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「寄り添うツイッター」を読んだ

投稿時刻2024年4月19日 12:20

寄り添うツイッター わたしがキングジムで10年運営してわかった「つながる作法」」を 2,024 年 04 月 19 日に読んだ。

目次

メモ

p2

そこから私の日常が劇的に変わることになります。
仕事のスタンスや取り組み方、価値観までもがガラリと変化し、コツコツと積み上げてきた“戦略広報”“売るためのマーケティング”“皆に好かれる広報術”のような知識が全くもって役に立たない。
「ツイッター」という新たなジャンルの仕事を前に、日々呆然とした記憶があります。

p28

2010年というと、ツイッターは今ほどポピュラーなツールではありませんでした。
ツイッターが日本に上陸したのは2008年。
当時の若い世代ですら「存在は知っているけど、使ってない」という人が少なくなかったでしょう。

もちろん私もそのひとりでした。
上司はというと、存在すら知りませんでした。

p32

加えて考えられる可能性としては、「社内ブログ」の存在です。

そのころ広報部では、コストのかかる紙の社内報を廃止し、イントラを使った社内向けブログに切り替えたところでした。

社員なら誰でも書き込みOK、内容も自由、和気あいあいのコミュニティになるはずが、いざ始めてみると、悲しいくらい閑散とした状態に。

社長や上司の目にも触れるような場に気軽に書き込めと言われても、多くの社員にとってはハードルが高かったのかもしれません。
ごく初期までは面白がって書き込む社員もいましたが、1カ月も経たないうちに、「ほぼ社長日記」と化しました。

「ほぼ」というのは理由があります。
もうひとりだけ、書き込む人間がいたのです。
……私です。
ブログ立ち上げ部門のスタッフだったこともあり、その矜持としてひとりコツコツと頑張っていたわけです。

自分の仕事のこと、商品のこと、ときには「七夕パーティーをやりました」などのプライベートな話題。
投稿が途切れないよう、「少なくとも週に1本」と自分に課していました。

しかし書いても書いても、ほかの社員の投稿が増えることはありませんでした。
真面目で忙しい人が多いので、ある程度覚悟はしていたものの、やっぱり少し寂しい。
それでも社内コミュニケーションが活性化する日を思い描きながら、書き続けました。

もしや、その「めげないメンタル」が見込まれたのでは、と今にして思います。

そうだとしたら、今回の人選はあながち外れてはいなかったかもしれません。
ツイッター担当は、社内ブログ以上にメンタルの強度が試される仕事となったからです。

自由という「不自由さ」 p50

企業の公式ツイッターアカウント担当者――。

この仕事、えてして華やかな印象をもたれがちですが……実を言うと、ものすごく内容を吟味したり、文面を推敲したり、事実関係に間違いがないか調べたり。
どちらかと言えば細かい、ハッキリ言えばチマチマした作業がほとんどです。

そのうえ、「ひとりぼっち」でもあります。
ツイートもリプライも、すべて私の手元だけで完結するからです。

「上司に見せて、OKをとってから、という段取りは要らないの?」と思われるでしょうか。
少なくとも当社の場合、そのプロセスはありません。

「内容は原則、君ひとりの裁量で」。
これは、開始時に社長が掲げた方針です。
スピーディでライブ感あふれるやり取りこそ、ツイッターの生命線だから、と。

もちろん、最低限のルールはあります。
宗教や政治など、人によって大きく価値観の違うトピックに関しては話題にしないこと。
プロ野球やサッカーなども同様に、特定の団体を応援しないこと。
これをやってしまうと、こちらが肩入れした団体以外を愛する人に不快感を与えてしまうからです。

加えて、ツイート数に関しては、初めは1日につき10ツイート程度はほしい、と言われました。

長く続けるためのシンプルなルール p54

……飛び込んだ結果、やはり失敗もありました。

「今食べてるおせんべいが○○(国名)産だと知りショック。」と書いたことが問題に。

ご指摘は、意外なところから来ました。
取引先から、担当営業へ口頭で告げられたのです。

「国や民族に関わることを軽率に言うべきではない」

たしかに、その通りです。

指摘をくださった人には、営業を通じて丁重にお詫びをしました。
「失敗したら、そのときはそのとき」が、早くも実現してしまった形です。

発言内容についての明確なガイドラインがほしい、と上司に求めましたが、「問題があったら言うから、今まで通りやりなさい」と上司。

そんなわけには……渋る私でしたが、社長の見解も、上司と同様でした。

「最近やっと面白くなってきたのに、上り調子の最中に縛りをきつくして流れを止めるのはもったいないよ」と、社長。

(自由という名の不自由、継続ですか……)

