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「スモールビジネスの教科書【実践編】」を読んだ

投稿時刻2024年3月16日 21:50

スモールビジネスの教科書【実践編】」を 2,024 年 03 月 16 日に読んだ。

目次

メモ

p5

※前著では売上による定義を採用していたが、売上はビジネスモデルによって全く異なるため定義から外した。
一般論として例えば広告運用や卸売といった業種であれば売上が大きくなる一方、ソフトウェアなどであれば売上は低くても利益率は高いといった傾向がある。
売上高で会社を評価するべきでなく、最終的にスモビジオーナーが使える金は利益により決定されるため、今回から利益による定義を採用した

p51

人を雇うことを嫌う人が大量の人を雇用する必要がある事業、例えばアウトソーシングに取り組むのは厳しいし、周囲からかっこいいと思われないと辛い人が精力剤事業に取り組むのは厳しいなど、自分の性格は事業を運営していく上で決して無視出来ないものとして考えておいたほうがよいだろう。 
一方で商材自体が好きかどうかというのは、ある程度やり続けていればどうにかなる。

損失額の上限は300万円 p54

A氏は基本的に儲かりそうなものには全て手をつけて3ヶ月以内に黒字化出来ないのであれば撤退という考え方をしている。 
見積もりを取ってシミュレーションを行い、最大の損失がおおよそ300万円以内に抑えられるのであれば参入する。

2 アートファンド:損失額300万円、工数100時間 p55

ファンドを作っては集まったが、売れている私募ファンドはみな節税商品年数を短くしていたことから、1枚あたりが巨額のアート作品は採算が見合わなかった。 

また、アートは資産としてのポートフォリオで最下位なので、トップクラスの超富裕層しか興味を持たず、資産額10億円以下のプチ富裕層にはあまり刺さらなかった。

一方、超富裕層は自ら1枚1億円で購入するので、結論としては、やるのであれば1枚1枚をしっかり売ったほうがいいと気付いた。

そもそも何故フランスの巨大アートファンドでも500億円しか規模がないのか、しっかり考えるべきだったと反省しているという(フランスのアート市場が対GDP比10%以上ある一方で、日本のそれは3%)。 

p69

市場予測の方法に関しては多くの著書があるため他を参照頂きたいが、一時的な流行か否かを簡易に判断するには「熱狂的に使っている人がおり、今後その利用者の拡大が見込まれるか」を見るとよいだろう
(参照: Sam Altman “How to Succeed with a Startup” https://www.youtube.com/watch?v=0lJKucu6HJc&t=1s)。

p83

そもそもビジネスはターゲットと商材がうまくハマるピンポイントでしか成立しづらいのだ。 

このピンポイントが発見されることを特にスタートアップ用語ではプロダクト・マーケット・フィット(以下PMF)と呼び、スタートアップであればこのPMFを目指して調達した資金を使いながら走る。

新しいビジネスモデルの創出は非常に危険 p97

注意点として述べておくが、ビジネスモデルを変えようとする試みは基本的にするべきではない。

元アップルのエバンジェリストであり投資家・ビジネスアドバイザーとしても活躍する米国のガイ・カワサキ氏も述べているように、技術や販売においては新たな方法はあり得るが、ビジネスモデルというのは多くの人の試行錯誤の結果として現状があるため全く新しいものはほとんどない。

