「ニワトリと暮らす」を 2,024 年 10 月 19 日に読んだ。
目次
- メモ
- p2
- p2
- ニワトリ小屋 p10
- ケージ p11
- p14
- 今井さんちのニワトリたち p21
- p22
- p22
- p24
- 養鶏農家の一日は飼育半分、経営・販売半分 p24
- 加藤さんちのニワトリたち p27
- p28
- p29
- 加藤さんちのエサ p29
- 守村さんちのニワトリたち p33
- p33
- 守村さんちのエサ p35
- H.Tさんちのニワトリたち 1 p37
- p37
- H.Tさんちのニワトリたち 2 p38
- Hacks@板橋区さんちのニワトリたち p41
- 小山田さんちのニワトリたち p45
- 小山田さんちのエサ p47
- 設楽さんちのニワトリたち p49
- チキンコリドール p50
- チキントラクター p50
- p51
- Q ニワトリはどこで入手できるの? p54
- Q ニワトリを飼う上で注意することは? p54
- Q ニワトリの種類について教えてください。 p54
- Q どんな飼い方をすればいい? p55
- Q 旅行には行ける? p55
- Q ニワトリの寿命ってどれくらいなの? p55
- Q イヌやネコと一緒に飼える? p55
- Q エサは何をやればいいの? p56
- p56
- Q 毎日どれくらいの量のエサを食べるの? p56
- Q やってはいけないエサはあるの? p56
- Q どれくらいの広さの小屋があればいい? p57
- Q どんな場所で飼えばいい? p57
- Q 小屋に必要なものは? p57
- p57
- Q 卵って毎日産むの? p58
- Q 卵からヒナがかえったらいいな。 p58
- Q ヒナの育て方を教えて。 p58
- Q ニワトリを締めて解体するのに資格などは必要ですか? p59
- Q 締め方、解体のコツは? p59
- Q 肉をおいしく食べるには? p59
- p59
- Q ニワトリって喧嘩するんですか? p60
- Q ニワトリにはどんな病気がありますか? p60
- Q 鳥インフルエンザが心配です。 p60
- 卵用実用鶏 p62
- 外国鶏品種 p62
- 日本鶏品種 p64
- チャボ類 p64
- 愛玩用品種 p65
- 価格は幼ビナで約300円~ 農家にもらうという手も p66
- 群れで行動し、闘争もある p69
- 健康維持には砂浴びと日光浴も大切 p70
- 地面をひっかいてエサ探し p70
- オスは一日11~15回程度 交尾する p71
- 鳴き声で縄張りや順位の優位性を示す p71
- 何でも食べる雑食性 エサの消化には小石も必要 p72
- 庭先養鶏で手軽に利用できる市販の配合飼料 p72
- p75
- 湿気の少ない場所で雨露、外敵を防ぐ工夫を p76
- 約150日で産卵がスタート 平均寿命は約10年 p78
- ニワトリを飼い始めるのは春がいい 飼育環境は季節に合わせて p79
- エサやりは午前中、早めに 卵の回収も毎日、忘れず行おう p80
- 就巣性のあるニワトリで親鶏に卵を抱かせる母鶏ふ化 p82
- p82
- 2回の検卵で発育を確認しよう p82
- 育すう箱は通気性と保温を考えてつくる p85
- 2~3週間かけてゆっくりと自然の気温にならしていく p86
- 作物に必要な肥料分をバランスよく含む鶏フン p88
- 畑で利用する「チキントラクター」 p89
- 尻つつき p93
- ニワトリ小屋のつくり方 p94
- 基礎の上に柱を置いてビスで接合するだけ p95
- ニワトリの産卵は人間でいう排卵と同じ p104
- 排卵から卵ができるまで24~25時間 p105
