コンテンツにスキップする

「農産物直売所で稼ぐ70の極意」を読んだ

農産物直売所で稼ぐ70の極意」を2025年07月07日に読んだ。

目次

メモ

初心者は、タネを分けてまくことで野菜栽培の全体像を p14

直売所の一員になるにさいし、大切なのは野菜の栽培技術を一日でも早く身に付ける姿勢です。
品質の良否は栽培技術と深く関係しており、一定の技術があってこそ、売れる野菜を作れます。

では、どのようなことを心がけるかというと、まずは「とにかく栽培してみる」ことです。
家庭菜園レベルの専門書を購入して栽培を始めるのですが、専門書の選定では注意することがいくつかあります。
一冊に絞ることに加え、発行日がなるべく最近で、おすすめの品種も野菜ごとに書かれているかどうかです。
野菜の栽培方法には唯一無二の正解はなく、同じ事がらでも専門書によって多少の違いが見られます。
何冊も参考にすると、何が正しいのか混乱します。

栽培に取りかかるさいは、「タネを何回かに分けてまく」ことに努めます。
野菜には、同じ品種ながら、春や秋などの異なる季節にもタネをまけるものがあります。
また、早生種や晩生種など、タネをまく時期がほぼ決まっている品種もあります。
直売所での販売のコツの一つは、同じ野菜を一度に大量に出品しないことです。
売れ残りが出やすいからで、タネを何回かに分けてまくことにより、売れ残るリスクを分散させます。

初めのころは戸惑うことが多いかもしれませんが、まずは野菜栽培の全体像をつかみましょう。

技術力を高めよう!わたしのおすすめ専門書 p15

『決定版野菜づくり大百科』
(家の光協会) 定価:3,800円+税

127種類の野菜について、育てやすい品種や病害虫対策土作りなどの情報が、1品目見開き2ページ以上にわかりやすくイラスト付きでまとめられています。
とにかくいろんな野菜を栽培してみたい人向けの入門書です。
『基本の野菜じょうずな育て方』
(主婦の友社) 定価:1,540円(税込)

主要な野菜54品目を取り上げ、手軽においしい野菜を育てるコツが詳しく掲載されています。
新しいおすすめ品種も紹介されていて、野菜の栽培方法をより深く、より詳しく知りたい人向けの専門書です。
『超図解野菜の仕立て方の裏ワザ』
(家の光協会) 定価:1,600円+税

これまでの栽培方法を見直したい人や、より高度な栽培方法を試してみたい人向けの栽培書です。
収量や秀品率を上げたい出品者にも読んでもらいたい本です。
『知識ゼロからの有機・無農薬の家庭菜園』
(家の光協会) 定価:1,600円+税

タイトルの通り、無農薬栽培を始めたい人向けの入門書です。
農薬に頼らない栽培方法が随所に紹介され、将来的に有機栽培を目指したい人にもおすすめです。
『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』
(高橋書店) 定価:1,540円(税込)

栽培書ではありませんが、栄養成分や特色などの野菜の基本知識を深めたい人向けの本です(筆者は直売所従業員向けの研修にこの本を使っています)。

切り花の栽培は色の組み合わせや珍しさを考えながら p34

直売所の切り花は、売り上げが野菜に匹敵するお店もあり、売れ筋商品の一角を占めています。
キクにいたっては、彼岸やお盆、年末に買い求める人たちが殺到する地域もあるほどです。

「日持ちがすごくいいので、花はいつも直売所で買うんですよ」。
直売所にはこのように話すお客さまが多く、切り花も野菜と同じく鮮度が重視されていることがわかります。

そんな切り花も、販売の一部を花屋さんが担っている直売所が少なくないのも事実です。
地元産だけでは足らず、花屋さんの商品で補っているのです。
その可否は別にしても、種類も数も限られているようでは人気商品にはなり得ません。

となれば、地元産としての多種多様な切り花を栽培することが、直売所での売り上げを伸ばすための秘訣になります。
もし五種類しか栽培していないなら、十種類に増やします。
思い切って二十種類でもよいでしょう。
このとき、花の色の組み合わせを考えながら新たな種類を選ぶことが大切です。
花のよさは、色彩の豊かさにあります。
赤や黄色、紫色やオレンジ色などの色とりどりの切花がそろっていると、一度に二種類も三種類も買ってもらえるものです。

また、野菜と同じ考え方ですが、珍しい花の栽培にも挑戦します。
見たことのない花や聞いたことのない名前の花には、興味を惹かれるものです。
これまで買ってくれなかった人も珍しさから買ってくれ、新たな得意客になるかもしれません。

花苗と野菜苗の生産も p36

花苗は、ポット苗と呼ばれるビニール製のポットに、一種類だけ植えて販売するのが一般的。
ただ、これだと自宅の庭や花壇に直接植えるならともかく、玄関先やベランダに飾るためにはプランターと用土を別に用意する必要があります。
ですので、手軽さを売りにした、最初からプランターや鉢で育てたものもラインナップに加えるべきです。
このとき、寄せ植えのように種類を組み合わせたものは、贈り物としての需要も掘り起こせます。
また、花の名前と育て方の説明書きを付けます。
両方の説明で、お客さまの育ててみたい気持ちを呼び起こすためです。