これに変更を加えようという取り組みは非常にリスクが高い試みなのである(参照: The Art of the Start 2.0 ガイ・カワサキ著)。

これはビジネスモデル以外に関しても言えることであるが、競合が提供しているサービスは偶然の結果ではない。

競合・先行者は多くの苦労を経て顧客が受け入れるものを発見し、その結果として現在がある。

これは基本的に正しい。

この先行者に対し挑戦出来る可能性があるのは、環境が大きく変わった場合である。

代表的な例にはスマートフォンがある。

携帯電話市場にスマートフォンが登場することで、市場の構造自体が変化した。

このようなケースの場合、たとえ先行者であっても着うたなどを提供していた会社のビジネスモデルは変革を余儀なくされた。

現在ではEV化、エネルギーシフト、半導体サプライチェーンの構築などのトレンドが見られる。

こういった大変革に初心者が賭けていくのは推奨しないが、かなりビジネスに慣れてきて時代の大波に乗る挑戦をしたい人は取り組んでもよいだろう。

p96

そのような修業と独立を許容する会社も近年は現れている。

企業側としても独立を試みるような野心的な人材を獲得したいし、自社のみでは全ての機会を獲得しきれないという問題もある。

それを補完してくれるのが、リスクがある領域にも突撃してくれるような気概があり、自社とも繋がりを持ち続けられる元社員というわけだ。

当然先行者よりも品質やオペレーションの効率は悪く、顧客基盤もないため利益率は低くなるが、売上ゼロという状態にはならないのが利点だ。

売上があれば学習を進めることが出来るし、逆に売上がないと学習の効果は低くなると考えるべきだろう。

実務を経験出来ないからである。

学習段階においては利益率を追求するよりも、売上を作りながら学習を進めるべきなのだ。

ここは事業を運営する過程の学習段階であり、把握するべきことを学ぶのが主な目的であるため、まずは先行者の少々劣化したコピーを作れればよいと考えよう。

独自性が高いサービスの生存率は極めて低い p103

繰り返しになるが、もしスモビジ経営が初めてということであれば、最初は独自性があるサービスを考えないほうがよいだろう。

参入時は「まずは修業として踏み出す」という考えのもと、可能な限りリスクが低い状態で始めることを推奨する。

初期投資を行い、時間をかけて開発した製品を発売、そして売上を得ていくという方法は完全な初心者には不向きなのだ。

製品が出来上がり、売れる妄想をしている間は楽しいものであるが、ほとんどの場合その妄想は妄想のままであり、発売してから苦悩が始まる。

ビジネスに熟練していればこの時期の乗り越え方には慣れているだろうが、初心者には辛い段階だろう。

このようなケースの顛末がどのようになるか知りたい場合は、3年前にリリースされた新サービスを検索してみるとよいだろう。

驚くほど、既に存在していないことに気付く。

会社自体がない場合もあるし、胆力がある経営者であれば全く異なる事業で拡大している場合もある。

自分自身が例外である保証は全くない。

新サービスとは基本的にそういうものなのだ。

新規性の高いサービスは失敗する運命にあると考えよう。

着実に売上が見込めるビジネスから始める p104

熟練していれば、ビジネスが最初から成功軌道には乗らないことや、ある程度、右往左往する期間を経た後に儲かり始めることを知っている。

そのための備えをしているからこそ、この辛い時期をくぐり抜けられるのだ。

資金力がない初心者が労働所得から貯蓄した100万円を乾坤一擲、新事業に賭け、無惨にも資金が減っていくのを見るというのは、精神的にも非常に辛いフェーズになってしまう可能性が高い。