- いろいろな卵 p106
- 卵黄の色はエサで変わる p106
- 比較的脂質が少なく、たんぱく質に富むヘルシーな肉 p108
- p108
- 自家繁殖させれば、若鶏の肉を得ることもできる p110
- p118
- p119
- p121
- p123
- 鳥インフルエンザが発生しやすい環境とは? p130
- 鳥インフルエンザの対策 p130
- 多元交配によってつくられる現代の実用的なニワトリたち p137
- 古くから日本にいる在来種と広い意味で使われる地鶏 p140
メモ
p2
何事もそうですが、最初から知識や技術があったわけではありません。
畑も、建築も、生き物の飼育も、本を読んだり、先人から話しを聞いたりして、見よう見まねでやっていく中で身についていったものです。
それでやる気さえあれば素人でも自分の住む家が建てられ、家庭で消費する野菜のほとんどを自給できるようになれるのです。
気楽なのは、プロとしてやっているのではなく、遊びだということ。
自分が面白がれればいいのです。
p2
ニワトリという名称は「庭の鳥」からきているように、昔は農家ならたいていの家で飼われていました。
それだけ飼いやすくて、役に立つ生き物なのです。
ニワトリ小屋 p10
小屋の広さは、1坪あたり最大10羽を基本とし、飼育する羽数に合わせよう。
簡単な基礎に土台を回して柱を立てるか、地面に直接、柱を埋める掘っ立て小屋がポピュラー
ケージ p11
ニワトリ小屋がつくれない環境の場合、小数羽ならケージで飼うこともできる。
2羽で床面120×60cm、高さ80cmくらいあるとよい。
風通しのよい日陰に置く
p14
親鶏が産んだ卵は、約38°C、湿度約60%で発育し、21日目にふ化します。
ニワトリの成長はとても早く、やわらかい羽毛に包まれたかわいらしいヒナの時期はわずか10日ほど。
150日もすると、もう立派な大人。
メスは産卵を始めます。
寿命はだいたい10~15年です。
今井さんちのニワトリたち p21
ボリスブラウン
平飼いの養鶏で最もメジャーな卵用鶏。
今井さんちでも主力の品種。
メスの毛色は茶色いがオスは白色
ゴトウモミジ
国内で幾世代にもわたり、選抜交配を繰り返して作出された純国産の実用鶏。
産卵数は年間300個以上
シェーバーレッドブロ
肉用種。
卵用種に比べてがっちりとした体つきで、動きが鈍い。
成長が早く約100日で肉にする
名古屋種
肉用鶏として飼育。
一般的な肉用鶏に比べると肉付きは小さいが、丈夫で育てやすく、味がよい
p22
卵は直接販売で1個100円(税抜)。
スーパーの卵に比べるとかなり高いが、自然卵にはそれだけの価値がある
p22
卵の販売は、知り合いに買ってもらうことから始めたが、安全で、安心で、おいしいという今井さんの自然卵の評判は口コミなどで広がり、その頃には何とか生活できるだけの現金収入も得られるようになっていた。
今は毎日、約500個の卵を宅配便や自らの配達で消費者に届けている。
「養鶏農家のいいところは、収入が比較的安定するところかな。
きちんと世話をしていたら、毎日、卵を産んでくれるし、ニワトリが健康的に過ごせる環境を整えてやれば、病気にもならない。
同じ家畜でもウシやブタに比べれば設備投資は少なくて済むし、管理しやすいですからね」
p24
健康的なニワトリはヒナのときからしっかり育てなくてはいけない。
ヒナが飲んでいる水には酢を1~2%混ぜている。
これも病気予防策のひとつ
養鶏農家の一日は飼育半分、経営・販売半分 p24
6:00
事務作業
毎朝6時前に起床し、朝食をとる前にメールのチェックや調べもの、その他の事務作業などをやる
9:00
エサづくり
