したビジネスモデルやサービスを日本に持ち込んで、ヤフーやイー・トレード証券といった会社を大きくさせました。
これは「タイムマシン経営」と呼ばれて、もてはやされましたが、要は海外の成功モデルのマネですからね。
タイムマシン経営のように「場所を変えて売る」は、パクリの基本です。
海外を見ても、少し前にアマゾンのパクりがニュースになっていました。
アマゾンは「アマゾンベーシック」というプライベートブランドを展開しているのですが、そこで扱っている商品が中国などの新興メーカーが出しているものとそっくりなんです。
海外メディアからも、アマゾンベーシックは他社の売れているデザインなどをコピーして販売していると指摘されています。
新興メーカーの商品よりもアマゾンベーシックのほうが値段が安いので、似たものをつくって同じ場所で売ったら、そりゃあ売れるよね、という話です。
自分たちより大きな会社にパクられると、もう勝ち目がないうえに、いつのまにかオリジナルのほうが、「お前たちパクっただろ」と責められたりしますからね。
ライバル企業に潜り込むのが近道 p117
本気で成功例をパクろうとするなら、手っとり早い方法があります。
それは、「成功している企業に潜り込む」です。
たとえば、近所に大行列のピザ屋ができたとします。
「どうやって成功させたんだろう」と思ったら、バイトでもいいのでその店で働いてみるのです。
そうすると、オペレーションやノウハウなどを自分の目で確かめられます。
わざわざゼロから試行錯誤するよりも、うまくいく可能性は間違いなく高いでしょう。
僕が新規事業を立ち上げるなら、まっさきにライバル企業に潜り込むと思います。
こういうパクリは、ビジネスの世界に限った話ではありません。
音楽や映画でも珍しくないですからね。
もちろん、パクリにはリスクがあります。
そのままパクると、たいていはバレます。
なので、バレたときに訴訟沙汰になるパクリなのか、「仕方ないな」と許されるパクりなのか、境界線は見極めないといけません。
見た目やネーミングがまったく同じだとさすがに問題になるので、デザインや機能を少し変えるなど、最低限の作法は守ったほうがいいでしょう。
何度も書いたように、たいていの問題や課題はすでに誰かが解決策を試しています。
なので、ヘタにコストをかけていろいろ調べたり予測を立てたりするよりも、最初から成功例をマネして売れるかどうか試してみて、さっさと答えを出したほうが速いです。
業界や商品にもよりますが、たいていは先行例をパクる、マネるで、解決できることのほうが多いですからね。
p126
リスクに対しては、日本人は過剰に恐れる傾向があります。
「なんとなく怖いからやめておこう」という心理ですね。
でも、そういう人に「やってみたら、どういうリスクがあるの?」と聞いてみると、たいてい「起きていないからわからない」と答えます。
つまり、「何が怖いのか」も「どんなリスクがあるのか」もわからずに、ただ恐れているわけです。
僕は、こうした「なんとなく怖い」ことは、一度体験してみるようにしています。
いざ試してみると、じつはたいしたリスクがなかったというケースは少なくありません。
なので、僕はリスクに関しては、ゼロリスクを求めるのではなく、「そのリスクは許容できるかどうか」を考えるようにしています。
そのリスクは、唐辛子系か?わさび系か? p128
リスクがありそうな道は極力避けるという人もいると思うのですが、リスクは回避するよりも耐性をつけたほうがいい場合もあります。
僕はリスク耐性に関しては、「唐辛子」か「わさび」かで分けて考えています。
どういうことかというと、唐辛子の辛さって最初はただ辛いで終わってしまうのですが、食べれば食べるほど慣れて耐性がついて、どんどん辛いものを食べられるようになるんですよね。
でも、わさびは辛さの成分が違うので、いくら食べても耐性がつきません。
僕は、リスクを評価するときに、このどちらのタイプかで判断しています。
たとえば、お化け屋敷の怖さは、経験数を増やせば薄れていくので唐辛子系なんです。
クサい臭いなどもだいたい慣れていくので唐辛子系でしょう。
ほかにもいろいろなリスクがありますが、なかでも未知のものに対しては、僕は自分がどう感じるかを試してみたくなるタイプなんです。
20代の頃に廃墟ブームがあって、廃病院の手術室に数時間い続けたことがありました。
当然、最初は怖いんです。
でも、この怖い思いをずっと続けたら、怖さがどんどん大きくなるのか、だんだん小さくなるのか、それとも慣れて怖さを感じなくなるのか、どこまで耐えられるのかを限界まで試してみたかったんです。
その結果、このタイプの怖さは唐辛子系だとわかりました。
もちろん、これは僕の場合なので、あてはまらない人もいるでしょう。
いずれにせよ、人間には耐性があるので、リスクに対しても、「慣れれば対処可能なリスク」なのか、それとも「慣れないから逃げたほうがいいリスク」なのか、分けて考えると、逃げるときの判断もしやすくなります。