1人ではなく、仲間と共に事業を開始する場合、このフェーズにおいては仲間が1人1人離れていったり、お互いにいがみ合ったりする、かなりハードな時期になる。

他人がやっていないことをやる(独自性があることをやる)のは大きなリスクがあるのだ。

他人との差分が大きければ大きいほど、売れれば利益の源泉にはなるのだが、売れない可能性も同時に高まっていく。

最初は比較的低い利益率であっても確実に売れるということを重視しよう。

バーニングニーズに刺せ p134

参入のためには前作で強調したバーニングニーズ(「“これ”さえ出来れば他はどうでもいい!」の“これ”の部分、欲望ともいう)に刺すことが重要である。

初期のサービスは後から振り返ると恥ずかしいほどに未成熟である。

「こんなものをよく売りに出せるな」など、後続の者から見るとハリボテのような商品を市場に投入することから始めるのだ。

それでも売れることがある。

何故か。

それは顧客の「細かいところはどうでもいいからとにかくほしい!」という燃えるようなニーズ、バーニングニーズに刺さっているからである。

東京を避けて地方を狙う×総合対応 p153

地域特化の方法
強い競合がいない地域を発見していくことでビジネスモデル自体に独自性がなくとも圧勝することが出来る。

J氏が補助金コンサルや人材コンサルを東京でやらず大阪や九州でやっているのは、そういった理由からである。

地方を攻める際のポイントとしては、事業を行う地域に拠点を置くのではなく、敢えて東京に置くということがある。

東京からコンサルが来るというだけで「凄いノウハウがありそうだ」と考えてもらうことが出来るのだ。

また、その地域自体に住んでしまうと、顧客から呼び出されたときにすぐ駆けつけなければならなかったり後輩扱いされたりするなど、下に見られてしまうリスクがある。
総合対応
人脈を活用し、顧客の困りごとに対して幅広く対応出来るようにすることで、差別化を図ることが出来る。