4~5日に1回つくる基本の自家製発酵飼料をもとにして、ヒナ用、肉鶏用など配合を調整する
10:00
エサやり
エサづくりと並行して、エサやりも進める。
前日のエサが残っていたら量を減らすなど、調整しながらやる
13:00
採卵
産卵は午前中でほぼ終わるので、午後になったら採卵する。
一日約500個。
ひとつひとつ丁寧に拾い集める
14:00
出荷準備
採卵した卵は、夕方、宅配便業者が取りに来るまでに、パッケージに詰める。
農場の通信なども添える
16:00
エサやり
夕方にくず野菜や雑草、牧草などの緑餌をやる。
今井さんが消費者に直接、卵を配達しに行く日もある
18:00
翌日のエサの準備
世話のほとんどはエサやり、草やり、エサづくりに費やされる。
鶏種、日齢によって配合が異なるので手間がかかる
20:00
終了
作業が終了するのは日が暮れてから。
「ニワトリさん、今日も一日ありがとう」。
感謝の気持ちを忘れない
加藤さんちのニワトリたち p27
天草大王
日本最大級の肉用地鶏。
体の大きなニワトリを作出していくために導入した品種
ゴトウモミジ
日本の風土で育種改良された国産の実用鶏。
加藤さんちのは数世代重ねた雑種
名古屋種
世代を重ねているため純血ではないが、尾の黒い羽は名古屋種の特徴
横斑プリマス・ロック
丸みを帯びた体形で、黒と白の縞模様が鮮やかな卵肉兼用種。
アメリカ原産
p28
そして、自家繁殖をやっていく中で、より体が大きく、肉がおいしいニワトリをつくるために導入したのが、天草大王。
希少な品種で、ヒナや成鶏を手に入れることはかなわず有精卵を入手してふ化させ、種鶏に育てた。
「今いるニワトリは、みんな天草大王の血が半分は入っています。
面白いのがね、たとえば、天草大王と横斑プリマス・ロックの子が生まれたとしたら、その子はどちらにも似ないんです。
もっと前の世代の特徴が出てくるんですよ。
長い歴史の中で人の手によって改良され、品種が固定されていないからなんですが、いろいろな個性のニワトリが出てきて、とても興味深いですよ」
p29
ふ卵器を使うこともある。
温め始めてから21日でかえるので、そうしたらヒナを別の親鶏に預けると一緒に育ててくれる
加藤さんちのエサ p29
エサはネズミなどに食べられないようにドラム缶に入れて保管。
くず米のほかにくず麦、おから、ふすまなどもやる
守村さんちのニワトリたち p33
名古屋種
愛知県特産の卵肉兼用種。
卵をよく産み、肉もおいしい。
ペットショップでヒナを購入
ボリスブラウン
守村さんの地元では赤鳥と呼ばれる。
農協で780円の成鶏を入手。
よく卵を産む
ウコッケイ
白い羽毛をもった中国原産のニワトリ。
卵は栄養価が高いといわれ非常に高価。
ウコッケイの中にも毛並みや毛色、冠などが異なるさまざまな内種がいる
p33
「毎日、5~6個の卵を食べていても、とてもじゃないが消費しきれない。
だからさ、うちに来る人に持たせる手土産はみんな卵なの。
喜んでくれるよ。
ウコッケイの卵なんて普通に買うと高いもの」
ニワトリはしばしば締めて、肉にもしているが、初めてそれを試みたときは、緊張のあまりナイフを持った手が震えたという守村さん。
結局、ナイフでは締め切れず、手斧でスパンと首を落としたものの、しっかり押さえつけていなかったニワトリの胴体は、そのまま羽をばたつかせて15秒ほど走り回り、守村さんはただ茫然とその様子を見守っていたという。
「締め方は頭では分かっていたけど、実際にやるとなると、最初はやっぱりとまどうよ。
でも、2回目はもうなれる。
肉は硬いよ。
ゴムを噛んでいる感じ。
でも、うまいね。
コクがあるんだ。
オレ、子どもの頃に見ていたギャートルズってマンガに出てくるマンモスの骨つき肉に憧れていてさ、それを連想させるな」