しかも、唐辛子系のリスクがあるものは、じつはチャンスだったりします。
多くの人は慣れれば対処可能なリスクと知らないので手を出しません。
でも、そのリスクが唐辛子系とわかっている人はチャレンジができます。
唐辛子系のリスクがあるものは自然と競争率が低くなるので、対処可能だと知っている人にとってはチャンスになるわけです。
「やめたほうがトク」というカード p131
会社などで、ある事業がうまくいっていないと、どうやって立て直そうかと議論になります。
たいていの場合は、「プランAがダメだったからプランBにしようか」などと、その事業を継続させることを前提に議論しますよね。
でも、僕はそういうときによく、「この事業ごと、やめたほうがトクなんじゃない?」と意見したりします。
じつは問題解決において、「撤退する」というカードは、けっこう大事なんです。
うまくいっていないビジネスは、利益が下がっています。
コストパフォーマンスを考えれば、利益がゼロになる前に撤退したほうがいいのは話し合うまでもありません。
でも、多くの人は、プライドや関係者に説明できないといった世間体から、その判断をギリギリまで引っ張り続けてしまうんですよね。
僕は撮影スタジオを運営している会社の役員をやっているのですが、新型コロナが日本で感染が広がり始めた2020年3月頃に、オフィスを全部なくしたんです。
防音工事に5000万円ぐらいかけたスタジオだったんですが、撤去に1500万円ぐらいかかりました。
新型コロナが短期間で収まるとはとうてい思えなかったので、損失をできるだけ小さくするには、すぐに撤退するしかないと判断したのです。
撤退を判断した理由はいくつかありました。
新型コロナの感染拡大の解決法は、治療薬が見つかるか、ワクチンができるか、突然ウイルスがなくなるか、の3択しかありません。
世界で最初に感染が広がった中国では、その時点ですでに新型コロナによる死者が大量に出ていました。
中国は遺伝子編集実験をやっているくらい技術が進んでいる国なので、おそらく新型コロナに関しても世界中の薬などを試したと思うんです。
その中国で感染を止められないということは、その時点ではワクチンも治療薬もないということになります。
結果的にワクチンの開発は予想よりもかなり早かったのですが、通常は5年、10年かかるものなので、短期的に収まる可能性は少ないだろう、と見ていました。
あと、当時は「夏になって気温が上がればインフルエンザのように感染者は減る」という意見もありました。
でも、香港やシンガポールなど平均気温が30度を超えている地域でも新型コロナは広まっていたので、温かくなっても終息しないのは調べればわかったんですよね。
その年の2月には日本に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号の中でも広まったので、これはもう世界中で感染を止めるのはムリだろうなという考えにいたりました。
その結果、もうオフィスは撤退するほかないなと判断したわけです。
負け戦の賢い戦い方 p134
こうした絶対に勝ちようがない状況のときは、いかに損失を少なくするかが大事なんです。
ビジネスの場合でも、勝ち目がないときには撤退して、また儲かるかもしれないときにもう一度挑戦したほうが、手元資金は減らないですからね。
でも、勝算がないときに、撤退や逃げるという判断を下せる人はあまりいません。
とくに日本人は、学校でも社会に出てからも、うまく撤退する方法を教わっていないんですよね。
太平洋戦争のときの旧日本軍と同じです。
負け戦のときに、どうやって撤退したらいいかを知らない人が多いんです。
なので、無理ゲーの場合は、いかにうまく撤退するかという考え方にさっさと変えたほうが、長期的には正解になると思います。
判断材料はつねに変わる p139
国の経済成長を示す指標にGDP(国内総生産)がありますが、じつはこれもコントロールできる数字です。
どういうことかというと、イタリアやイギリスではGDPに、売春や麻薬取引、密輸などの違法な経済活動も含めているんです。
EUでは各国に「財政赤字をGDP比の3%以内」「公的債務残高をGDP比の60%以内」に抑えるといったルールを課していて、違反すると制裁金を科されたりします。
だから、財政の厳しい国は地下経済の取引も加えて、GDPをかさ上げしているんです。
実際、イギリスではこうしたアングラマネーも加えたらGDPが約1%上がったといいます。
これは海外に限った話ではなく、日本でも国際基準に変更したり、基準年を変更するなどしてGDPの算出方法を変えて水増ししています。
これも、ある意味、ずるい問題解決ですよね。
実際、2021年末に、国土交通省が建設業の受注動向の統計でデータの改ざんを長年続けていたことが発覚しました。