他社に話すことが面倒だから、全部自分に相談が来るという状態を如何に作れるかが重要である。

一方で、あまりに関係性が緊密すぎると追加サービスをタダで依頼されるリスクが生じる。

これには注意しなければならない。

J氏はこのリスクに対応するために、他の会社を紹介してバックマージンをもらう体制を整えていた。

町の中華料理屋を目指す p155

サービス内容の違いより近さと使いやすさ
E氏はサービスで差別化要因をあまり作らない。

それよりもアベイラビリティ(有用性・可用性。ここでは「近くにあり、いつでも利用出来る状態」を意味する)で差別化を図っている。

町の中華料理屋は大半が似たようなものであるが、何故、特定の中華料理屋に行くかと言えば立地のためである。

これはコンサルティング会社も同じであり、すぐに相談出来るという緊密な関係性があるということが他社との違いとして機能しているのだ。

そもそも世の中のサービスで特殊な技能・技術を買っているほうが少ないのではないか。

スモビジにおいてはなおさらである。

p161

環境に対してすぐに適用し続けよう。

注意してほしいのは「他社はまだやっていない・自社がやれば勝てる」という発想は裏切られる場合も多いということである。

他社がやっていないのは知見がないからではなく、儲からないことを知っているからなのかもしれないと考えてみてほしい。

他社がやっていないことは「儲からない」というリスクがある可能性が高く、それでもやるという決断をするのであれば、撤退の準備を常にしながら進むべきである。

5 競合が手薄な地域を狙う p163

競合の少ないエリアを狙うというのは単純な戦略ではあるが、有効性は未だに失われていない。

今回の例ではJ氏の補助金や採用コンサルについて挙げたが、人材事業、広告代理店事業、受託開発事業でも地域特化戦略によって競争力を保っている会社は数多くある。

なんとなく自分が住んでいる地域で事業を行うのではなく、戦略的に地域を選ぶことで競争力を保てるか検討してはどうだろうか。

競争戦略に関する注意点 p164

強みは顧客目線で考える

「自社の強みは技術です」というように、強みを技術に設定してしまうのは、技術に自信がある企業に頻発する症状である。

技術的な優位性はビジネスでの優位性と必ずしも一致しない。

例えば凄まじく高精細なテレビを作れる技術があったとする。

これは強みだが、果たして売れると言えるだろうか。

顧客から見ると確かに高精細であったほうが当然ありがたい。

しかしそれは自分が認知出来ないほどの高精細であれば価値にはならない。

高精細は飽和してしまうのだ。

虫眼鏡で見ないと分からない画質の違いは開発者にとっては差であるが、顧客にとっては大した差ではない。

テレビが高精細である代わりに価格が高かったり、音響を犠牲にしていたりすれば、優位性があるとは言えないだろう。

優位性は顧客目線で常に捉える必要があるのだ。

このような症状は社内だけで話し合っていると常に発生してしまう。

技術のような特定のKPIを設定し追求するというのは、あまり思考を要さないため楽なのだ。

ビジネスでは常に「どうすれば売れるのか」という問いに向き合おう。

「どうすれば性能を伸ばすことが出来るのか」という問いはそれに付随する論点でしかない。

その性能を伸ばしたら顧客は買いますか?という問いを持とう。

関発者目線で飽和点以上に性能を高めても、それは優位性ではなく単なる無駄なコストとなる。

競合との差だけを考えると、このような思考になってしまう。

常に顧客への提供価値を中心に考えるとよいだろう。

競合との差は顧客が自社と他社製品を横並びにして比較し悩んでいる場合に考えるべきである。

王道を使いこなそう p174

最新を追い続けるのは危険
最先端のチャネルは競合も使いこなし方を知らないため、美味しい時期が確かに存在する。

ただし瞬く間に参入が増え、美味しい時期がすぐに終わる場合も多い。

利用者の使い方も定まっていないため、あっという間に計算がずれる傾向もある。

Y氏が精力剤の広告をFacebookやインスタグラムなどに出稿した際には、非常に広告単価のボラティリティ(価格変動)が大きかったというが、一方で、Yahoo!広告のようなある程度古いチャネルのほうが安定的な効果を発揮したという。

チャネルは一度乗りこなすことが出来れば継続的な成果を期待出来る。

当時Yahoo!広告を使いこなしていた競合他社は安定して成長していったとY氏は語る。

新しいチャネルを乗りこなしている自分に酔ってしまうことにも注意する必要があると付言する。

誰しも「他の人は出来ていないがTikTokを使いこなせている自分」という状況に陶酔してしまうものであるが、このような欲を満たすには、新たなチャネルのノウハウを獲得し続ける必要があるので、早々に息切れする可能性が高い。

類似品が既にあるケース p166

何かビジネスを考えたとする。

知人に話すと「似たようなものは既にある。違うことをしなければならないのではないか」という反論がある。

非常によく見る場面だが、この反論にはほぼ意味がない。

シェアを100%取っていてスイッチングが不能なサービスなど現実世界にはないのだ。

そして顧客に認知されていないサービスは実質的には存在しないのと同義である。

基本的に会社というのは隙だらけである。

自社にとっての優先度を見極めて、多くの事業機会は敢えて捨てているのだ。

大手企業となれば捨てる事業機会は膨大である。

これは前作にも書いたがスモビジは大手企業のゴミ拾いをするべきだ。

大手にとってはゴミでもスモビジにとっては宝である。

まず自分が考えたものとの類似品は必ずある。

なければ自分が考えたビジネス自体が妄想である可能性が高い。

むしろ類似品があることは良いことだ。

類似品が成功している場合はもっと良い。

この類似品を地域・注力セグメント・価格などをやや変えて市場に投入すれば成果が見込めるのだ。

p180

しかしこれには終わりがあるのだ。

成熟していて安定したチャネルを使いこなすよう意識するとよいだろう。

初期のM氏のように代理店というチャネルを嫌う理由はよく分かる。

自社で営業のコントロールが出来ないし、長期的にマージンを払う必要もある。

自社の営業ではないので、顧客にも柔軟な提案がしづらいというのもある。

しかし顧客との接点を一から作る必要がある自社営業と、顧客と既に接点のある代理店であれば、どちらがより商品を売れるかといえば代理店だ。

顧客接点があるか否かは実に貴重なものなのだ。

特に法人顧客は知っている会社からサービスを買う傾向が強く、特にIT・広告などでは顕著なのだ。

自社のサービスが説明しやすい状態にあり、代理店でも売れる状態にあるなら是非とも代理店を活用しよう。

代理店というのは必ずしも専業代理店である必要はない。

J氏のようにWeb制作会社を代理店として活用する方法もある。

不動産会社がNHKやウォーターサーバーの会社と提携し代理販売をしている場合もある。

あらゆる企業が代理店になり得るのだ。

一方で自社の商材が説明しづらい高額無形商材である場合は注意しよう。

特にコンセプトが新しい場合は代理店経由で売るのは至難の業になる。

代理店の社員は様々な商材を抱えているため、わざわざ説明しづらい商品を売りたくはないのだ。

実績がまだ十分にない商品であることに加え、自社の顧客に購入リスクがある場合はなおさらである。

p182

IT系で急激に拡大しているサービスや主要コンサル会社が担いでいるサービスはコンサルサービスを付随して販売することが出来、驚くほど高いマージンをコンサル会社に支払っている。