マンガの中で年間食費約20万円とうたう守村さん。
卵や肉など豊かな恵みを供してくれるニワトリは、田舎の自給的暮らしに欠かせない存在なのだ。
守村さんちのエサ p35
エサはホームセンターで手に入る配合飼料。
価格は20kgで1000円ほど。
一日1回、午前中にやる。
ひしゃくを使ってエサ箱へ
H.Tさんちのニワトリたち 1 p37
ライト・ブラマ
アメリカ、またはインドを起源とする大型の肉用鶏。
猛禽類のように精悍な顔つき
ポーリッシュ
一見するとニワトリとは思えない貴婦人のようないでたち。
有精卵からふ化させた
スプラッシュ・シルキー
全身がふさふさの絹糸羽に包まれたウコッケイの一種。
ちょっと太ったネコのよう
東京うこっけい
産卵数の向上を図り、一般的なウコッケイを選抜、改良して、東京でつくられた品種
p37
「飼っているのはすべてメスです。
ニワトリ特有の甲高い声で鳴くのはオスなので、住宅地でもメスだけを飼っていれば鳴き声で困るようなことはそんなにないんです。
昼間は、基本的に庭で放し飼い。
夜はケージに入れて家の中にしまいます。
早朝の鳴き声対策です。
メスだけとはいってもまったく鳴かないわけではないので」
H.Tさんちのニワトリたち 2 p38
猩々チャボ
羽毛は淡い黄色で、ピンと跳ね上がった尾の先端だけ黒い。
ペットショップで購入
桂チャボ
チャボの中では最もメジャーな種類。
白い羽毛は翼と尾の先だけが黒い
逆毛チャボ
羽毛が薄く、また逆立っているのが特徴。
H.Tさんちのは非常に神経質だという
Hacks@板橋区さんちのニワトリたち p41
ロード・アイランド・レッド
赤玉卵を産む卵肉兼用品種。
年間産卵数は180~280個。
丈夫で飼いやすい。
種鶏としても優秀で、多くの銘柄鶏作出に利用される。
Hacks@板橋区家では主に卵担当
東京うこっけい
都市部の小規模養鶏場向けに、産卵率の向上を図って選抜、改良されたウコッケイ。
全身を覆う柔らかくて白い羽毛が愛らしい人気品種。
Hacks@板橋区家では主に可愛らしさ担当
小山田さんちのニワトリたち p45
ウコッケイ
中国原産のニワトリで、皮、骨、肉、内臓が黒みがかっているのが特徴。
産卵数は少ないが、ふわふわと美しい白い羽毛と小柄な体格、大人しい性格から飼育人気が高い。
小山田家では現在4羽を飼育中
軍鶏×横斑プリマスロック?
専門業者から購入したウコッケイの卵に混入していた。
大きくなってびっくりしたそう。
通常は卵の大きさで分かるのだが、母鶏が若かったのか卵が小さかった。
かえって3カ月だがすでにかなりの大きさ。
ブーブーと鳴く可愛い乱暴者だそう
小山田さんちのエサ p47
エサは自家製。
水に浸けた小米と米ぬか、くず野菜を1:1:1に少量のパン粉、ぬか床を混ぜて2日間発酵させる。
鶏フンを使ってミニ菜園で野菜を栽培。
ミミズも養殖し、ニワトリたちの栄養源に。
ニワトリが食べられない野菜もミミズなら大丈夫。
家から生ゴミは消えたそうだ
設楽さんちのニワトリたち p49
ネラ
オランダ原産の黒いニワトリ。
比較的おとなしくて、飼いやすい
ボリスブラウン
入手しやすく、飼いやすいため多くの家庭で飼われている
チキンコリドール p50
果樹園の中につくったトンネルの中をニワトリたちが自由に駆け回る。
土に溶けたフンは植物の肥料になる
チキントラクター p50
直径2mほどの底がないドーム形のトリカゴで畑の中を移動させながら、ニワトリの習性によって土を耕す仕組み
p51
上/もうひとつのニワトリ小屋。
広さは約1坪。
地面から外敵が侵入するのを防ぐため、高床式になっている
右/小屋の雨どいが雨水タンクにつながっており、ニワトリ用の水に利用できる