この統計はGDPの算出にも使われていて、約4兆円多く計上していたと言われています。
このように、国際的に使われている指標であっても、算出方法によってコントロール可能な数字はいろいろとあるのです。
なので、統計データなどを見るときには、その数字の定義やコントロールが可能かどうかを確認することが大事です。
統計データ以外にも、疑ったほうがいいものはあります。
人は過去に学習した知識や成功体験を根拠にしがちですが、これも過信しないほうがいいでしょう。
たとえば、鎌倉幕府が成立した年は、僕が学生の頃は1192年と教えられたのですが、いまは1185年が正しいとされています。
ほかにも、昔は「努力しないやつが悪い」という見方をされたりしましたが、いまでは「努力できるかどうかも遺伝子の影響が大きい」という研究結果が出ています。
過去の知識や体験は、昔は正解だったかもしれませんが、いまは変わっているというケースも少なくありません。
判断するための材料が正しいかどうかは、時代や環境によっても変わるので、正しい判断を下すためには、その前提が間違っていないか、つねに疑問を持つクセを身に付けておくといいでしょう。
情報を組み合わせると答えを出せる p143
こうした、正確に把握することが難しい数量を、いくつかの手がかりから論理的に概算することを「フェルミ推定」といいます。
論理的思考力を試すために、グーグルやマイクロソフトはじめ企業の就職面接でも、このフェルミ推定の問題が出されたりしています。
問題解決においては情報収集が大事だと書きましたが、調べたとしてもかならずしも答えにたどり着けるわけではありません。
なので、調べてもわからない問題に「どうやって答えを出そうか」と考える力は、問題解決をするうえでも大事です。
じつは、答えを出すための手がかりになる情報は、すでに持っていたりするんですよね。
要は、それをどう組み立てたら答えを出せるかを知らないだけなんです。
そのときに、「この数がわかれば、全体の数もおおよそ出せるよね」と、知識を引っ張り出してムリやり答えを出そうとする訓練をしていくと、推測力はつくようになります。
正確な情報をすべて集めることは不可能なので、情報が欠けていても、いくつかの情報から推測できる能力があると、正解に近い答えにたどり着きやすくなります。
これは慣れだったりもするので、ふだんからムリやり推測するクセをつけておくと、知っている情報の組み合わせで正解っぽいものにたどり着けるようになるでしょう。
スキル×スキル=希少性 p154
問題を解決する際には、自分の武器を持っていたほうが解決しやすくなります。
武器が多ければ多いほど、成功確率も高まります。
ただ、こういう話をすると、「自分は学歴も職歴も外見もふつうだし、人に自慢できる特技もないから」と言う人がいます。
でも案外、自分が持っている武器に、自分で気づいていないケースが多いんですよね。
たとえば、ギターがそこそこ弾けたとしても、「ギター弾ける人なんてたくさんいるよね」と思いがちです。
でも、ギターを弾けるのは、じつは立派なスキルなんです。
本人にとっては当たり前のことなので、それをスキルだと思わなかったりするんですよね。
もちろん、それだけで食べてはいける人は少ないでしょう。
でも、仮にギターを弾ける人が3割なら、7割の人が持っていないスキルを手にしていることになります。
さらに、じつは書道も初段の腕前という人だったら、その二つのスキルを組み合わせたことをやればいいんです。
仮に書道の初段を持っている人が3割だとしたら、その二つのスキルを持っている人は30%×30%=9%になります。
もし、もう一つスキルがあれば、さらに自分の希少性は高まるわけです。
お客は待たせてもいい p174
身近な例で僕が「この人、問題解決力高いな」と思ったのは、川上量生さんです。
ニコニコ動画などを運営しているドワンゴの創業者で、現在はKADOKAWAの取締役や角川ドワンゴ学園理事などを務めています。
僕もニコニコ動画の管理人として、一時期一緒に仕事をしていました。
川上さんはドワンゴを起ち上げる前にソフトウエアの流通会社で働いていたのですが、そのサラリーマン時代のエピソードです。
あるとき、川上さんが初心者向けのモデムを企画したら、発売直後からバカ売れしたそうです。
ところが、付けていたマニュアルがたったの8ページの簡素なものだったので、購入者から「使い方がわからない!」とクレームが殺到しました。
会社の電話は2回線しかなかったのですが、その10倍以上の電話がかかってきて、朝から晩までサポートセンターの電話は鳴りっぱなし。
スタッフは4人しかいなかったので、電話対応も追いつきません。
しかも、そこに社長がやって来て、「全員で電話を受けろ!サポート時間を延長して、残業してでも電話をさばけ!」と怒鳴りつけたそうです。
かなりの修羅場ですよね。
そこで川上さんはどう対応したか?