こういった構造で拡大しているサービスも数多く存在する。

自ら手を動かし、競合の成功要因を取り入れ続ける p187

外注は使うが最後まで1人でやり続ける
K氏は自身のメディアが成功し、売上が拡大した後も基本的には記事はずっと1人で書いていたという。

記事の作成に関してデザイナーやカメラマンなどに一部業務を外注することはあっても、「第1部第4章 参入初期の動き方」でも書いたように、立ち上げ当初と同じくタスクを細分化し、発注するようにしていたのだ。

これはサイトを自分の思い通りに構築することと単価を下げることが狙いであった。
常に他社サイトの情報を収集・取り入れ続ける
サイトをリリースした当初はデザインが洗練されておらず、コンテンツも絞れてはいなかったが、K氏は徐々にそれぞれを微調整し、大きく売上を増やしていった。

そして毎日のように成功している他社のサイトを閲覧してはその成功要因を探り、取り入れ続けたのである。

例えば当時、ある成功していた転職サイトの運営者がX(Twitter)をメディアへの流入用ではなく、取材獲得用で使っていると聞くと、自分でもX(Twitter)をそのような目的で使ってみるといったことをしていたという。

毎日新鮮さを保つ p191

同じことをして成功している競合から学び続ける
TikTokはアルゴリズムやトレンドの移り変わりが早いため、M氏はヒットしているチャンネルの調査を常にしているという。

特にコスメについては毎週発売される新作の調査をし続けている。

TikTokにおいては情報の新鮮さが重要であり、発売して5時間後にはもうバズっているという現象がある。

M氏は自分たちが若手だからこそ、こういった新鮮さで勝負をすることが重要だと考えていると言うが、動きが早いマーケットで成功している人は総じて、競合情報を常に収集していることが多い。

一方で私の観測範囲では、競合調査を十分しないまま「どうすれば売れるのか」と悩んでいる人も一定数存在する。

TikTokほどではないにしてもそれなりに動きがあるマーケットに自分がいる場合、競合情報をつぶさに知っているだろうか?と自問してほしい。

どうすれば売れるのか、に対する簡単な答えは「同じようなことをしていて売れている会社の方法を調べればよい」である。

儲かっている競合から常に学び続けよう。

常に売れている商品・サービスを調査する p192

「どうすればもっと売れるか」を常に考える
民泊の場合、予約カレンダーを見ると他社の予約状況を調べることが出来る。

A氏はこの予約状況を調査しながら立地の重要性を確認し、その中でも希少価値が高い4人以上収容可能な物件を中心に展開を進めていった。

皆さんはA氏のように常に競合物件の予約状況を見続けているだろうか。

こういった業務は誰かに預けるべきではない。

スモビジオーナーたるもの一次情報の取得にこだわり、「どうすればもっと売れるのか」を考える癖を持ちたい。

戦略(誰に何をどのチャネルで売るのか)が誤っていなければ、ビジネスの成果は基本的に投入した時間に比例する。

この時間とはデスクに向かっていたりアポを取ったりしている時間に限定せず、歩いているとき、風呂に入っているときに「どうすればもっと売れるのか」と考えている時間も含む。