肩を落としましたが、たしかにその通りなのかもしれません。

ルールで縛るよりも、ひとつひとつ考えながら自分の言葉で語ってこそ、親しまれる場が作れるのです。
ならば、人に対する気遣いを、ツイッター上でも忘れないよう気をつけるのみ。
それでも間違えてしまえば、素直に謝るしかありません。

そこで、新たにルールを加えることにしました。
「一度発言した内容は削除しない」
「問題を指摘された場合は、ツイッター上で対応する」

世の人が、当たり前にもつべき配慮を忘れないこと。
いたってシンプルですが、公式アカウントのルールとなっています。

p64

当時の私は、「今日の千代田区東神田は晴れ。28度です」といったBOTのようなツイートを、毎日のように発信していました。

生活者の視点で考えれば、天気のツイートは有益ではありません。
天気が知りたけたれば、天気予報を見ればいい話だからです。

感情を伴わないのもマイナスポイントです。
淡々と無機質に、しかも求めてもいない情報を述べられても面白いはずがありません。

つぶやいたほうがいいこと、つぶやいてもいいこと、つぶやく必要のないこと、つぶやかないほうがいいこと。

色分けを、より意識するようになりました。
後者二つには発信する意味はありません。

では、つぶやいたほうがいいことと、つぶやいてもいいこととは、何でしょうか。
「必要なこと」と「楽しめること」です。

二つに絞り込んで発信する、という方向性が定まったのです。

時事ネタやネットスラングの活用 p65

以来、投稿前には「発信する意味あるかな」と考える習慣がつきました。
2013年1月に、次のツイートをしたことがあります。

(思いつく大半の「つぶやき」、お蔵行き…)

……正しくは「お蔵入り」ですね。

「迷ったらGO」ではなく「迷ったらSTOP」が、発信前に十分気をつけていることです。
100文字ぐらい打ってみて、「やめよう」と取り消すことが頻繁にあります。

意味があるかどうかも重要な判断基準ですし、「誰かを不快にしないか」もしっかり吟味します。

タブー事項は避けたうえで「時事ネタ」はうまく盛り込みたいところです。

発信した当時、世間は、あるアイドルの写真集が発売延期になった話題で持ち切りでした。
そこで私も、ツイート内容に配慮し、この話題と商品を絡めたツイートを。

「ポイント」は、事実のみを述べることです。
意見や感想などの要素を入れなければ、人を不快にさせる危険性は下がります。

なお、ネットスラングにも気をつけます。
広く使われているものであっても、もとの由来が差別的であったり、ネガティブなテーマであったりすることもあるため、不用意に使うのは危険です。

使ってみようか、と迷うときは、必ず語源を調べます。
ウィキペディアやピクシブ百科事典などを見れば詳しい由来が載っているので、ツイート作成が非常に捗ります。

「ぱっと見10秒」でわかる工夫 p67

2013年時点では、カジュアルなツイートもできるようになっていましたが、初期は「堅苦しさ問題」が厚い壁となっていました。

砕けた語り口で書こうとしても、つい真面目な文面になってしまうのです。

これはツイッター以外の業務の中で、プレスリリースを書いていたのが一因でした。
「このたび新商品を発表いたします」といった、硬い文体のクセが染みついていたのです。

ただ、プレスリリースの書き手であることには、メリットもありました。
情報をいったんまとめていたため、伝えるべき内容が明確に整理されていたのです。
ですから、表現を軟らかくしていけばいい、と考えました。

まず意識すべきは、漢字をできるだけ「開く」ことです。
「漢字を開く」とは、漢字をひらがなにすることを指します。

ひらがなにするだけで情報が伝わりやすくなりますし、親しみやすさも出ます。
ひっきりなしにタイムライン上を流れるツイートは、「パッと見10秒」で伝わるものでなくてはなりません。