Q ニワトリはどこで入手できるの? p54
A ペットショップで購入できます。
身近な入手先はペットショップです。
価格は、品種や月齢、性別などで異なり、300円前後のヒナから、成鶏で1万円以上する高価なニワトリもいます。
ニワトリを飼っている人や養鶏場に頼んで、譲ってもらう方法もあります。
養鶏場では定期的にニワトリを入れ替えます。
そのときに出る廃鶏は、経済的産卵率は落ちていますが、基本的にはふ化後2年程度ですので、まだまだ産卵します。
Q ニワトリを飼う上で注意することは? p54
A 近所に迷惑がかからないようにすることです。
近所に家がある場合、最も気になるのは鳴き声でしょう。
夜明け前の午前3時頃には一番鶏が鳴きます。
ただし、大きな声で鳴くのはオスなので、メスだけなら住宅地でも飼いやすいです。
臭いにも気を使ってください。
ニワトリ小屋の床に落ち葉やもみ殻などを敷いて発酵させれば臭いを抑えられます。
放し飼いにした際は、畑に侵入されないようにしましょう。
土をほじくり返され、野菜を瞬く間に食べられてしまいます。
Q ニワトリの種類について教えてください。 p54
A 在来種と品種改良された実用鶏がいます。
世界には200種類以上のニワトリがいるといわれています。
目的別では卵用、肉用、観賞用と大別できます。
外国鶏、日本鶏というようにも分けられ、日本のニワトリは、現在38種が日本農林規格によって在来種として定義されています。
養鶏で主流になっているのは、品種改良された実用鶏です。
ボリスブラウン、名古屋種、横斑プリマス・ロック、ウコッケイなどはペットショップにもよく並んでおり、庭先養鶏に向いています。
チャボも昔から庭先で飼われていました。
500g前後と小柄な愛玩鶏です。
その歴史は古く、江戸時代から熱心に飼育されていました。
就巣性があるので、ヒナをかえして育 てたい人にも向いています。
Q どんな飼い方をすればいい? p55
A 平飼いがいいですよ。
日本の多くの養鶏場では、ケージ飼いといって、身動きがとれないくらい狭いスペースにニワトリを入れて飼育していますが、家庭で飼う場合は、ニワトリ小屋の中を自由に歩き回れる平飼いが基本です。
ニワトリ小屋の床はコンクリートでも、土の地面でもかまいませんが、もみ殻や落ち葉を厚く敷いてニワトリが砂浴びできるようにしてください。
雨水が入らないようにして、常に乾いた状態にしておくことが大切です。
田舎で周辺に迷惑がかからない環境でしたら庭で放し飼いもできます。
なるべく自然に近い環境で飼えば、病気にもなりにくく、ニワトリたちもストレスなく、健康的に過ごせます。
Q 旅行には行ける? p55
A 水を切らさなければ大丈夫です。
3~4日の旅行でしたら、その間の水とエサをたっぷりやっておけば大丈夫です。
エサはやりすぎても、食べすぎることはありません。
仮にエサがなくなっても1週間くらいは生きられます。
ただし、水は2~3日切らすと死んでしまうので、絶対に切らせてはいけません。
1週間以上家を空ける場合は、誰かに世話を頼みましょう。
Q ニワトリの寿命ってどれくらいなの? p55
Q 大切に育てれば10年以上生きます。
平均寿命は10年前後といわれますが、15年以上、長生きするニワトリもいます。
産卵が停止するのは7~8年です。
養鶏場のニワトリは、経済的な理由から産卵率が落ちると淘汰されます。
その日数は、ふ化後、2年前後です。
Q イヌやネコと一緒に飼える? p55
A しつけや工夫が必要です。
ニワトリを小屋の中で飼っていれば問題ありませんが、放し飼いにした場合は、イヌやネコはしつけが必要です。
イヌはよくしつければ、ニワトリを外敵から守る番犬として役立ちます。
