コンテンツにスキップする

「ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望」を読んだ

投稿時刻2023年6月24日 06:40

ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望」を 2,023 年 06 月 24 日に読んだ。

目次

メモ

二面性をもった少年時代 p21

「あそこの学生たちはアスペルガー症候群の対極にあります。
やけに外交的で、自分の考えというものを持っていない。
2年間もこういう連中と一緒にいると、群集本能ばかりが発達し、誤った決断を下すようになってしまいます」

スタンフォード大学での目覚めと後悔 p23

なぜ哲学なのか?
ティールの数学の才を考えれば、むしろ自然科学か情報科学を選ぶのが自然だ。
スタンフォード大学は90年代当時すでにコンピュータ科学の分野で世界トップクラスの評価を得ていたのだから。
ウェブブラウザの考案者で、しばしばティールとともに投資家として名を連ねるマーク・アンドリーセンは、
「大学で学ぶ価値があるのは数学系の学問だけで、哲学のような人文系を専攻しても靴屋になるのが関の山です」とまで言っている。

それでもティールの場合、哲学を専攻したのは英断だった。
大学2年の1986年から96年にかけての冬学期、彼は著名な哲学者マイケル・ブラットマン教授の「心、物、意味」という講義に通った。

そこで同じ講義に出ているリード・ホフマンと出会う。
講義が終わると、二人は構内の中庭で議論にふけった。
二人は哲学でよく問題になる人生や世界といったテーマについて2時間以上も激論を戦わせた。
その後30年にもおよぶ友情の基礎はこうして培われたのだ。
きゃしゃで目つきの鋭いティールとおっとりした巨漢のホフマンは、当初から外見だけでなくその主張も対照的だった。

ティールは、この議論は「けんか腰なものではなく、二人とも、何が真実かをいつも考えていました」と回想している
(ちなみに二人の志向のちがいは、学内の学生評議員選挙からもうかがわれる。
ティールは右派の候補者として、ホフマンは左派の候補者として立ち、それぞれ議席を獲得した)。

困難を乗りこえて p60

二人は次にアンドリーセン・ホロウィッツを創業した。
シリコンバレー屈指のベンチャーキャピタルの一つで、
そのポートフォリオはエアビーアンドビー、フェイスブック、ギットハブ、ピンタレスト、スカイプ、ツイッターといった名だたるスタートアップで構成されている。

起業家としてのホロウィッツの道のりは、彼の著書『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』(日経BP社)で赤裸々に描かれている。
みなが親切な世界で新たなビジネスモデルを磨き上げるというのは幻想で、実情はダーウィン進化論の「適者生存」ならぬ「カネ持ち生存」だと彼は言う。

同書のタイトルは、起業家としてペイパルを創業し、株式公開をへてイーベイへの売却を経験したティールにこそぴったりだ。
強烈な自己顕示欲を持ち、創業に成功するととたんに浮き足立つ起業家はごまんといる。

しかしティールは、ペイパルが創業からわずか3年で数十億ドルをたたき出しても、
メンローパークのワンルームマンションに住む暮らしを変えなかった。
りっぱな自宅とオフィスをサンフランシスコに構えたのは、ペイパルをイーベイに売却してからだ。

「他人資本の新企業のCEOは、15万ドルを上回る年間報酬を受けとるべきではありません」
役員報酬についてのティールの持論である。

年収が30万ドルを超えると「CEOは創業者というよりも政治家」のようにふるまい出し、
現状維持に固執するようになり、それは革新的スタートアップの死を意味するというのだ。

ティールはボックス社 CEO のアーロン・レビーを例に挙げている。
レビーはこのファイル共有のサービスを 10 億ドル企業に育てたのに、給料はどの社員よりも低い。
しかも創業から4年がすぎても自宅はワンルームマンションのままで、マットレス以外の家具を持っていない。

ペイパルの採用基準 p80

ティールは同じように「強い絆で結ばれた共同体」であるスタートアップとカルト集団を比較している。
カルト集団同様、スタートアップ創業者は「全身全霊で没入する文化」を築きあげなければならない。 
その点、シリコンバレーの哲学はまさにおあつらえ向きだった。

ベンチャーキャピタルの Y コンビネータ創業者ポール・グレアムに言わせると、
理想的な創業者は、20代半ばで、家族のない自由な身で、自分の考えを最優先して行動できるタイプだ。

「シリコンバレー」がドイツやフランス、英国や日本にはないのは偶然でもなんでもない。
こうした国々では、人々はあえて定められた軌道を外れようとはしないからだ。

スタートアップの 10 ルール p126

ティールによれば成功するスタートアップのカギは、「唯一無二であること」「秘密」
そして「デジタル市場で独占的ポジションを確保していること」である。

独占をめざそう。競争からはさっさと身を引き、他社との競合を避けよう p128

創業者が独占をめざすべきとは、競合他社と明確に差別化でき、競争に陥らない唯一無二の企業をつくるということだ。
資本主義と競争は同義語だと考えられているが、ティールにとって両者はむしろ水と油の関係にある。

競争は負け犬がするもの。まわりの人間を倒すことに夢中になってしまうと、もっと価値があるものを求める長期的な視野が失われてしまう p129

ティールは若い頃から競争を熟知していた。
競争からは幸福感と充実感も得られなかった。
彼は固い友情と信頼関係を生かしてビジネスを展開した。
また起業と投資に際しては、可能なかぎり競争を避け、他に例を見ないビジネスモデルに基づいて行動した。

「トレンド」は過大評価されがちだ。最新ホットトレンドに飛びついてはならない p129

ヘルスケアや教育関連のソフトウェアのようなトレンドは過大評価されているとティールは考える。
「ビッグデータ」とか「クラウド」といったバズワードもそうだ。
こうしたバズワードまみれの投資話を聞いたらさっさと逃げろと彼は忠告する。
IT業界用語は、ポーカーのブラフと同じだ。
こうした耳ざわりのいい言葉で飾りたてている企業にろくなものはないというのがティールの持論である。

知識人ティールの愛読書 p222

ジラール哲学の主題は「模倣」と「競争」である。
いわく、人間の行動の大部分は模倣に基づいている。模倣は不可避だ。
私たちがなにかするのは、結局のところ他人がそうするからだ。

ティールはここから「僕らはすべて同じもの、つまり同じ学校、職場、市場をめぐって競争している」という結論にいたる。
経済においては競争が利潤を「薄めて」いるというのだ。
ここからあの挑発的な「競争とは負け犬がするもの」というティール語録が生まれた。

未来を変える挑戦を支援する ティール財団 p267

2015年の終わりに、ティールはイーロン・マスク(テスラ)、リード・ホフマン(リンクトイン)、サム・アルトマンとジェシカ・リビングストン(いずれもYコンビネータ)と共同で、
非営利のAIの研究団体オープンAI (OpenAI) を立ち上げた。

オープンAIのミッションは、「デジタル知能を、利益を生む必要性に制約されることなく、人類全体のためになるように推進すること」である。
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)やインドのIT企業インフォシスも含む創業メンバーが、計10億ドルの資金を出した。
こうしてマスクとティールは、アルファベット、アップル、フェイスブック、マイクロソフトといった大手テクノロジー企業に対する対抗軸を打ち出したことになる。
これら大手は、AI分野の著名な学者とスタートアップを多数吸収しており、AIが少数の IT企業によって独占される危険が生じていたからだ。

「僕らがろくでもないことをやらかさないように、国内レベルか国際レベルの規制監督制度が必要だと思います」
マスクは2014年に、ニュース専門局CNBCのインタビューでそう警鐘を鳴らしている。