伝えるためのポイントとして、専門用語も要注意です。
企業の内側にいるとつい、一般的な感覚を忘れてしまい、当たり前のように専門用語を使ってしまうことがあります。

この点ではフォロワーからの指摘に助けられました。
「Z式ファイルってなに?」「紙おさえってなに?」と聞かれるたび、「通じないんだ」と気づかされました。

初級レベルをクリアしたところで、さらに一工夫。

文字量を抑えることです。
ツイッターは140字まで書けますが、私の中では原則100字を上限としました。

「プレスリリースの内容を伝えるのに100字で足りるの?」と思われたでしょうか。
もちろん無理に決まっています。

でも、無理でいいのです。
一度にすべての情報をつめ込んで話を終わらせたら、
それ以上の広がりをもたせることはできません。

文面にはあえて「遊び」を残しました。
途中までは商品の説明なのに、後半では話がそれていく。
そんな、とぼけた感じの100字にしたのです。

すると「で、その商品は結局どう使うの?」となりますね。
聞かれたタイミングで、説明を補足します。
答える際も全部言い切らずに手前で止めると……やり取りが自然に活性化していきます。

伝え方の工夫をしているうちに、気づくとすっかり、雰囲気も様変わり。
「堅苦しい問題」は、過去のものとなっていました。

ツイートは小学生にもわかるように p73

フォロワーが増えていく中で気づいたのは、世代の多様化でした。
当初想定読者としていた30~40代のオフィスワーカーに加えて、下は小・中学生上は70代、80代のフォロワーがいました。

そこで、どの世代が見てもわかりやすい内容にしよう、と意識するようになりました。

シニア層が「なにを言っているの?」とならないよう、外来語はできるだけ使わないことを心がけています。

文面の内容は「小学生でもわかるように」を基本ルールとしました。

わかりやすい表現で、1回の情報量はコンパクトに。
そうしておけば小学生に限らず、幅広い世代にも、パッと見てわかるツイートになります。
タイムラインを絶えず流れていくツイートの中で読み飛ばされないようにするには、やはりシンプルさが肝心です。

このときも、プレスリリースを対置させてイメージを考えました。
プレスリリースはプロの記者向けに作成するため、ツイッターほど簡単な文面にする必要はありません。
多少の専門用語を入れても通じるのが前提です。

しかし同時に、読み手が多忙であることも忘れてはなりません。
短時間で読めて、すぐにインプットできるものに仕上げる必要があります。
情報の取捨選択は大事なポイントです。

以上を考えて、「プレスリリース→中学生以上」「ツイート→小学生以上」という色分けをしていました。

文字量と併せて、頻度も考えました。
多すぎると、先に述べたように「さわがしい」と捉えられてしまいますし、タイムラインの流れに埋もれてしまいます。

読み手を煩わせることなく、緩急をつけて発信するよう心がけました。

キングジムの平均ツイート数はリプライを含めて1日10回程度です。
しかしそれはあくまで「均せば」であり、実際にはかなり幅があります。
数回のこともあれば、やり取りが続いて何百回にも上ったこともありました。

考えていたのは、「1日何回まで」というルールづけではなく、1週間、1カ月といった長いスパンでの上限です。

ペースについては、どこまでが許容範囲か、煩雑さを感じさせずに読んでもらえるか、といった感覚を、反応を見ながら少しずつ会得していきました。

メインの投稿は「8~9時」「12~13時」「18~19時」 p76

文面と並行して、発信の時間帯も固まっていきました。
開設当初は、思い立ったときにツイートしていましたが、そのうち「反応が少ない時間帯」があることがわかってきたのです。

午前10時ごろや、午後の14時ごろです。
当時はまだ、フォロワーの中心層がオフィスワーカーだったので、この時間に発信しても見てもらえなかったのです。
そこで、通勤時間の8~9時、お昼休みの12~13時、就業時間後の18時以降をメインにしました。

メインの時間に、フォロワーの属性であった「ガジェット好きの男性オフィスワーカー」に届けたい情報をツイート。
ほかの時間帯には、たあいのないつぶやきや、トレンドに合わせた一言など、雑談的なツイートを発信するようにしました。

