「ノンデザイナーズ・デザインブック」を 2,024 年 11 月 26 日に読んだ。
読んだのは 2,000 年に刷られたものだったので第 4 版ではなかった。
目次
- メモ
- ミニ用語解説 p12
- 4つの基本原則 p14
- 近接のまとめ p26
- 整列のまとめ p42
- 反復のまとめ p52
- コントラストのまとめ p62
- Review 復習 p63
- まとめ p70
- 視覚的知覚を高めるためにすべきこと p71
- Type (&Life) 活字(と人生) p75
- 協調 p76
- 衝突 p78
- コントラスト p80
- Categories of type 活字のカテゴリー p83
- Oldstyle p84
- Modern p85
- Slab serif p86
- Sans serif p87
- Script p89
- Decorative p90
- 意識的に p91
- まとめ p94
- Type contrasts 活字のコントラスト p95
- p96
- p97
- p98
- p99
- p100
- p102
- p103
- p104
- p105
- p106
- p107
- p108
- p109
- p110
- p111
- p112
- p113
- p114
- p115
- p116
- p117
- p118
- p119
- p121
- コントラストを組み合わせよう Combine the contrasts p122
- 手順 p128
メモ
ミニ用語解説 p12
この本で使用される用語を次に挙げておきます。
デザインとタイポグラフィーの用語を完全に知りたくなったら、私の“How to Boss Your Fonts Around”という本を見てください。
ベースライン(baseline)というのは、
活字が据えられた目に見えない基準線のことです(94ページ参照)。
本文(body copy、 body text)というのは、
文章の中心になる本文のかたまりを見出し、副見出し、題字と
はっきりと区別して示すときに使う言葉です。
本文には普通9ポイントから12ポイントの活字が使われます。
約物(bullet)というのは、
箇条書きで数字の変わりに使われるような小さな記号のことです。
標準的な約物には次のようなものがあります:・.
飾り活字(dingbat)というのは、小さな装飾的な活字のことです。
■※§などがそうです。
飾り活字だけでできたZapf Dingbats、WingDingsという
フォントもあります。
要素(element)というのは、
ページ上の個別のオブジェクトのことです。
1行の文章も、絵も、一群の箇条書きも
一つの構成単位として認識されるとき、それは1個の要素になります。
ページ上の要素の数を知るには、目を細めてページを眺め、
視線が止まった回数を数えます。それが要素の数になります。
多量の文章(Extended text)というのは、
本や長い報告書のように本文が多いものを示します。
目や視線の流れ、という言葉を私が使う場合は、
それを独立した機能として考えてください。
あなたは、ページ上の視線の流れをコントロールすることができます。
だから、ページ上の自分の視線の流れをもっと意識する必要があります。
均等揃え(Justified)というのは、
活字のかたまりの左右両端を揃えることを言います。
罫線(rule)というのは
ミニ用語解説という見出しの下に引かれているような線のことです。
空白(White space)というのは、
ページ上で文章やグラフィックが置かれていない
スペースのことを言います。
ブランク(blank)と言うこともあります。
初心者は空白を怖がる傾向がありますが、
プロのデザイナーは大量の空白をうまく利用します。
逃げ場のない空白(Trapped white space)というのは、
ページ上で要素の間に空白が閉じ込められた状態のことを言います。
4つの基本原則 p14
基本原則の概要を次に示します。
別々に説明してはいますが、実際には互いに関連していることを覚えておいて下さい。
各原則を個別に使うことは、ごくまれなことでしょう。
コントラスト(Contrast)
コントラストとは、ページ上の要素を単純に他と似せてしまうのを避けることを意味します。
もし要素(書体、色、サイズ、線の太さ、形、空間など)が同じでないなら、違いをはっきりさせることです。
コントラストは、しばしばページ上の最も重要な視覚的吸引力になります。
繰り返し(Repetition)
色、形、質感位置関係、線の太さ、サイズなどの視覚的要素を、作品全体を通して繰り返すことです。
これは、要素を体系的にまとめ、関連のあるものどうしのつながりを強化します。
整列(Alignment)
ページ上には、全てのものを意図的に配置しなければなりません。
あらゆる要素に、他との何らかの視覚的な関係を持たせるのです。
そうすれ清潔洗練、新鮮、という印象が与えられます。
近接(Proximity)
互いに関連する項目は、グループ化してまとめること。
いくつかの項目が互いに近接しているとき、それらはバラバラな要素としてではなく、一つのまとまりとして認識されます。
つまり、情報を構造化し、混乱を減らすことができるのです。
近接のまとめ p26
いくつかの項目が互いに近接している場合、それらは視覚的に個別の構成単位ではなく、ひとつの構成単位になります。
関連する項目は、グループ化してまとめましょう。
視線の流れを意識しましょう。
どこから見始めるか、どういう道筋をたどるか、どこで見終わるか、読み終わった後どこに目がいくか。
始めから終わりまで、確固として作品全体の論理的な流れを目で追えるようになっていなければなりません。
基本的な目的
近接の基本的な目的は構造化です。
ほかの原則も構造化に関係ありますが、関連する要素を近付けてグループ化するだけで自動的に構造ができあがるのです。
情報が構造化されていれば、読まれる可能性が高くなり、覚えられる可能性も高くなります。
そうすれば副産物として、より魅力的な(より構造的な)ホワイト・スペース(デザイナーたちのお気に入りの言葉です)ができることがあります。
方法
目をかすかに細めてページを眺め、視線が止まった回数を数えれば視覚的要素の数になります。
それが1ページあたり3~5個を超えている場合(もちろん内容しだいですが)、個別の要素のなかにグループ化してひとつの視覚的構成単位にできるものがないか、検討しましょう。
避けるべきこと
・ページ上に個別の要素を作り過ぎないこと。
・四隅と中央にものを張り付けないこと。