ネコは成鶏を襲うことはあまりありませんが、ヒナには手を出すので気をつけてください。
Q エサは何をやればいいの? p56
Q 市販の飼料もありますが、自家配合をおすすめします。
ホームセンターや、ペットショップに専用のエサが売っています。
トウモロコシを中心に、小麦や油カスなどを配合したニワトリ専用の飼料で、価格は20kgで1000~2000円程度。
ヒナ用、成鶏用など発育ステージによって、栄養成分などが異なります。
ただし、材料はほとんど輸入作物で、ポストハーベスト農薬や遺伝子組み換え作物の心配があるため、できれば身近な材料で自給するのが望ましいです。
自家配合飼料で欠かせないのが穀物、入手しやすいのはくず米やくず麦です。
産卵にはたんぱく源も重要ですので、魚粉やくず大豆などもいいでしょう。
さらに、おからやふすま、米ぬかなども加えて、栄養が偏らないように自家配合できれば理想的。
卵の殻を形成するためのカルシウムも大切です。
飼料用のカキ殻が売っています。
雑草やミミズ、くず野菜なども大好きです。
p56
一日1~2回、適量をやる。
水も大切。
汚れた水がたまらないように毎日取り替える
Q 毎日どれくらいの量のエサを食べるの? p56
A 5羽でどんぶり1杯程度です。
自家配合の発酵飼料で、よく卵を産む成鶏1羽につき一日120~150g。
5羽でどんぶり1杯程度をやれば栄養的には大丈夫です。
さらにくず野菜などの緑餌もやるといいでしょう。
庭に放し飼いすれば、ニワトリたちは雑草やミミズなどを好きなように食べて健康的に育ちます。
水も大切です。
ニワトリに倒されないような水入れを小屋の中に置き、きれいな水を切らさないようにしてください。
Q やってはいけないエサはあるの? p56
A 化学調味料が入った食品は避けましょう。
スイセンやトリカブトなど、一般的に有毒といわれているような植物以外なら、基本的には何でも食べます。
自然のもので食べて好ましくないものがあれば、それはニワトリ自身で、ある程度判断します。
化学調味料を使ってつくられた料理の残飯や菓子類などもニワトリの健康にはあまりよくありません。
農薬が使われた野菜も避けましょう。
魚の頭や内臓は火を通してやります。
Q どれくらいの広さの小屋があればいい? p57
A 畳1枚で5羽以下が目安です。
平飼いでは、小屋の中をニワトリが自由に歩き回れる広さが必要です。
目安としては畳1枚の広さで5羽まで。
1坪で10羽。
なるべく広い小屋でのびのびと飼ってください。
小屋の高さは1.8~2.4mくらいあると、中に人が入って作業をするときに楽です。
ニワトリを飼っている多くの人たちは、自分で小屋を建てています。
地面に柱を埋める掘っ立てなど、簡単なつくりでかまいません。
間伐材や廃材などが手に入れば、それらを利用して安価に建築できます。
Q どんな場所で飼えばいい? p57
A 風通しがよくて涼しい場所がいいですね。
雨水が浸入したり、水たまりができたりしない乾いた場所にニワトリ小屋を建てましょう。
斜面を利用したり、小屋を建てる場所が周りの地面より高くなるように盛り土をしたりするのもひとつの方法です。
また、二ワトリは夏の暑さが苦手なので、風通しがよい涼しい場所で飼うとよいでしょう。
木陰などは最適です。
東または南向きにして、日の光も入るようにしましょう。
Q 小屋に必要なものは? p57
A 産卵箱と止まり木をつくってください。
落ち着いて卵を産ませるために、産卵箱が必要です。
ニワトリは、狭くて薄暗い場所に隠れるようにして卵を産む習性があるので、そのような環境をつくってください。
産卵箱は幅、高さ、奥行きがそれぞれ30~35cm程度。
地面から50~60cmの高さに設置します。