これを考え続け実行し通すのは最終的には代表の役目となる。

手離れを求めすぎるな p194

スモビジオーナーたるもの、ゆくゆくは純粋なオーナーとして自分は一切手を動かさないという状態に憧れるものである。

しかし、この状態に至ることは実際は非常に難しい。

何故ならスモビジの競争力はオーナー自身の知見や人脈に依っているからだ。

また環境変化に合わせて対応していくスピード感がないと途端に競争力を失ってしまう点も、自分が手を動かさずに済む状態になりづらい原因である。

スモビジにとってオーナー自身が素早い経営判断をしていく状態は安定のために必須なのだ。

信用を大事にしろ p195

スモビジの場合は複雑な組織論まで意識する必要はないと思うが、顧客向けにせよ内部向けにせよ「信用」が極めて重要である。

継続的に成功している多くのスモビジオーナーは常に共同で動く相棒を持っているケースが多い。

新たな事業を切り開いていくのはスモビジオーナー、オペレーションを安定させ体制を作っていくのは相棒、というような役割分担はよく見られる。

このような相棒がいるか否かで事業の展開スピードや成否は大きく左右される。

ビジネスに信用が大事であることは言うまでもないが、スモビジにおいてもそれは変わらないのだ。

日々競合の状況を見続けろ p196

努力しているのは当然あなただけではない。

競合も日々改善に取り組んでいる。

その中で競合が発見する新たな儲け方も多いだろう。

これをすぐに発見し吸収出来るようにしよう。

競合を見下すような意識は慢心であり注意したほうがよい。

特に組織になるとその傾向は顕著に現れるため、あなたが代表ならば社員に、競合には敬意を払い学び続けるよう主張するとよいだろう。

TikTok、サイト成功事例、民泊に関しては公開情報から他社の施策を知ることが出来るが、BtoBであっても競合の情報を仕入れて学ぶという状態であり続けるべきだ。

BtoBの場合は密接な関係を持てる顧客が多くなってくると、顧客が競合について教えてくれることも多い。

日々競合のニュースを見たり展示会に足を運んだりして学びを続けるとよいだろ展示会は情報の宝庫である。

通常BtoBサービスの情報を仕入れることはかなり手間を必要とするのだが、展示会には情報が溢れている。

実際にかなりの割合の顧客が情報収集目的で展示会に来ている。

よく分かっていなくても興味のある業界があれば、1つの趣味として展示会に足を運ぶとよいだろう。

協業をする場合にもスピーディーに話を進めることが出来る。

あるスモビジオーナーがニュージーランド産の固形シャンプーで成功していたが、この商材も展示会で発見したものであった。

また他のスモビジオーナーもベビーカー販売で成長しているが、よい協業の商談を展示会で成立させていた。

p204

今思えば同時に解決するべき課題が多数存在する状態で事業を開始するリスクは非常に高く、順番に解決していけるようなやり方をするべきであったと反省しているという。

例えば最初は類似商材の広告運用から参入し「初期顧客の獲得は出来る」という手応えを掴んでから自社商材の制作やリピーター向けの施策を実施していく、というようにするべきであったと考えている。