・要素間に均等の空白をつくらないこと(P21の例を参照)。ただし各グループが上位グループの要素である場合はのぞく。
・異なる情報の要素の間に関係をつくらないこと。
・関連しない項目は、離して配置すること。
整列のまとめ p42
ページ上のすべてのものを意識的に配置しましょう。
ページ上のすべての要素が他の要素と視覚的に結び付くようにするのです。
統一性はデザインでは大切なコンセプトです。
ページ上のすべての要素が、統一され、結び付き、関連しているようにするには、個々の要素を結び付ける視覚的な紐が必要になります。
ページ上の個々の要素が空間的に離れている場合でも、配置次第でそれらが、結び付き、関連し、統一されているように見せることは可能です。
あなたが好きなデザインを見てごらんなさい。
うまくデザインされた作品なら、それが一見どんなに混沌として荒々しい印象を与えるものでも、必ず整列が適用されていることに気づくでしょう。
基本的な目的
整列の基本的な目的は、ページの統一化と構造化です。
その効果は、居間の床あちこちに散らばった子供のおもちゃをおもちゃ箱に片づけることに、よく似ています。
はっきりした整列(もちろん、ふさわしい書体も)を使うことで、洗練された表現、格調ある表現、楽しい表現、真剣な表現が生まれることがよくあります。
方法
要素をどこに置くかをはっきりと意識して下さい。
そのページ上で、たとえ空間的に離れているとしても、揃えて置くことのできるほかの要素を必ず見つけて下さい。
避けるべきこと
同じページ上で2種類以上の文字列の整列法を用いないこと(たとえば、中央揃えと右揃えを同じページで使うようなこと)。
中央揃えを使う癖をなくしてください。
ただし、格式ばった静粛な(退屈なほうが多いのでは?)表現を意図的につくる場合は別です。
中央揃えを使うなら意図的に使うことです、「とりあえず」で使うのはやめましょう。
反復のまとめ p52
デザイン全体の視覚的要素の反復は、孤立している部分を結び付けて、作品を統一し強化します。
反復は1ページの制作物でも役に立ちますが、複数のページの文書では絶対に必要になります(複数のページの場合は単に、一貫性がとれているということがよくあります)。
基本的な目的
反復の基本的な目的は、統一感と視覚的なおもしろさを加えることです。
ページの視覚的なおもしろさを軽く見てはいけません。
おもしろそうに見えれば、読まれる可能性が高くなるのです。
方法
反復とは、一貫性のことだと考えてください。
きっとあなたは、すでにそれがわかっていることでしょうから、それをさらに推し進めましょう。
見出しのような一貫性のある要素を、意識してグラフィックデザインの一部に変えることができますか?
あなたが各ページの底と見出しの下に1ポイントの罫線を引いているなら、それを4ポイントの罫線に変えて、反復する要素をもっと強調し、もっとドラマチックにしてみたらどうでしょう。
また、ただ反復を作り出すためだけに要素を加えることもできます。
番号をふった箇条書きの箇所があるなら、その数字をもっと目立つ書体にするとか、反転させて、その他の箇条書きの箇所も同じように変えてみてはどうでしょう?
まず始めは、すでに存在する反復を見つけて、それを強化します。
反復の考え方と効果に慣れたら、デザインと情報をますます明確にするために反復を作り出すようにするのです。
反復は人の装いにアクセントをつけるようなものです。
ある女性が素敵な黒のイブニングドレスを着てシックな黒い帽子をかぶっているとすれば、赤いハイヒールと赤い口紅と小さな赤いバラのコサージュでアクセントをつけることができます。
避けるべきこと
要素を反復させ過ぎてごちゃごちゃさせたり、他のものを圧倒してはいけません。
コントラストの価値を意識してください(次の章と書体にコントラストをつけることについて解説したセクションを見てください)。
たとえば、ある女性が黒いイブニングドレスと赤い帽子、赤いイヤリング、赤い口紅赤い靴、赤いコートを身に着けているとすると、その反復は印象的でもコントラストを統一するどころか、けばけばしくて焦点を混乱させるようなものにしかなりません。
コントラストのまとめ p62
ページ上のコントラストは私達の目を引き付けます。
私達の目はコントラストが好きなのです。
同一ページ上に2つの異なる要素(2種類の書体や2種類の太さの線など)を置くときには、それらを似せてはなりません。
コントラストを効果的にするには、2つの要素がはっきりと異なっていなければなりません。
コントラストは、染みを隠すために壁を塗るのに似たところがあります。
染みの上に塗る色が周りの色と似ているだけではだめで、正確に同じ色にするか、それが不可能なら壁全体を塗り直すしかないのです。
基本的な目的
コントラストには、互いに密接に関連する2つの基本的な目的があります。
一つはページに視覚的なおもしろさをつけることです。
ページがおもしろそうに見えれば、読まれる可能性が高くなります。
もう一つは、情報の構造化を支援することです。
一つの項目からもう一つの項目への論理の流れが、つまり情報がどのように組み立てられているかが、読者にすぐにわかるようでなければいけません。
コントラストを生む要素が読者を混乱させたり、予定していないものを焦点にしたりすることがあってはなりません。
方法
書体、線の太さ、色、形、サイズ、空間などを選択してコントラストを付けるようにしましょう。
方法は簡単です。
コントラストを付けるのは、視覚的なおもしろさを加えるための、もっとも楽しい手段なのです。
大切なのは強調することです。
避けるべきこと
臆病になってはいけません。
コントラストを付けるなら、大胆に付けることです。
太さがあまり違わないような線でコントラストを付けてはいけません。
茶色の本文と黒の見出しでコントラストを付けてはいけません。
よく似た書体を複数使ってはいけません。
もし正確に同じでないのなら、違いがはっきりとわかるようにしましょう。
Review 復習 p63
デザイン(そして人生)には、もう一つ一般的な指針があります。
臆病になるな。
あなたのデザイン(人生も)に空白がたくさんできることを恐れてはいけません。
空白は目と魂が安らぐところです。
左右対象にならないことを恐れてはいけません。
対象性を崩すと効果が強まることがしばしばあります。
予想外のことをしてもいいのです。
文字を極端に大きくしたり、極端に小さくしたりするのを恐れてはいけません。
大声で話したり、ささやいたりすることを恐れてはいけません。
どちらも、場合によっては効果的なのです。
画像をたいへん大胆に使ったり、ごくわずかしか使わないことを恐れてはいけません。
その結果が、あなたのデザインや姿勢を強調したり、飾ったりしているかぎり問題はないのです。