ふつうなら、クレームが殺到したら「電話回線や電話対応のスタッフを増やそう」と考えると思うのですが、川上さんの対応はその真逆でした。
電話回線を減らしてしまったんです。
社長の命令をガン無視して。
どういうことかというと、2本あった電話回線を1本にして電話対応の人を減らしたぶん、マニュアルのつくり直しに人を投入したんです。
そして、大急ぎで初心者にもわかりやすいカラフルなマニュアルを作成して、登録ユーザー全員に発送しました。
さらに、音声と写真でモデムの接続と設定を解説したCD-ROMのマニュアルもつくってユーザーへ無料配布したそうです。
その結果、どうなったでしょう。
ユーザーから感謝の手紙が大量に届いたんです。
「買ったあとにもサポートされるなんて思ってもみなかった」「初心者にも本当にわかりやすいマニュアルを、ありがとうございます」と顧客満足度は爆上がり。
その結果、消費者向けのモデム市場でシェアがトップになったそうです。
将来どう評価されるか p177
川上さんの問題解決のどこがすごいかというと、「未来から見た正解」に徹したことでしょう。
いままさに問題が起こっている最中だと、「お客さんは絶対に困らせてはいけない」「クレームはすぐに対応すべき」が正解だと思いがちです。
でも、未来から見たら、必ずしもそれが正解とは限らないんですよね。
川上さんは回線を減らすときに、「20回線分以上の電話がかかってきているんだから、2回線つながらないのも1回線つながらないのも大差ない」と判断したと言います。
時間が経てば電話がつながらなかったことなんて誰も覚えていませんし、回線を減らしたことも言わなければわかりません。
実際、その会社は、回線を減らすという対応をとったにもかかわらず、「トラブルに対してサポートCD-ROMをいち早く送ってきてくれる、いい会社」という評価を得られたわけですから。
問題が起きたときに「将来どう評価されるか」という視点から解決策を考えられる人は少ないので、やっぱり川上さんは問題解決力が高いといえます。
他人の感情やモラルは考慮しない p186
もちろん問題が起きたときに、全員が満足する解決策があれば、そのほうがいいに決まっています。
でも、そんな方法があるなら最初にやっているはずなんです。
日本の組織では、何かを決めるときによく多数決をとります。
多数決というと一見、公平のように思われがちですが、多数決は少数の人を切り捨てる方法ですからね。
なので、問題を解決しようとするときには、他人の感情を考慮しないほうが、結果的にうまくいくことが多いです。
感情と同様に、モラルや世間体などは時間が経てば変わる不確定要素なので、考えるときの軸にしないほうが合理的な判断ができます。
「やらないほうがいい」は合理的な結論 p190
そもそも新しいビジネスは、真面目に分析すればするほど、結論は「やらないほうがいい」になってしまうんです。
いままでに誰も思いついたことのないビジネスなんて、ほぼありません。
「なぜ誰もやらなかったのか?」を一生懸命に分析したり、前例を調べれば調べるほど、やらないほうがいい理由が多く見つかるものです。
だから、頭のいい人が新規事業をやるかどうかを合理的に考えたら、「やらないほうがいい」という結論になってしまいます。
イノベーションや発明って、案外、頭のよくない人がたいして調べもせずに、「これいけるんじゃね?」って勢いでやってみたら成功しちゃったりするんです。
「いままで誰も成功していないんだけど、オレならできる!」といった根拠のない自信や野心にあふれた人とか。
実際、一から起業して一代で会社を大きくしたような経営者は、どこかリミッターが外れたかのように突き進める人が多いですからね。
上司は教育できない p202
それでも会社が無能な上司を残すという判断をしたら、それはもう会社の方針なので、部下たちの力ではどうしようもありません。
もし、その上司が社長の愛人で辞めさせられないといったおかしな状況が続くのであれば、そんな会社にはさっさと見切りをつけたほうがいいかもしれません。
会社の方針として認めているのか、辞めさせられない理由があるのか、まずは状況をきちんと把握してみてください。
ときどき、無能な上司を教育して使えるようにしようとする人もいますが、それはやめたほうがいいでしょう。