発信スタイルは現在も同じですが、先に述べた通り、フォロワーの構成がその後大きく変わりしました。

現在は小学生からシニアまで、男女比もほぼ半々。
それぞれの世代・性別に合わせたタイミングを考えています。
主婦向けのツィートなら、家事が一段落するお昼前か、おやつどきなど、肌感覚で各世代の行動を想像しながら発信しています。

感覚を得る源は、やはりリプライです。
リプライからやり取りが始まり、「この人はどんな属性なのだろう」と想像するのが入り口です。

直接のやり取り以外でも、会社や商品についてツイートされていたら、同じように相手のイメージを描きます。

その中で大まかに、構成と、それぞれに合った時間帯をつかみます。

地道な上に感覚的ですが、確度は高く、日々の運営に役立てています。

数字のデータより、生の声から得た情報のほうが実像に近い気がする……気がする、というのも感覚ではありますが。

また、感覚的な情報に加えて、フォロワーにアンケートをとって参考にする場合も

しかしベースはやはり、調査よりも想像。
ツイッターというツールは、積み重ねた経験によって土壌ができていくのです。

運営目標と注力ポイント p84

開始時点においては設定されていなかった数値目標ですが、現在はフォロワー数や、「年間3000ツイート」という目標を掲げています。

ただし「ノルマ」ではなく、あくまで目安。
数値にとらわれないのは、今も昔も同じです。

3000という数字も、企業の公式アカウントにしては少ない方ではないでしょうか。
会社によっては、「月に1000ツイート」という、とてつもない数字を設けているところもあるとか。

投稿数の設定に、正解・不正解はありません。
担当者の人数や、各担当者の別業務との兼務の度合いによっても変わってくるでしょう。

ただ、ツイッターを「コミュニケーションツール」と位置づけているならば、長期間「ツイートをしない日」は作らないほうが良いと考えています。

広告宣伝の運営ならば、「話題のない日は沈黙」でも構いませんが、コミュニケーションが目的で運営する以上、ツイッターは「生き物」と同じなのです。

しばらくの間ツイートがないとなると、「生きてる?」「どうしたの?」と、心配されてしまいます。

多忙な日なら、1ツイートでも、あるいはリプライへの返信だけでもOK。
1日1度は発信して、「今日も元気です」と知らせることが大切です。

加えて、フォロワーを増やしたいならば「最初のふんばり」がポイントです。

一言二言だけでは、この「生き物」が「何者」か、今ひとつわかりにくいからです。

軌道に乗るまでは、1日1ツイート程度を発信することがどうしても必要でしょう。
一定量がそろって初めて、自然と発信者の人となり(もしくは発信者が「こう見せたい」と思う人となり)が伝わります。

軌道に乗ったあとは、数字にとらわれすぎないほうがベターです。

「一日○件発信すべし」「○月までにフォロワー数を〇人に」などのノルマのもとでは、担当者はどんどん疲弊します。
そうなると、ツイートにも、どこか息苦しさが垣間見えてしまうのではないでしょうか。

注力すべきことは、量より質です。
数字よりも、「本当に必要とされる情報は何なのか」きちんと吟味することをお勧めします。

見る人が楽しめる、見る人に役立つ情報を送っていれば、信頼感が醸成され、結果として数字にも結びつく。

エンゲージメントなどの好感度の指標も、自然に上がっていくでしょう。

p88

気ままに、さまざまな内容をつぶやいているようでも、すべてのツイートの基盤には「会社を知ってもらい、親しんでもらう」という目的があります。

よって、自社の企業理念やブランディングの方針を理解できていることが不可欠です。
その意味では、ある程度の勤続年数を積んだ人が向いているとも言えそうです。

加えてもうひとつ。
この仕事は、オンとオフの領域がやや曖昧になるところがあります。
ツイッター運営を始めてからは、行き帰りの電車の中でも自然とチェックするようになりましたし、頭の隅には常にアンテナが立ち、ツイートできる話題を無意識に探しています。

担当者が、「そのぶん楽しんでもらおう」「自分も楽しもう」「会社にも役立とう」という風にポジティブに捉えられるかどうかは、大きな分かれ目です。

総合すると、「構えすぎず、楽しく、本気でできる人」ということです。

実際、長く続いている公式アカウントの「中の人」は真面目な人が多いです。
ツイッター上ではお互いに軽いやり取りを楽しみますが、直接お会いして仕事の話をすると、必ず真摯で誠実な姿勢があります。