まとめ p70
これで、私のデザインについての説明はおしまいです。
あなたはたぶん、もっとたくさんの実例がほしいと思っているでしょう。
実例はあなたの身の回りにいくらでもあります。
私がいちばん望んでいるのは、これまでの説明であなたが視覚的な知覚を自然に身に着けてくれることです。
私は「クッキーの型」のようなひな型のデザインをいくつか用意しようかとも考えましたが、魚を与えるより釣り竿を与えるほうがいい、という格言に従うことにしました。
プロのデザイナーは常に他人のアイデアを「盗んで」いるということを覚えておいて下さい。
つまり、彼らは常にインスピレーションを求めてあたりを見回しているということです。
あなたがチラシをつくっているなら、あなたが本当に気に入るチラシを見つけて、そのレイアウトを使いなさい。
ただ画像と文章は自分のものをつかえばいいのです。
そうすれば、「彼ら」のチラシはあなた独自のチラシになります。
あなたの気に入る名刺を見つけて自分の名刺に適用しましょう。
あなたの気に入る回報の発行人欄を見つけて、自分の回報に適用しましょう。
それは適用することで変化してあなた自身のものになります。
私達は、みんなそうしているんですよ。
“The Mac is not a typewriter”か“The PC is not a typewriter”を、まだお読みになっていないのなら、お読みになることを強くお薦めします。
あなたがいまだに、ピリオドのあとで半角スペースを2つ入れるなら、文章に下線を入れるなら、本物のアポストロフと引用符("ではなく“と”)を使っていないなら、どちらかの本を読む必要が本当にあります。
でも、楽しんで下さい。
気を楽にして。
デザインのさまざまなあれこれをあまり真剣に考えすぎないように。
あなたは4つの原則に従うだけで、他人に誇れるようなダイナミックでおもしろく行動的なページができることを、私が保証します。
視覚的知覚を高めるためにすべきこと p71
私の入門者むけのデザイン教室ではVIPという言葉を“Visually Illiterate Person”(視覚的教養のない人)の意味で使っていました。
VIPとは、普通は顧客を指します。
あなたが最近までVIPだったとしても、この本をここまで読んできたのですからもう二度とVIPになることはないでしょう。
あなたが視覚的知覚をさらに高めるためにできることをいくつか言っておきましょう。
見ること。
スワップファイルをつくりましょう。
これをアイデアファイルと呼ぶ人もいるし、死体置き場と呼ぶ人もいます。
これは、あなたが感銘を受けたデザインを保存しておくためのファイル・ホルダーや箱のことです。
チラシでも、パンフレッでも、画像でも、手書き文字でも、活字の組み合わせでも、包装でも、広告でも、あなたの心の琴線を震わせたものをなんでも入れておきます。
デザイナーは必ずスワップ・ファイルを持っています。
彼らはそれをアイデアやインスピレーションを得るために使います。
あたらしい仕事に取り掛かる前に、スワップ・ファイルに目を通すようにしましょう。
言うこと。
気に入るデザインを見つけたら、なぜ気に入ったのかを口に出して言うようにしましょう。
近接、整列、反復、コントラストの原則が使われているところを意識的に指摘します。
異常に大きな活字や異常に小さな活字、ユニークな画像処理、おもしろい空間の使い方など、大胆なテクニックが使われていたら、それを記憶するか書き留めておきましょう。
スケッチすること。
貧相なデザインの作品を見たら、それを直すつもりでスケッチしましょう。
バラバラにして、アレンジし直してもいいでしょう。
ただ頭の中で考えるよりも、実際に紙と鉛筆で作業する方がいいアイデアが浮かぶものです。
わたしは、本を作るときに、実際に作り始めるまで、言い換えれば紙の上(あるいはモニター画面)に形が見え始めるまで、その本がどんな姿になるのか予想できたことがありません。
Type (&Life) 活字(と人生) p75
印刷物ならどんなものでも、その基本的な建築ブロックになっているのは活字です。
たとえば、ひとつのページ上で複数の書体を使うことが、デザイン的に避けがたかったり、どうしても必要なことがしばしばあります。
そのような場合に、どの書体を組み合わせれば効果的なのかを、どうやって知ればいいのでしょう?
人生においては、複数のものごとが同時に存在するとダイナミックな関係が成立します。
活字の世界でも、同一のページ上に複数の要素が存在するのが普通です。
たとえ文章だけでできている典型的な書類でも、見出しや副見出し、少なくともページ番号ぐらいは持っています。
これらのページ(や人生)上での力関係は、協調、衝突、コントラストの、いずれかになります。
協調関係は、スタイルやサイズや太さになどにあまり差のないただ1種類の書体ファミリーを使った場合に生じます。
こうするとページが調和を保ちやすく、落ち着いた静かで格式ある雰囲気になりますが、ときにはただ退屈な印象を与える傾向があります。
衝突関係は、スタイルやサイズや太さなどが似ている書体を組み合わせた場合に生じます。
類似性は邪魔な存在です。
視覚的な訴求力が同じ(協調)でもなく、違っている(コントラスト)わけでもないから、衝突するのです。
コントラスト関係は、互いにはっきりと異なる要素や別の書体を組み合わせた場合に生じます。
あなたの注意をひきつけるような視覚的にアピールするエキサイティングなデザインには、一般的に多くのコントラストが仕込まれていて、それが強調されています。
ほとんどの人は、ページ上で複数の書体を組み合わせる必要ができると、簡単にやってのけます。
たぶんあなたは、一方の書体を大きくしたり、太くしたりする必要性があることは感じ取れるでしょう。
さらに、それを理論的に認識し、様々なコントラストに名前を付けることができれば、今度はそれをコントロールすることができるようになるのです。
そうなれば、衝突の問題の根源を突き止めて、もっとおもしろい答えを見つけることができるようになります。
それが、このセクションのポイントなのです。
協調 p76
あなたが、ページ上の要素をある一つの書体と同じ性質のものに統一すれば、そのデザインは協調的なものになります。
その書体のイタリックを使ってもいいし、見出しを本文よりも大きなサイズにしてもいいかもしれませんし、画像や飾りを付けてもいいでしょう。
そのようにしても、基本的には協調性のある印象が与えられます。
協調的なデザインは、ほとんどがどちらかというと落ち着いた格式あるものになる傾向があります。
だからといって、それが好ましくないわけではありません。
ただ、たがいに協調している要素だけを使ってデザインした場合に、どのような印象になるかについて自覚しておくべきだ、ということです。