どんなに無能だとしても、上司を教育しようと考えるのは基本的に間違いです。
まともな上司であれば、部下から問題を指摘されたらそれを気にして、直しているはずなんですよね。
それができないような人を教育することは、おそらく不可能なんじゃないでしょうか。
そもそも、上司は自分よりも立場が上で決定権も持っているので、そんな人を教育できるとは考えないほうが賢明です。
自分がもっとがんばったら「あの人を変えられるんじゃないか」とあれこれ考えても、ストレスが大きくなるだけなんですよね。
変わることができない人に対しては、ダメな人はもうダメなんだと割り切ったほうが、ラクになれると思います。
なので、どうしようもないと思ったら、さっさと見切りをつけて転職することをおすすめします。
世帯課税は若者にとっておいしい p260
自治体でも結婚率を高めようと、出会いの場をつくったりしていますが、出会いの機会にはなっても結婚のモチベーションとしては弱いんですよね。
それよりもむしろ、僕は世帯課税を導入したほうがいいと考えています。
所得税は日本では個人単位で課税されますが、フランスだと世帯ごとに課税されます。
この世帯課税は、じつは国民にとってはおトクな仕組みなんです。
たとえば、日本で年収1000万円の男性が無職の女性と結婚をしたとしても、配偶者控除で控除額が約4万円増えるぐらいです。
でも、フランスの場合、年収1000万円の人と無職の人が結婚した場合、夫婦2人なら世帯収入を2で割った金額に課税されるんです。
つまり、その夫婦世帯の課税所得は500万になるわけです。
子どもは0・5人の扱いなので、子どもが生まれると1000万円を2・5で割り、課税所得は400万円になります。
さらにフランスの場合は、400万円ぐらいなら所得税はほぼかかりません。
これが年収1億円の人なら、無職の相手と結婚したら課税所得は半分になるので、超おトクなんです。
結婚したり子どもを生んだほうが税金は安くなるので、金持ちほどモチベーションが高くなるのも、フランスの出生率が高い理由の一つでしょう。
日本に世帯課税を導入しようとすると、システム的には複雑になるかもしれません。
ただ、若い人の大半は年収350万円以下なので、そこから税金をとってしまうと経済的な余裕はなくなってしまい、結婚なんて考えられなくなりますよね。
なので、若者がトクするよねと思う税制にして結婚のモチベーションを高めると、結果として子どもも増えると思います。
非大卒の成功モデルがない p267
僕が大学の数以上に問題だと思っているのは、大学に行かなくても成功しているロールモデルを、日本がちゃんとつくってこなかったことです。
日本の大学卒業率は53%なのですが、たとえばフランスは40%、ドイツは31%なんです。
日本では、「とりあえず大学は行くべきだよね」となっていて、きちんと勉強もせずにただ卒業しただけという人を量産していますよね。
でも、フランスやドイツは、大卒ではない人でも充実した生活を送っていたり、稼いでいるロールモデルがいくつもあるんです。
フランスなら、ものすごく儲けているレストランや、首相官邸の御用達のパン屋さんが毎年表彰されていたり、ファッション業界などでも大卒ではない人が活躍しています。
手仕事をしている人たちも表彰されたり、きちんと稼いで社会的に認められているんです。
でも、日本だと大卒ではない成功モデルがあまりないんですよね。
例に挙がるのは、スポーツ選手や芸能人など、実際になれる人が極端に少ない職業ばかりです。
なので、やる気と学力のある人には国がお金をかけて投資をしたほうがいいですし、一方で大学に行かなくても幸せになれるロールモデルも、もっとつくったほうがいいと思います。
事実が増えると正しい判断ができる p277
そもそも、成功したり、失敗したり、勝者や敗者になったときというのは、答えが出たタイミングなんです。
受験に失敗したら、一生懸命勉強したけど自分の能力では受かりませんでしたという事実がわかります。
そこでようやく、自分の能力だったり、自分以外の受験生の能力が確定するわけです。
陸上の大会でビリだったら、自分は足が遅いという事実がわかります。
カラオケに行って、みんなに「お前、音痴だな」と言われて初めて、自分は歌が下手なんだとわかるのと同じです。