楽しい発信を、コツコツ地道に続ける――つまりは「遊び心と真面目の併存」が、もっとも重要な適性と言えそうです。

「長寿アカウント」を目指してはじめた「おやつイート」 p98

写真を添えて「今日のおやつ」を紹介する「おやつイート」は、ごく初期から始めたものです。

アカウント立ち上げ時に、社長から「おやつのことでも何でも気軽につぶやいて」とリクエストされ、「いったい何のために届ける情報なんだろうか?」と疑問に思うこともありましたが、いざツイートしてみて、気づくこともありました。

おやつを入り口にすると、話が弾むのです。
味の特徴、形、パッケージのデザイン、ご当地の限定品、さまざまな切り口で反応が届きます。

おやつは親しみをもってもらうための強い味方なのだと、改めて実感しました。

食べものは、誰の生活にも必ずあります。
身近で感情移入しやすく、安心の源にもなります。

「サザエさん」や「男はつらいよ」シリーズなど、日本で長く愛されてきた作品には必ず、家族で食卓を囲むシーンが盛り込まれていることに気づいたことがあります。
いわゆる「お茶の間」というのでしょうか。
王道のシーンから受ける抜群な安定感へのあこがれもあり、「おやつイート」を続けています。

そうそう、美味しいものが手に入ったらお隣やお向かいにおすそ分けをして、数日後にお返しがくるのも「ご近所あるある」ですね。

今、私はツイッター上でこれを叶えています。

たとえば、「金沢方面に行くのでおすすめください」と一言つぶやけば、大勢の人たちがグルメ情報やおすすめスポットを教えてくれます。

後日、お返しとして、私も東京の観光地や美味しいものをそっとツイート。
こうした、ささやかで心温まる交流を、ずっと大事にしていきたいものです。

「前歴」が今につながっている p114

ツイッターで「視覚」に着目するのは珍しい、と言われることがあります。

これは私のバックボーンが、少なからず影響しているのかもしれません。

実は私、美術大学出身です。
大学時代の専攻は油絵でした。
幼いころから、絵ばかり描いていました。

描きに描いて、「やりきった」という思いがあったので、大学卒業後は企業への就職を選びました。

そして、キングジムへ入社。

広報へ配属されたことは、少々意外でしたが、なんとなく「奥の深そうな仕事」なので極めてみたいという思いもありました。

期待通り、自分たちの活動を「広く報せる」仕事は、非常にやりがいがあった……のですが、新人時代に待ち受けていた関門「プレスリリースの書き方」で苦心惨憺しました。

書いても書いても、上司の答えは「やり直し」。
原稿は、訂正で原形がないほど真っ赤なペンの色で染められていました。

(そんなに、ダメなのか……)と、自分が嫌になったこと数知れず。
文章をまともに書いてこなかったことを後悔しました。

しかしおかげで、書く力を鍛えられました。

前章でお話しした通り、ツイッターではリリースの文を短くカジュアルな文面にする作業をよく行います。
文を作るスキルの基盤を、私はリリース作成術で得られたのです。

「ツイッター映え」する写真加工法 p124

何千冊もの画集や写真集を読んだ経験は、確実にツイッターに活かされています。
投稿する写真の構図を決めるとき、これまでに見た無数の絵が、見えない形でお手本になっています。

写真に関しては、皆さん「加工」を気にされることが多いようです。
私の場合、加工は最低限のレベルにとどめています。

いわゆる「インスタ映え」を狙うなら、加工を重ねて作り込んだほうがいいのですが、ツイッターの場合は逆です。
パッと撮ってパッと投稿したほうが、ツイッターのスピード感・臨場感にフィットします。

平たく言うと、手間をかけすぎないほうが「ツイッター映え」するのです。

たとえば、昨年秋に少しばかり話題になった、プリンのツイートの場合。

被写体は、セブン-イレブンさんのプリンです。

商品名「きみのプリン」の傍らに貼られた「テプラ」のラベルには……、「お前のじゃない」

おやつを食べられてなるものか、の一念を「テプラ」に込めました。

この写真も、いかにも「パッと撮ってパッと上げました」という感じの雑さがもち味。
インスタ映え基準ならば光量(明るさ)をもっと上げる補正をするところですが、私はあえて、調整しすぎないようにしました。