中にはもみ殻などを敷いて、卵が割れたり汚れたりしないようにします。
産卵箱は10羽で2~3個あれば十分です。
また、ニワトリが寝る場所になる止まり木も必要です。
これは自然の木の枝でも、木材でも何でもかまいません。
地面から30cm~1mくらいの高さに、飼っているニワトリが並んで止まれるように設置します。
ほかにはエサ箱と水入れがあればいいでしょう。
p57
産卵箱は飼育羽数に合わせてつくる。
いったん止まり木に上ってから入れるようにしておくとよい
Q 卵って毎日産むの? p58
A ほぼ毎日産む時期もあります。
排卵から卵管といわれる管の中を通って卵ができるまで、24~26時間かかるため、ニワトリは生態的に一日1個以上の卵を産むことはできません。
卵用種で年間280個程度です。
産卵はふ化後150日前後で始まり、210日前後でピークを迎えます。
その後は年をとるにしたがって徐々に減っていきます。
産卵は日長にも影響を受けるため、秋から冬にかけてはほとんど卵を産まない時期もあります。
Q 卵からヒナがかえったらいいな。 p58
A 親鶏に抱かせるか、ふ卵器が必要です。
20羽に1羽オスがいれば、約8割の確率で有精卵ができます。
それを親鶏に抱かせればヒナがかえります。
ただし、品種改良されたニワトリの中には就巣性をもたないものも多く、そういうニワトリはタマゴを温めません。
その場合は、ふ卵器を使ってヒナをかえします。
うまく親鶏に卵を抱かせることができれば、ヒナがかえったあとも面倒をみてくれます。
卵を温め始めてから2日でふ化します。
Q ヒナの育て方を教えて。 p58
A 2~3週間は保温しながら育てます。
ふ化したヒナは、親鶏がいれば面倒を見て育ててくれますが、ふ卵器でかえしたヒナやペットショップなどで入手したヒナは、人が育てなければなりません。
ヒナは寒さに弱いので、育すう箱を用意して、ヒヨコ電球などを使い温度調節をしてください。
ふ化して間もなくは33~35°Cの温度を保ち、2~3週間かけて徐々に自然の気温にならしていきます。
ヒナは寒いと固まってピーピー鳴くのでよく観察してください。
逆に暑いと羽を広げて苦しそうにします。
エサはふ化して2日目からヒナ用の自家配合飼料や細かく切った緑餌、くず米などをやってください。
ヒナを育てる季節は気温が上がっていく春~夏が適しています。
Q ニワトリを締めて解体するのに資格などは必要ですか? p59
A 家庭で消費するなら必要ありません。
ニワトリを絞めて、その肉を販売したりする場合は、食肉処理業の許可などが必要になりますが、家庭で消費するだけなら、資格や許可は必要ありません。
誰でもニワトリを絞めて食べることができます。
ニワトリの肉で特に食べてはいけないような部位はありませんが、汚物の残る腸は取り除きましょう。
頭や足も処分するか、ダシをとるだけにとどめます。
おいしく食べるには健康的なニワトリを絞めてください。
Q 締め方、解体のコツは? p59
A 経験を積んで覚えましょう。
ニワトリを絞めるときは、首を完全に落としてしまうより、動脈だけを切るとよいです。
このときニワトリが暴れないようにしっかりと体を押さえ、その後、逆さに吊るすなどして血を抜きます。
毛をむしる際は65°Cくらいのお湯に1分程度つけると毛穴が開いて、むしりやすくなります。
ニワトリを絞めるのは、誰でも最初はとまどいます。
経験を積んでなれることです。
Q 肉をおいしく食べるには? p59
A 硬い肉は細かく切るか、圧力鍋でやわらかくします。
普段、私たちが食べているトリ肉は、ブロイラーと総称される肉用鶏の若ドリで、ふ化後51~55日で出荷されます。
しかし、庭先養鶏でニワトリを絞める場合は、通常、産卵率が落ちてから行います。