逆に東大に受かったのなら、ペーパーテストに関しては得意だという事実が確認できたということなので、自分は答えのある問題をバンバン解いていこうという生き方を選ぶのもアリでしょう。
成功や失敗、勝ち負けが確定するということは、新しい情報が増えたということなんです。
そして、事実がちょっとずつ増えていけばいくほど、正しい判断をしやすくなります。
大学受験での失敗は、世の中には自分よりも頭のいい人たちがいるという事実を受け止める機会なんです。
それなりにいい大学に入った人は、自分は頭がいいと思いがちなのですが、社会に出て挫折したりすると「そうでもないな」と気づきますよね。
「そうでもないな」という事実を受け入れた人は、どうやったらほかの能力を磨いたり、うまく自分のポジションを見つけられるかを考えるようになります。
それをちゃんと見つけられた人は、幸せに暮らしていけるでしょう。
逆に「オレは頭がいい」と思い込み続けて、「弁護士になって一発逆転してやる」と司法試験を何年も受け続けて、引きこもりみたいになってしまうと、けっこうキツいでしょう。
前者と後者の違いは、失敗や挫折をしたときに、それをマイナスの状況として受け止めるか、客観的な情報を得るための手段として受け止めるかなんです。
なので、失敗や挫折は早めにしたほうがいいと思います。
失敗や挫折を経験しておくと、「自分はこの道では勝てない」という認識ができるので、「仕方ないよね」と事実を受け入れられるようになります。
それはつまり、自分の能力を客観的に見られるということなんです。
負けたときに何を得られるか? p279
生きていれば誰でも必ず負けます。
天才バッターのイチローでも6割は失敗しています。
どんな人でも、毎回勝つのはムリなんですよね。
なので、大事なのは勝ったときよりも、「負けたときに何を得られるのか?」なんです。
たとえ勝負に負けたとしても、そのあとに自分の評価が上がるのであれば、華々しく散って負けるのもありでしょう。
「プロジェクトは失敗したけど、あいつとはまた仕事したいよね」と周りに思わせられれば、長期的には得られるものがあったりします。
「負けたとしても何を得られるのか」を意識していくと、人生でトクをすることが増えるでしょう。
負けた事実をどう受け止めるか。
そのマイナスを利用して、自分がどうやってプラスにするか――。
“グッドルーザー(よき敗者)”になると、いまよりもトクをすることが人生で増えると思います。
どんな問題でも解決できる究極の方法 p280
僕は、この「物事の受け止め方」が、じつは問題解決にとっていちばん大事だと考えています。
身もフタもないと思われる人もいるかもしれませんが、ここまで書いてきたように、問題解決も抜け道探しも、要は考え方なんです。
一般的には何かに成功したり、お金持ちになったりするのが問題解決だと思われがちですよね。
でも、傍からは成功していないように見えていても、自分的には満足だって思える人って、それはそれで成功なんですよね。
その人にとってみたら、問題は解決してるので。
たとえば、東大に行きたかったけれど受験で落ちて、その結果、聞いたこともない大学に行くことになったのだけれど、そこでかわいい彼女ができたとします。
そのときに、「東大に行かなかった結果、オレはかわいい彼女ができたんだ。だから東大に受からなくてよかった」と考えられるか、「東大に落ちて三流大学に行ってしまった……」といつまでも悔やみ続けるか。
仲のいい友だちができて、酒飲んで超楽しいというときに、「東大に行ってたら、こんな超楽しい時間はなかったかもしれないな」と受け止められるか。
思いどおりにならなかったときに、本人がその事実をどう受け止めるかが、じつはとても大きいんです。
孫正義さんのように、めちゃくちゃ稼いでいる人は成功者のように見えますよね。
でも、適度に稼いでいて趣味が超楽しいとか、毎日ダラダラ暮らしている人と比べてどちらが成功なのかとなると、もう価値観の問題になります。
つまり、どんな問題であれ、本人が解決だと思っていれば、それは解決なんです。
繰り返し書いてきたように、問題解決は考え方なんです。
なので、ビジネスや人生で大きな難問に直面したとしても、どうしたら自分が解決だと思えるかを考えると、どんな困難も解決できるようになるはずです。