衝突 p78
同じページ上に、はっきりとした違いがよくわからない、複数のよく似た書体を使った場合に、そのデザインは衝突します。
わたしはこれまで、学生がページ上の一つの書体にあわせるために、「よく似た」書体を探す場面を数え切れないほど見てきました。
これは間違っています。
非常によく似ているが異なる2書体を同一ページ上で使うと、ほとんどの場合間違ってそうなったのだと思われます。
協調は確かに有用なコンセプトですが、衝突は避けるべきです。
コントラスト p80
この世のすべての関係は単にコントラストによって成立している。
それ自体で存在するものは何もない。
--Herman Melville
さて、楽しいテーマの部分にきました。
コントラストを作り出すのはとても簡単です。
衝突も、作り出すのは簡単ですが、好ましくありません。
コントラストをつくるほうはひたすら楽しいものです。
強いコントラストは、デザインについての前のセクションで学んだように、私たちの目を引き付けます。
デザインにコントラストをつけるもっとも効果的でシンプルで満足のいく方法の一つは、活字を使う方法です。
Categories of type 活字のカテゴリー p83
今の時代は、何千という書体を使うことができます。
また、新しい書体が毎日のようにたくさん生まれています。
しかし、ほとんどの書体は、下に示す6つのカテゴリーのどれかに分類することができます。
あなたは、活字のコントラストについて深く知ろうとする前に、まずタイプ・デザインの大きなグループ間の類似性を知っておくべきでしょう。
衝突の原因となる活字の組み合わせは、類似性の方なのですから。
この章の目的は、あなたに文字の形についての知識を得てもらうことです。
活字の組み合わせについては、次の章から説明を始めます。
もちろん、どのカテゴリーにも属さない何百という書体があることにあなたはいずれ気づくでしょう。
活字の多様性に対応したカテゴリーを何百と作ることもできたでしょう。
しかし、心配しないでください。
大切なのは、活字をもっと精細にもっとはっきりと見ることができるようになることなのですから。
私は、次の6つのグループに焦点をあてて説明します。
Oldstyle (オールドスタイル)
Modern (モダン)
Slab serif (スラブ・セリフ)
Sans serif (サンセリフ)
Script (スクリプト)
DECORATIVE (デコラティブ)
Oldstyle p84
オールドスタイルで作られた書体は、手書き文字をお手本にしています。
先端を削った羽ペンを手に持っているところを想像してください。
オールドスタイルには必ずセリフ(下の説明参照)があります。
そして、小文字のセリフは必ず斜めになっています(ペンの角度)。
ペンで書かれた字であるために、文字の曲線部分には太い部分から細い部分への移行部があります。
これは、専門的には“thick/thin transition”(太さの対比)と呼ばれています。
この対比のコントラストは比較的穏やかなもので、やや細い部分からやや太い部分に変化していきます。
曲線のもっとも細い部分同士を線で結ぶと、それは斜線になります。
この線をStress(ストレス)と呼びます。
オールドスタイルの活字は斜めのストレスをもっています。
これらの書体は、みんなほとんど同じに見えませんか?
たとえ、同じように見えても心配しなくて大丈夫です。
タイポグラフィーを学んだことのない人には、これらの書体は同じように見えるものなのです。
これらの書体は「透明性」をもっているので、多量の文字でできた本文に使うのに、最適な書体のグループになっています。
このグループの書体は、文章を読んでいるときに特に目立つ文字であることはまずありません。
つまり文字そのものに注意を引くことがないのです。
もし、人に実際に読んでもらいたい多量の文字をレイアウトするときには、オールドスタイルの文字から選ぶようにしましょう。
Modern p85
歴史の進展につれて、活字の構造も変わります。
活字にも流行があり、ライフスタイルや文化の変化に影響されます。
髪型や服装や建築や言語と同じなのです。
1700年代になると、紙が以前よりもなめらかになり、印刷技術も洗練されましたそれと全般的に機械機具が増えたせいで、活字も以前よりもメカニカルになっていきました。
この時期の新しい書体は、もはや手書き文字を模倣していません。
モダン書体にもセリフはありますが、傾斜せずに水平になっています。
またセリフは非常に細くなっています。
鉄橋のように、無駄のないぎりぎりの構造で、筆致に極端な太さの対比を、言い換えればコントラストを持っています。
ペンの傾きの痕跡はまったくなく、ストレスは完全に垂直になります。
モダン書体はクールでエレガントな印象を与える傾向があります。
モダン書体は見た人をはっと驚かせる外見をしています。
とくに大きなサイズで使われるとその傾向は強まります。
強い太さの対比をもっているために、多量の文字の本文には向いていません。
細い線はほとんど見えないほどですし、太い線は極端です。
そのためにページ上で“dazzling”(まぶしい)と呼ばれる効果を発揮します。
Slab serif p86
産業革命は広告という新しい概念をもたらしました。
初期の広告製作者たちはモダン書体の太い部分をいっそう太くして使いました。
少し離れて見ると、まるで垣根のように縦の線だけしか見えないような文字を使ったポスターを、あなたも見たことがあるでしょう。
この問題を簡単に解決する方法は、文字全体を太くすることでした。
だから、スラブ・セリフ書体には、太さの対比がほとんどありません。
このカテゴリーの書体はClarendonと呼ばれることもときどきあります。
下にあるClarendon書体がこのスタイルの典型だからです。
またこのカテゴリーはEgyptianと呼ばれることもあります。
それは、西洋文明のエジプトブームの時期に人気が出たからです。
このカテゴリーの書体の多くはよく売れるようにMemphis、Cairo、Scarabというようなエジプト風の名前をもっています。
ClarendonやNew Century Schoolbookのように太さのコントラストのほとんどなスラブ・セリフ書体は可読性の面ではたいへんすぐれているので、安心して大量の本文に使うことができます。
しかし、オールドスタイルの書体に比べると全体的に暗ページになります。
スラブ・セリフの書体はオールドスタイルの書体よりも筆致が太く、しかも単調だからです。
スラブ・セリフの書体はすっきりして分かりやすい外見をしているので、子供向けの本によく使われます。