目安としては1トライで取れるリスクは300万円程度というのが現在の感覚である。

喩え話をするならば素振り(他社商材での広告運用)すらも出来ていないのに、試合(自社商材の制作と販売)に乗り出すのは、あまりに未熟であったと感じている。

3ヶ月で駄目なら撤退 p204

失敗経験は他の事業で生きる
A氏の失敗事例については第1部第2章で詳細に記述した。

A氏の特徴としては、とにかく手数が多いことである。

3ヶ月程度で黒字化出来ないものは即時撤退している。

継続して黒字化の見込みが立たなかったタピオカバーも、参入から間をおかず即時撤退の判断をした。

対象の事業が1つ失敗したとしても、結果的に得られた経験を他の事業に転用出来ることが多い。

A氏は最近、アートファンドを立ち上げ苦労しているというが、たとえうまくいかなかったとしても、ファンドを立ち上げたという経験自体が次に繋がると語ってるという。

重大な課題を早期に検証しろ p208

M氏の飲料ブランド事業は本人が語る通りあまりにクリア出来ていない課題が多い事業であった。

1つの課題をクリアするには時間と金がかかる。

これを10個クリアしないと成立しないビジネスを立ち上げようとするならば、相応の時間と金がかかることを覚悟する必要がある。

スモビジの場合は稼ぎながら1つ1つクリアしていくという姿勢でいるとよいだろう。

ブランドの例で言えば、最初は他社の案件でブランド案件を運営する。

これで成果を出せるなら製造に乗り出してみるという流れである。

Q2 撤退の基準はあるのか? p220

第2部第5章のイントロダクションで書いたが「思い描いた姿が実現出来ない」と判断したタイミングである。

ここで注意がある。

事業の初期段階で実験的に無料でサービスを提供することがあると思うが、これをしてはならない。

ビジネスにおいて最も理論的に答えることが難しい問いは「いくら払ってくれるのか」である。

これを知らずしては何も判断出来ないのだ。

最初から有料で提供し、支払い意思を確認するべきである。

私の場合は大規模にしなければ儲からない事業は基本的に行わないため、スモールでも最初から儲かることを重視している。

一度売ってみると、おおよそのユニットエコノミクス(1販売からどのような構造で利益を得ることが出来るか)が分かるため、それを見て判断している。

撤退をする際は明確にサービスをクローズするというより、そちらに投下している人員や自分の時間を減らしていくという場合が多い。

Q6 普段どのくらい仕事しているのか? p224

業務時間を誰かにモニタリングされるわけではないため固定はしていないが、休憩・食事時間を除き、おおよそ平日平均10時間程度、休日3時間程度である。

休日はバッファとして扱うこともあるため、締め切りがある場合は平日扱いになってしまうこともある。

ここで意識してもらいたいのは、成果と投下時間は如実に比例することである。

選ぶビジネスにより時間が成果に変換される効率は全く異なるが、比例関係は明確にある。

だからこそ突破口が見つかった際には、まず時間を投下することを意思決定すべきなのだ。

逆に突破の気配がないビジネスに対してどれほど時間を投下しても非効率的でしかないことは変わらない。

儲かりそうなビジネスを探査・発見、コピーから参入し学習、独自性を発揮し、より大きな突破を図るという動作が基本である。

Q7 自分の「やりたいこと」をどの程度重視するべきか? p225

ビジネスに儲けること以外の目標を増やすと、当然だが儲けることからは遠ざかる。

「やりたいことをやる」というのは目標を増やすことになるので、ビジネスを成功させる難易度は上がってしまう。

勿論やりたいことだからこそ熱意をもって取り組めるという点はあるが、その熱意を過大評価するべきではないだろう。

努力しても越えられない壁は多数あるのだ。

私自身も好きなテーマはあるが収益と比例関係にあるかというと全くそうではない。

そういうテーマに関しては純然たる趣味として割り切っているし、収益化していない好きなテーマは数多く存在している。

私自身ある程度ビジネスには慣れてきたと思うが、それでも好きなことを仕事にするというのは贅沢なことなのだ。

本文中に自分の性格を踏まえるべきであると記載したが、これは好きなことを商品にするのとは異なるのである。

好きなテーマに取り組み続けたとしても、儲からない辛い日々が続くようでは好きでいられるかは分からない。

特定のテーマにこだわってしまうことは失敗の要因になると認識しておくとよいだろう。

Q8 営業を外注してよいか? p226

まず初期は自分で売るべきである。

あなたが売れないものは誰にも売れないのだ。

代理店を使うのも自分が売ってからそれを効率的に拡大させるために使うものなのだ。

特に事業の立ち上げ段階・学習段階においては、貴重な顧客との対話機会を自ら放棄するなど禁物である。

初期段階の顧客との対話は宝だ。

これを外注しようなどと考えてはならない。

Q10 スモビジオーナーのモチベーションは何なのか? p228

ある程度経済的に満たされてくると、収入を上げるという意味でのモチベーションで事業拡大を続けている人は珍しい。

効果的な支出というのは飽和するため、収入が上がったとしても支出が比例して上がり続けるのはある程度までである。

やはり事業の報酬は事業を通じて得られる経験、自分が出来ることの拡大、また人によっては闘争心が満たされることにある。