野菜苗の生産では、果菜類と葉菜類で方法も難易度も異なります。
トマトなどの果菜類の春苗の場合、ハウスやビニールトンネルの保温施設に加え、電熱線などの加温設備も必要です。
最初は無理に早出しせず、保温施設だけで最低温度を維持できる時期になってから生産すべきでしょう。

果菜類に対し、キャベツやハクサイなど、主に秋に植える葉菜類の苗作りは難易度が低め。
セルトレイにタネを一粒ずつまき、毎日たっぷり水をやれば簡単に芽が出ます。
このとき大切なのは、いくつかの品種のタネを何回かに分けてまくことです。
品種を組み合わせて栽培したい人や、時期をずらして栽培したい人の需要に応えるためです。
販売は、セルトレイのままでも少し大きめのポットに植え替えてもかまいません。

とにかく思い付いたものを作ってみよう p82

直売所で働いていたときのことです。
平均年齢が八十歳を超えた四人のおばあちゃんたちから、加工品作りを始めたいとの相談を受けたことがあります。
商品は黒糖パンと堅焼きせんべいで、子どものころの地元の味を再現し、若い人たちに食べてもらいたいそうなのです。
販売を開始すると、予約が入るほどの人気ぶりで、加工品作りがその後の彼女たちの生きがいになりました。

また、ある道の駅では、三十代の女性が移住を機に、それまでは趣味程度だった洋菓子や漬物の製造を本格的に始め、毎日欠かさず出品を続けています。
別の道の駅では、お嫁さんと姑さんが借金までして加工室を整備し、それぞれで洋菓子とちらし寿司を作って販売していました。
互いの商品を評価し合うのが決まりだそうで、それまで以上に親子関係が深まったとのことです。
さらに、ある直売所で耳にした話ですが、妻が一人で弁当を製造していたところ、定年退職した夫が手伝い始めたそうです。
すると夫のほうが妻より熱心になり、逆に主導権を握って弁当作りに励むようになったそうです。

加工品作りでは、年齢も性別も、目的にしても人との関係にしても制限されるものは何一つなく、製造する商品もまったく自由です。
製造許可などの手続きを経て、とにかく思い付いたものを作り、とにかく売ってみてください。
それが、加工品作りを始める際の心得になります。

加工グループの後継者作りを進めよう p114

地域の食文化や伝統料理を次の世代に引き継ぐにはどうすればよいでしょうか。

兵庫県に、企業組合「彩雲」という加工グループがあります。
農家女性を中心に総菜や和菓子パンなどを製造し、年間に七千万円を売り上げるグループですが、十五名ほどのメンバーのうちの四名は、学卒で採用された十代、二十代の正規雇用の女性なのです。

若者たちは、グループの後継者にほかなりません。
地域にとっても、食文化の担い手や農業のサポート役として貴重な存在ですが、グループが若者を雇用するためには、当然ながら給与を支払えるだけの体力(事業収益)が備わっている必要があります。
彩雲は、安定した売り上げを長年にわたって維持してきたからこそ、若者を仲間に加えることができたのです。

ところが、国の調査(令和2年度「6次産業化総合調査」)によると、農産加工に取り組む事業体のじつに八十七%が、年間の販売額が一千万円に満たない状況です。
新たに人を雇う余裕のない加工グループや個人が、残念ながら大半を占めています。

とはいえ、後継者作りにあれこれ知恵を絞っている加工グループはたくさんあります。
子育て中の女性をパートとして採用し、高齢のメンバーがみそ作りを教えていたり、農家に嫁いできた女性を誘い入れ、休日を中心に郷土料理作りに励んでいたり。
ささやかな活動でも、賃金をまかなえる範囲で地域の食文化や伝統料理の伝承に一役買っているのです。

経営的な体力があれば若者を雇用してほしいのですが、そうでなければ、まずは知り合いや子育てが一段落した女性たちを誘ってみてください。
それがたとえ一人で作業も短時間であったとしても、後継者作りへの第一歩を踏み出したことになります。

なぜ、運営者は足らない野菜を市場から仕入れるのか p126

左図は、ある直売所のハクサイとトウモロコシの販売額です。
委託品は黒色で、市場からの仕入品は灰色で区別しています。
ハクサイの場合、全体の売り上げは九月から増え始め、十一月にピークを迎えますが、十二月からはしだいに減っていきます。
そのなかで委託品の月別の割合は、ハクサイ需要が高まり始める九月はほぼゼロで、十月も全体の三分の一程度にとどまっています。
十一月から翌年一月までは大半を占めるものの、二月になると全体の半分程度しかありません。
グラフにすると、地元産のハクサイがどの時期にどれほど足りないのかが一目瞭然です。
これにより、十月どりの委託品のハクサイは三倍に、二月どりなら二倍に増やしても売れることがわかります。

トウモロコシも考え方は同じで、六月どりの作型は二倍に増やすことが可能ですし、八月から九月にかけて収穫する栽培に新たに取り組む余地があることもわかります。

このグラフは、どのような野菜がどの時期にどれほど足りないかを把握するために必要不可欠なものですが、そもそも仕入品を取り扱っていなければ作成できません。
仕入品は否定的にみなされがちですが、じつは地元産の野菜栽培の方向性を示してくれる、大切な役割を担っているのです。

ただし、仕入品の販売では、守るべき三つの要件があります。
(1)地元産が少ないものあるいはないものに限る (2)地元産と区別して販売する (3)仕入れている理由を明記する です。

もし直売所が守っていなければ、出品者の一人として店側に改善を求めてもよいでしょう。