・ラベルがきちんと見えるように
・セブン-イレブンさんのプリンがおいしそうに見えるように

この2条件を満たせばOKと考え、ほぼ撮ったままの状態でアップしました。
背景のデスクの生活感がすごいです。

ツイートはなかなかの反響を呼び、翌日にはネットニュースやまとめサイトに掲載されました。
「これぞテプラの正しい使い方」「テプラほしくなった」という声も多く届いて、「テプラ」を広く知ってもらえるきっかけになりました。

p142

思い起こせば、敬語が徐々に、いわゆる「タメ語」に変わっていったときも、同じく嬉しかったものです。
時間をかけてコミュニケーションを重ねてきたからこそ、こうして打ち解けられたのだな、と思います。

驚くこともたびたびありました。
「企業」と「生活者」がツイッター上で、友人同士のように会話をするケースです。
今でこそ珍しくありませんが、当時はまだスタンダードではなかったのです。

そう考えると、キングジム公式アカウントは、こうした関係性の「はしり」だったのかもしれません。

p150

これは、世に言う「自虐ネタ」に近いものと言えるでしょうか。
しかし、それがツイッターらしさだと私は思っています。

インスタグラムやティックトックが「リア充」志向のSNSであるのに対し、ツイッターはそのときの気分を表に出すような生々しさや、カッコ悪さ、ときにはネガティブな部分を出すことで、共感性を高めている傾向があると言えるでしょう。

加えて、膨大な数のツイートが流れる中、格好をつけたり、お行儀よくふるまったりしているとすぐに埋もれてしまいます。
少しばかり斜めに構えるのも、「目につく」コツのひとつです。

素早くニュースを広める手段 p177

毎日さまざまな広報業務を行っていますが、業務と業務の「すき間」の時間に行っているのがツイッターです。

出社したらパソコンを起動し、朝のツイートを行います。
そこからは別の業務に入りますが、ツイッター画面は片隅におき、いつでも目に触れるようにしています。

画面と向き合う頻度は、90分に一度くらい。
毎回、そのとき必要なタスクを行います。
ツイートとリプライのほか、企業アカウントを訪れたり、トレンドワードを調べたり、会社や商品についてのコメントを探したりします。

――別の広報手段とツイッターを上手に使い分けていくのも、広報として欠かせない視点です。

ツイッター運営を始めたばかりの人から、「素早く新商品の情報を広めたいが、どうツイッターを使ったらいいですか?」といった質問を受けます。

そんなとき私は、「それならツイッター以外の方法がいいですよ」と答えます。

新商品の告知なら、プレスリリースを作ってテレビ・新聞・雑誌、ウェブメディアをはじめとするマスコミに配布し、ニュースとして一斉に流す方が得策。
ツイッターにいくらスピード感や拡散力があるといっても、マスコミが持つ何十万、何百万規模の「量」には遠く及びません。
素早くたくさんの人にPRするなら、昔からある広報の手法を使うべきでしょう。

私はツイッターと広報とを兼務してきたことで、「伝達手段の適材適所」を見る力がずいぶん鍛えられました。

専任でSNSを担当している人なら、社内広報部と連携を密にするのがお勧めでしょう。
絶えず情報を共有し、それぞれの伝達手段の特徴も伝え合ったうえで、情報をどこに発信するか、適宜すり合わせることが肝要です。

p184

担当者は、フェイスブックに1人、インスタグラムに2人。
現在、私を合わせて4人のSNS担当がいます。(10年前のツイッター開始時には5人だった広報部の人員も、今は7人に増えました)。

担当者はオフィスの同じ「島」でデスクを並べ、日々情報交換しています。

SNS運営歴では私が一番古株とあって、アドバイスに回ることのほうが多いのですが、助けてもらうことも多々あります。

p196

ここは、根気よく説明していくしかありません。

売ることを目的にすると、短期的には成功するとしても、長期的にはデメリットが大きい、と。

なぜなら、そうした発信者の「色気」を、生活者は敏感に見抜くからです。

「友人だと思っていたのに、結局買わせたいだけ?」と思われた瞬間、コツコツ築き上げてきた関係性は崩壊します。

長期的な視野のもと、コミュニケーションを重ね、ずっと支持してくれるファンを増やすほうがはるかにプラスです。

ツイッターの担当者は、“経営的な視点”をもっていたほうがよいでしょう。
短期の目標達成は、部門レベルで考えること。
対して、企業の存続などの長期的な目標は経営の領域です。
そうした視野をもつことが、ツイッターの存続にもつながると考えています。

p226

それはさておき、私が意外だったのは、「中の人」たちが広報パーソンとは限らなかった、ということです。
10人集まると、広報は半分くらい。
ほかは営業企画、経営企画、開発、マーケティング、販促など本当にさまざまでした。