Sans serif p87
“sans”というのはフランス語で、「~が、ない」という意味です。
だから、サン・セリフ書体には筆致の先端にセリフがありません。
セリフをなくすという考え方は、書体の進化のかなり後期に出てきたものですが、20世紀に入るまではあまり広い成功をおさめることはありませんでした。
サン・セリフ書体は、ほとんど必ずと言っていいほど太さが一定です。
つまり実質的に、筆致に視覚的な太さの対比がなく、文字の線が全部どこでも同じ太さだということです。
サンセリフについての重要な情報は次のページにもあります。
あなたの書体コレクションの中にサン・セリフ書体がHelveticaとAvant Gardeしかないなら、よりよいページを作るためには、ブラック、ヘビー書体を含むサン・セリフの書体ファミリーを導入するのがベストです。
上にあげた書体ファミリーはどれもライトからエキストラ・ボールドまで幅広い太さをもっています。
そのような書体ファミリーをひとつ導入するだけで、目を引くページをつくるための選択肢が驚くほと増えることでしょう。
ほとんどのサンセリフ書体は前のページの例のように太さが一定です。
しかしながら、膨大な数のサン・セリフ書体群の中でほんの2~3種類と、ごくわずかですが、かすかな太さの対比をもつサン・セリフ書体があります。
下にあるのはOptimaと呼ばれる、ストレスをもつサン・セリフ書体の一例です。
Optimaのような書体は、ページ上でほかの書体と組み合わせて使うのが非常に難しいのです。
太さの対比の点では、セリフのある書体に似ているし、一方ではセリフがないので一般的なサン・セリフ書体にも似ているからです。
この種類のサンセリフ書体を使うときは、くれぐれも気をつけてください。
Script p89
スクリプト書体のカテゴリーには、装飾書体用のペンや筆、時には鉛筆やテクニカル・ペンで書いたような手書き文字のように見える書体がすべて含まれます。
このカテゴリーはさらにいくつかのグループに容易に分類することができます。
続け字のスクリプト書体。
つなげないスクリプト書体。
手書きのように見えるスクリプト書体。
伝統的なカリグラフィー書体のスタイルを真似たスクリプト書体などです。
しかしここでは、それらすべてをひとつにまとめてあつかいます。
スクリプト書体はチーズケーキのようなものです。
つまり食べ過ぎてはいけないということです。
控え目に使うようにしてください。
ファンシーなスクリプト書体は、長文の本文には絶対に使うべきではありませんし、全部を大文字にするべきでもありません。
しかし非常に大きなサイズでスクリプト書体を使うと、目覚ましい効果を発揮します。
臆病にならないことです。
Decorative p90
デコラティブ書体を見分けるのは簡単です。
もし、本文全体にその書体が使われていたら読むのを途中で放り出すだろうと思うような書体は、たいていデコラティブ書体に分類できます。
デコラティブ書体は偉大な書体です。
楽しくて、目立って、使い易くて、値段が安いことが多くて、あなたが風変わりなアイデアを表現したければそれに向く書体が必ずあるからです。
もちろん、デコラティブ書体が非常に目立つというまさにその理由のために、それが効果を発揮する場は限られてきます。
デコラティブ書体を使おうとするなら、その書体に対してあなたが抱いた第1印象を越える使い方をしましょう。
たとえば、上記のImproveにくだけた雰囲気を感じるなら、もっと格式ばった場面で使うとどうなるか見てみましょう。
Juniperに西部の荒野の雰囲気を感じるなら、法人や花屋さんの仕事で使って何が起こるかを見てみましょう。
デコラティブ書体は、あなたの使い方次第で明白な感情を無作法に伝えることもできれば、あなたの第1印象と非常に異なる意味合いを伝えるように操作することもできます。
しかしこの話題は、この本があつかう範囲には入りません。
意識的に p91
活字を効果的に使うためには、もっと意識的になる必要があります。
つまり、目をしっかりと開いて、細部を確かめて、問題を言葉で表現する努力をしなければならないということです。
あるいは、あなたを強く引き付けるものを見たら、なぜ引き付けられるのかを言葉にすることです。
数分間でいいので、どれかの雑誌を始めから終わりまで見てください。
そして目にした書体を分類してみてください。
ほとんどの書体はどのカテゴリーにもぴったりとあてはまらないと思います。
しかし、それでいいのです。
一番近いように思えるカテゴリーに入れてください。
大切なのは、あなたが文字の形をもっと詳細に見るようになることですから。
このことは、あなたが書体を組み合わせて使おうとする場合に、絶対に必要になります。
まとめ p94
活字のこのような広範なカテゴリーに意識を向けるようになることが非常に重要であることは、どれほど強調してもしすぎることはありません。
あなたが次の章を読み進めるにつれて、このことがなぜ大切なのかがはっきりわかるようになるでしょう。
あなたの視覚的な技能を常に鋭くしておくための簡単な訓練は、それぞれのカテゴリーのサンプルを集めることです。
サンプルを見つけることができたら、その印刷物から切り取りましょう。
ひとつの広範なカテゴリーの中で発展しつつあるパターンが見つかりますか?
さらにすすめて、ひとつのカテゴリーの中のグループを作ってみましょう。
たとえば、オールドスタイルの書体の中で小さなx-ハイトと高いディセンダーを持っている書体のグループなどです(下の例を見てください)。
あるいは、続け字の手書き文字よりもハンドプリンティングの方に本当に似ている書体のグループや、extended(平体)やcondensed(長体)の書体のグループなどです(下の例を見てください)。
文字の形を視覚的に意識するようになれば、あなたは、おもしろくて刺激的で効果的な活字の組み合わせができるようになるのです。
Type contrasts 活字のコントラスト p95
この章では、書体の組み合わせ方に焦点を絞ります。
次のページからは、活字にコントラストをつける様々な方法を説明していきましょう。
各ページには具体的な例があげてあります。
そしてセクションの最後には、ページに活字のコントラストをつけるためのさまざまな原則の実例をのせておきました。
活字のコントラストをつけるのは、単に美観のためだけでなく、意味伝達を強化するためでもあります。
読者が、ページ上で何がおきているかを探し当てるのに苦労するようではいけません。
そのページの焦点、素材の構造、目的、情報の流れ、このすべてが一目で認識できるようになっているべきです。
そうした上で、ページがきれいにデザインされて悪いわけがありません!