ツイッター担当者の社内応募に自ら手を挙げたという人もいれば、運営の途中で異動して続けている人も。
広報一本で働いてきた私には、違った環境や立場で運営している実態はとても新鮮でした。

背景は違っても、担当者としての悩みは共通です。

社内でたったひとり、全く未知の仕事を担当することの不安、自由と孤独。

仕事内容を理解してもらえず、遊んでいるかのように見られがちなこと。
ふざけすぎている、と意見されること……。

周囲に同じ立場の人がおらず、「わかってもらえなくて当たり前」だった困りごとを、初めて分かち合えました。

Q 毎日の閲覧頻度はどのくらい?ずっとツイッターにはりついてるのですか? p244

パソコンでは常にツイッターが開いていて、ほかの仕事の合間をみながら閲覧しています。
日によりますが、1~2時間程度です。

Q モチベーションの維持方法は? p244

運営するうえでのモチベーションは、ツイッターを楽しむことです。
人間なので体調がよくないとき、気分が上がらないときももちろんありますので、その場合はツイッターから一度離れます。
また、ひとりでデスクに向かっていると考え方の視野が狭くなってしまうため、周囲の人と雑談したり、音楽を聴いたり、好きなものを食べたりしてリフレッシュしています。
企画を考えるのが好きなので、躓きそうになったときは好きなことを考えて気分を上げています。

Q 兼務している業務との割合、ほかに担当している仕事を知りたいです。 p249

ツイッターを始めたころはツイッター業務とほかの広報業務の割合は 1:9 くらいでしたが、数年後には 3:7 になり、現在は 5:5 くらいです。
ただ、ツイッターに関連する取材が年々増加しているため、取材対応が広報業務なのかツイッター業務なのか曖昧になりつつあります。

Q ハック的なこと(毎日の記念日やハッシュタグ、トレンドなどの収集方法)、ツイッターのトレンド以外で見る習慣があるものを教えてください。 p250

新聞、雑誌、ウェブ、テレビなど幅広く見るようにしています。
具体的には、新聞は部署内での分担制で、私は「日経MJ」に目を通し、新聞社が発信している経済ニュースはウェブで見ています。
ほかには「今日は何の日~毎日が記念日~」や「ねとらぼ」、「ほぼ日刊イトイ新聞」はよくチェックしています。
ドラマは毎クール7~8作品を観ています。

Q ツイート写真の撮り方について教えてください。 p251

ほぼ100%、スマートフォンで撮影しています。
光量で色合いが変わって見えることがあるので、ツイートする前に現物(色彩が繊細なパステルカラーなどの商品などはとくに)と比較して色味が大きくかけ離れていないか確認することはあります。

p253

私はある日突然ツイッター担当者になり、当時はなにをするにも「ぼっち」で、とても孤独でした。
職場でパソコン画面に向かってクスクスと不敵な笑みを浮かべ、肩を小刻みに揺らしながらツイッターを行う姿は、傍から見ても、だいぶ「ヤバい奴」だったことでしょう。

ツイッター担当者は、今となっては世間でもスタンダードな「仕事」として市民権を得るようになりましたが、黎明期からの運営は茨の道でした。
本書では10年という長い期間の中で特徴的だったテーマを中心に紹介しました。
活動を振り返ったとき、いまでも私の中に、二つだけブレないものがあります。

「どんなことが起きても諦めない粘り強さ」と「ほんの少しの勇気」。

精神論と言われればそれまでですが、10年間続けられたのは、知識でもセンスでもコミュ力でもなく、この二つのおかげでした。
ツイッターは理屈では片づけられないことがたくさんあります。
手探りでやる仕事には、明確な答えがないのです。