これから次のようなコントラストの付けかたを説明していきます。
p96
サイズのコントラストは、かなり分かりやすいものです。
大きな活字と小さな活字のコントラストです。
しかし、サイズのコントラストを効果的に利用するためには、臆病ではダメです。
12ポイントの活字と14ポイントの活字の間にコントラストは生まれません。
その場合は、ほとんどが単に衝突をおこすぐらいです。
また65ポイントの活字と75ポイントの活字の間にもコントラストは生まれません。
ある2つの活字要素に、サイズでコントラストをつけることは可能です。
ただし、はっきりとコントラストをつけること、誤植の可能性を疑われるようではいけません。
p97
サイズのコントラストは、必ずしも活字を大きくすることだけを意味するわけではありません。
単に、コントラストを付けるべきだということを意味しているのです。
たとえば、新聞の大きなページにただ行の小さな活字の文章が載っていたら、あなたはどうしても読まざるを得ないでしょうね?
どうしても読む気にさせる原因の要な点は、ページの大きさと極端に小さいとのコントラストにあるのです。
p98
わたしは、すべてを大文字で書かないように、何度も繰り返してきました。
たぶんあなたは、活字を大きくしたくて全部大文字にすることがあるでしょう?
しかし皮肉なことに、全部大文字にすると小文字を使う場合の最大2倍の幅が必要になるので、ポイントサイズを下げなければならなくなります。
小文字を使うようにすれば、実際にはもっと大きなポイントサイズにできる上に、読みやすくもなるのです。
p99
サイズのコントラストを例外的で刺激的な方法で使いましょう。
数字やアンバーサンド(&)やクオーテーション・マーク(“”)など、われわれの活字記号の多くは、極端に大きくして使うと非常に美しく見えるものです。
それらを、見出しや引用の装飾要素として使ったり、出版物全体にわたる反復要素として使いましょう。
p100
書体のウェイト(重さ)は筆致の太さに関係します。
ほとんどの書体ファミリーにはレギュラー、ボールド(太字)、セミボールド(中太)、エキストラ・ボールド(極太)、ライト(細字)などさまざまなウエイトでデザインされた書体が含まれています。
ウエイトを組み合わせるときは「臆病になるな!」というルールを思い出してください。
レギュラーの書体とセミ・ボールドの書体でコントラストを付けようとしてはいけません。
より太いボールドを採用すべきです。
異なる活字ファミリーに属する書体を組み合わせる場合は、通常はどちらか一方の書体の方がもう一方よりも太いものです。
それを強調しましょう。
あなたのパソコンに初めから入っている書体には、強いボールド体をもつものはありません。
非常に強い黒々とした書体を少なくとも一つは導入することを、心からおすすめします。
そのような書体を見つけるために、書体のカタログに目を通してください。
ウエイトのコントラストは、デザインし直さずに、ページに視覚的なおもしろさを添えるのに簡単でもっとも効果的な方法のひとつです。
しかし、あなたが大きくてしっかりした筆致の書体をもっていなければ、美しくて強いコントラストを実現することはできないのです。
p102
ウエイトのコントラストは、ページの外見を魅力的にするだけでなく、情報を体系化するのにもっとも効果的な方法のひとつでもあります。
ニュースレターの見出しや小見出しの文字を本文の文字よりも太くすれば、それはすでにウエイトのコントラストを使っていることになるのです。
そこで、その考え方を意識的にとりあげて、少し過激にあてはめましょう。
下の2つの目次の例を見てください。
重要な見出しをはっきりと太くすると、情報の構造が一目で理解できるようになることに着目してください。
このテクニックは索引にも応用することができます。
そうすると、読者は索引項目が第1次レベルのものなのか第2次レベルのものなのかが一目でわかるので、何かをアルファベット順で探そうとする場合に起こりがちな混乱を避けることができます。
この本の索引を見てみてください(ほかの本の索引も見てみましょう)。
p103
画像や引用を入れる余地がないような、灰色の文字ばかりのページを作ることになったら、重要な語句を強い太字体にしてみましょう(もし、セリフのある書体の文の中に太字のサンセリフ書体を入れるなら、サンセリフ書体の方を1ポイント小さくしてセリフ書体と大きさを合わせる必要があるでしょう)。
p104
書体の構造(structure)とは、それがどのようにつくられているかということです。
物置にある材料を使って書体をつくる場合を想像してください。
たとえばサン・セリフのようないくつかの書体は、ホースから作ったように、太さが一定で筆致を識別できるほどの太さの強弱がありません。
たとえばモダンのような書体は、柵で作ったようにメリハリが大いに強調されています。
ほかの書体は、この2つのタイプの間に収まります。
異なる書体ファミリーに属する2つの書体を組み合わせて使うなら、構造の異なるファミリーのものを使うようにしましょう。
このセクションの前半で説明した活字のカテゴリーの違いのあれこれを覚えていますか?
あの知識は、ここで役に立つのです。
それぞれのカテゴリーは構造の類似性に基づいて分類されています。
だから、あなたが2つ以上の書体を選ぶならカテゴリーも異なるものを選ぶのが、よい書体選びの方法になるのです。
p105
あなたは、“The Mac is not a typewriter”か“The PC is not a typewriter”を読みましたか?(もしまだだったら、ぜひお読みになるべきです)
これらの本の中でわたしは、2種類のサン・セリフ書体を同一ページ上で使ってはならないし、2種類のセリフ書体も同一ページ上で使ってはならないと書きました。
ただし、タイポグラフィーの知識があれば別です。
さて、この本であなたはタイポグラフィーの訓練をうけています。
だから、いまやあなたは同一ページ上で2種類のサン・セリフ書体を使ったり2種類のセリフ書体を使う資格があるのです。
しかし、必ず守らなければならないルールがあります。
2種類の書体を使うなら、2種類の異なる書体のカテゴリーから選ぶということです。
つまり、あなたは2種類のセリフ書体を同一ページ上で使うことができるものの、ひとつをオールドスタイルにしたら、もうひとつをモダンかスラブ・セリフにしなければなりません。
その上で、コントラストを強調するように注意する必要があります。
それができれば、確実にうまくいきます。
同様に、同一ページ上に2種類のオールドスタイルの書体を使うのは避けるべきです。
オールドスタイルの書体同士は非常によく似ているので、どう処理をしても衝突をおこすのは確実です。
同じ理由で、2種類のモダン書体、2種類のスラブ・セリフ書体を同一ページ上で使うのは避けてください。
また、2種類のスクリプト書体を同一ページ上で使うのもやめましょう。
p106
異なる書体というものは、はじめは動物園のトラのようにはっきり見分けがつかないものです。
だから、ある書体は別の書体と違って見えるという考え方に、あなたがまだ慣れてないなら、文字の構造に簡単にコントラストをつけるための方法は、セリフ書体とサン・セリフ書体をそれぞれひとつづつ選んで組み合わせることです。
セリフ書体は、普通メリハリのコントラストをもっていますが、サン・セリフ書体は一般的に太さが一定です。
セリフ書体とサン・セリフ書体の組み合わせは、長年使われてきた定評ある組み合わせですし、無限に近いほどの選択の可能性があります。
しかし、下の最初の例を見れば分かるように、構造のコントラストだけでは力強さに欠けるものです。
サイズや太さ(weight)などほかのコントラストと組み合わせて、違いを強調する必要があります。
p107
2種類のサン・セリフ書体を同一ページ上で組み合わせるのはどんな場合でも難しいものです。
なぜなら、太さが一定という構造しかないからです。
あなたが、抜群に頭が良ければ、サンセリフ書体でもごくまれに筆致にメリハリをもつ書体を使って、2種類のサン・セリフ書体をなんとか組み合わせられるかもしれません。
しかし、たとえ試みるだけとしても、そんなことはおすすめできません。
2種類のサンセリフ書体を組み合わせるより、同じサン・セリフの書体ファミリーの異なるものを使ってほかの方法でコントラストを付ける方が優れています。
サン・セリフの書体ファミリーは、細字から極太までのメンバーが立派に揃っているのが普通ですし、長体や平体があることもよくあります(方向のコントラストの項目を見てください)。
p108
文字のフォームというのは、文字の形のことです。
文字は、構造が同じでも“Form”が異なることがあります。
たとえば、同じ書体ファミリーの大文字の“G”は小文字と同じ構造をもっています。
しかし、実際のフォーム、つまり形は大きく異なっています。
フォームのコントラストについて考えるための簡単な方法は、大文字対小文字と考えることです。
p109
それぞれの大文字の形がその小文字とは異なっていることに加えて、全部大文字で書いた場合は、単語のフォームも異なってきます。
そのせいで、全部大文字で書いた単語は読みにくくなるのです。
私たちは、ある単語の意味を一つ一つの文字からだけでなくその形からも認識するのです。
全部大文字で書かれた単語は、下の例を見れば分かるように、同じような長方形をしているので、私たちは文字をひとつづつ読んでいかなければなりません。
全部大文字にするのをやめるようにという私の忠告に、あなたはうんざりしているかもしれませんね。
私は絶対に全部大文字にしてはいけないと言うつもりはありません。
当り前ですが、全部大文字にしても読めなくなるわけではありません。
ただ、そうすると視認性と可読性が低くなるということを、はっきり意識しておいてください。
ときには、あなたの作品のデザイン的な「見栄え」のために全部大文字を使う方がいいこともあるでしょう。
それでいいのです。
しかし、単語が読みにくくなることも事実です。
デザイン的な見栄えを可読性に優先させるだけの価値があると、自信を持って言うことができるなら、ためらわずに全部大文字を使って結構です。
p110
もうひとつのはっきりしたフォームのコントラストは、ローマン体対イタリック体です。
イタリックやスクリプトというのは、文字が傾いていたり、流れていたりする状態ですが、ローマンというのはそれに対して文字が上下にまっすぐに立っている状態です。
たぶんあなたもよく使うと思うのですが、単語や文をやや強調するためにイタリックを使うというのは常套手段です。
p111
スクリプト書体やイタリック体は、すべて傾いたり流れたりするフォームをしているので、それらを同書体どうしで組み合わせたり、イタリック体とスクリプト書体を組み合わせたりは絶対にしないようにしましょう。
これは重要なので覚えておいてください。
もしそのような組み合わせを使った場合は、必ず衝突が起こります。
類似点があまりに多いからです。
p112
文字の「方向」について明らかに問題になるのは、「傾き」です。
これについて私が言いたいのは、文字を傾けないでくださいということだけです。
確かに、そうしたくなるときもあるでしょう。
しかし、文字を傾けることでその作品の美しさやコミュニケーションが強化されることをはっきりと言葉で説明できる場合にかぎってそうするようにしてください。
「このボートレースのお知らせの文字は右あがりになっているべきだ。
なぜなら、その角度は積極的な前向きのエネルギーをページ上に作りだすからだ」とか、「この角度の文字を繰り返すことでスタッカートの効果が生まれます。
それは、われわれが広告するバルトークの曲がもつエネルギーを強調します」というようにです。
そして、お願いですから、四隅を傾いた文字で埋めるのはやめてください。
p113
文字の方向という考え方には、もうひとつの解釈があります。
どんな文字要素にも方向があります。
たとえまっすぐにページを横切っているだけでも、そうです。
文字の行は、水平の方向を持っています。
細長い文字ブロックは、垂直の方向を持っています。
コントラストを付けるのが楽しくて興味深いのは、このようなもっと高度な文字の方向に対してなのです。
たとえば、見開きの2ページを横切る太い見出しと、たくさんの細長い段組みでできた本文とで、おもしろい方向のコントラストが生まれます。
p114
レイアウト上の画像や線など、文字以外の部品も方向を強化したりコントラストを付けるために使うことができます。
p115
下の例には、力強くすてきな方向のコントラストがあります。
さて、この作品を強化するために、ほかにどんなコントラストが使われているでしょうか?
この例には3種類の異なる書体が組み合わされていますが、それがうまくいっている理由は?
また、この例の様々な書体、行間、文字間、太さ、サイズ、フォームから作りだされる質感にも注意してください。
もし文字が立体だったら、あなたは文字の上を指でなぞり、質感のコントラストを感じることができるでしょう。
実際には、あなたはこの質感を視覚的に「感じる」しかありません。
これは、微妙ですが重要な文字の一部なのです。
さまざまな質感は、あなたがほかのコントラストをつくるごとに自動的に生まれますが、その際に、質感とその効果について意識しておくのはいいことです。
p116
色も方向と同じようにわかりやすい概念です。
実際の色の使用について、私が言っておきたいのは、赤やオレンジなどの暖色は前に浮き出てくるように見えて、私たちの注意を引き付けるということです。
私たちの目は、暖色に強く誘われるので、ごくわずかの赤を使うだけでコントラストをつけることができます。
反対に、青や緑などの寒色は、引っ込んで見えます。
寒色は広い範囲に使っても大丈夫です。
実際に、寒色で効果的なコントラストを付けようと思ったら、暖色よりも多く使わなければなりません。
(この本は、ご覧のとおり色が白と黒しかないので、このページでは、想像力を使ってもらわなくてはなりません。しかし、「実際」の色はこのセクションにおける重要な問題ではありません。)
p117
タイポグラフィーの世界では、ページ上の白黒の文字を「色」を持つものとして扱います。
「カラフル」な色を使ってコントラストをつけるのは簡単ですが、白黒の色のコントラストを理解し、利用するにはもっと洗練された目が必要になります。
p118
細くて軽い書体を、文字間と行間をあけてレイアウトすると、とても明るい色(と質感)が生まれます。
太いサン・セリフ書体をぎっしり詰め込むと、暗い色(と質感)が生まれます。
これは、絵の入らないような文字の多いページで特に役に立つコントラストのつけ方です。
灰色の文字だけのページは見た目に退屈ですし、読む気も誘いません。
それに、混乱も引き起こします。
たとえば、下の例にある2つの話は互いに結びついているのでしょうか?
p119
大見出しや小見出しに太い文字を使って色をつけたり、引用文や短い挿話をはっきりと違う「色」で添えたりすれば、読者がそのページに目を止めて本当に読む可能性が高くなります。
それが、私たちにとって大切なことですよね?
このように色を変えると、読者の読む気を誘うだけでなく、情報の構造がよくわかるようになります。
下の例を見てください、今度は同じページ上の2つの話が互いに関係ないことが、もっとはっきり分かるようになっています。
p121
何も特別に手を加えなくても、文字の自然の色を変えることができます。
下にあるのはそのような、シンプルな実例です。
よくできた活字に関する本のほとんどには、さまざまなバリエーションの書体の文字ブロックの例が載っているので、いろんな書体のページ上の色や質感を確かめることができます。
書体の発売元から書体見本帳を手に入れれば、それぞれの書体の文字ブロックが載っているので、色を比較できるはずです。
コントラストを組み合わせよう Combine the contrasts p122
臆病にならないように。
効果的な文字レイアウトのほとんどは、複数のコントラストを組み合わせています。
たとえば、2種類のセリフ書体を組み合わせる場合に、互いの構造が違うなら、フォームも互いに異ならせてコントラストを強調します。
一方がローマン体で全部大文字なら、もう一方は、イタリック体にして小文字も使うようにします。
サイズや太さ、たぶん方向でもコントラストを付けます。
このセクションの例をもう一度見てください。
それぞれの例が複数のコントラストの原則を使っていることが分かるでしょう。
アイデアの幅を広げるには、よくできている雑誌を始めから終わりまで見ることです。
文字レイアウトを面白くしているのはすべて、コントラストであることに注目してください。
小見出しや、イニシャル・キャプ(章の先頭の一文字を特大の大文字にする)は、太さとサイズのコントラストを強調します。
また、セリフ書体対サン・セリフ書体というような構造のコントラストや、大文字対小文字というようなフォームのコントラストも多用されています。
あなたが見ていることを言葉にしてみましょう。
関係の力学を言葉にできれば、それを支配することができるのです。
文字の組み合わせを見て、何かひっかかるものがあるときは、書体の組み合わせがうまくいっていないことをあなたが直感的に感じているからなのです。
それを言葉を使って解説しましょう。
もっといい答えを探そうとする前に、問題を見つけなければなりません。
太さのコントラストは、どの程度効果的に使われているか、サイズは、構造は、という具合いにです。
問題を見つけるためには、コントラストではなく類似性の方を言葉にしてみるべきです。
互いに競いあっているふたつの書体はないか。
ふたつとも全部大文字になっていないか。
両方の書体とも筆致に強いメリハリを持っていないか、という具合いです。
あるいは、焦点が衝突を起こしているのかもしれません。
たとえば、大きなサイズの細字体の書体と小さなサイズの太字体の書体があれば、互いに相手よりも重要な存在であることを主張するので、けんかが起こります。
問題を言葉にしましょう。
そうすれば解決することができます。
手順 p128
あなたは、何かをデザインしたり、デザインし直したりするときに、どこから始めますか。
焦点から始めよう。
読者に何を真っ先に読んでもらいたいかを、まず決めます。
次に、とくに調和的なデザインを作るつもりでもない限り、あなたが決めた焦点を、ほかの要素に対して強いコントラストを持つように作ります。
情報を論理的なグループにまとめる。
これは、グループ間の関係に基づいて判断してください。
この関係をグループを互いに近づけたり離したりすることで表現してください(近接の原則)。
ページ上に文字や絵をアレンジするときには、強い整列を作り出して、それを維持する。
写真の縁や垂直な線など、強い縁を見つけたら文字列などのほかのオブジェクトをそれに揃えて、整列を強化してください。
反復をつくる。
あるいは、反復できそうなものを見つけてください。
太字体や、罫線、約物、空間的な配置をそれに使ってください。
自然に反復している要素を探して、それを強化してもさしつかえがないかを検討してください。
協調的なデザインを作るつもりでない限り、読者の目を引くような強いコントラストを必ず付ける。
コントラストは相対的なものだということを忘れないように。
ページ上のあらゆる要素が大きくて太くて派手だったら、そこにはコントラストは存在しません。
コントラストをつけるために、一部の要素をもっと大きくもっと太くしようと、逆にもっと小さくもっと細くしようと、大切なのは違いがあることであって、それによって、あなたの目が引きつけられるのです。