養鶏場の卵用鶏でも廃鶏にするのは2年弱ですから、庭先養鶏では3年、4年とさらに年を重ねたニワトリを絞めることになるでしょう。
これくらいの年になると、肉は非常に硬くなり、そのままではなかなかおいしく食べられません。
大きな肉だと噛むのも困難なので、なるべく小さく切ってください。
その上で圧力鍋などを使って、やわらかくします。
フードプロセッサーでひき肉にするのもいいでしょう。
肉にする場合は若いうちにやったほうがおいしく食べられます。
p59
肉はなるべく細かく切ったほうがよい。
2年弱のニワトリならほどよい歯ごたえ
Q ニワトリって喧嘩するんですか? p60
A ストレスがたまらないように飼ってください。
ニワトリはもともと闘争心の強い生き物です。
特にオスは群れや縄張りを守るために、外敵を攻撃します。
ですから、すでに群れができている小屋の中に新たにニワトリを加えると、攻撃を受けます。
これはオスに限らず、メスでもおこります。
死ぬまでやられるようなことはめったにありませんが、多少の血は見ます。
それが嫌だという人は、弱いニワトリは別飼いするのもひとつの方法でしょう。
また、飼育環境がよくなかったり、エサの栄養が偏っていたするとストレスがたまり、ほかのニワトリの毛をむしったり、尻をつついたりするなどのトラブルが発生しがちです。
養鶏場では、それを避けるため断嘴といって、くちばしの先端を切ってしまいますが、庭先養鶏でそこまでやる必要はないでしょう。
Q ニワトリにはどんな病気がありますか? p60
A 伝染病が怖いですね。
ニワトリの病気には、マレック病、鶏痘、ニューカッスル病などの伝染病があります。
発生するとほかのニワトリにも感染が広がる可能性があるので、ニワトリの様子をよく観察し、何かおかしいと思ったら、すぐに獣医や家畜保健衛生所に相談しましょう。
ヒナの時期には寄生虫による鶏コクシジウム症が発生しやすいです。
病気の予防には、自然のものを食べさせ、衛生管理に気をつけて、健康的な環境で飼育することが大切です。
Q 鳥インフルエンザが心配です。 p60
A 冬は放し飼いを控えましょう。
全国の家畜保健衛生所では、特に鳥インフルエンザが流行する冬の時期は、あまり小屋の外にニワトリを出さないように指導しています。
放し飼いをする場合も、周囲および天井をネットなどで囲い、野鳥と接触しないようにすることが求められます。
また、仮に鳥インフルエンザが発生した際に対策がとれるよう、たとえ少数羽でもニワトリを飼っていることを、役所の農政課に報告することをすすめています。
卵用実用鶏 p62
ボリスブラウン
アメリカのハイライン社で育種開発された実用鶏。
赤玉の王者ともいわれる抜群の産卵性を誇る。
性格が穏やかで入手も容易なので庭先養鶏に向いている
ネラ
オランダで育種された黒い羽毛のニワトリ。
質のいい赤玉卵を多産する。
平飼い向きの品種だが、比較的大食いでエサが少ないと毛食いすることがある
ゴトウモミジ
日本国内で幾世代にもわたり選抜交配を繰り返して育種された純国産の実用鶏で、日本の風土に適している。
強健で各種鶏病に対する抵抗力も高い
外国鶏品種 p62
ロード・アイランド・レッド
アメリカ原産の卵肉兼用種。
現在の赤玉実用鶏の種鶏として広く利用されている。
丈夫な体質で飼いやすく、産卵数は年間180~280個。
弱い就巣性をもつ
横斑プリマス・ロック
横斑模様が美しいアメリカ原産の卵肉兼用種。
丸みをおびた体型で肉の味にも定評がある。
日本には明治時代に輸入され、各地の地鶏の作出にもよく使われている
白色レグホーン
世界で最も多く飼われている卵用種。
年間280~300個の卵を産む。
最高365個という記録もある。
性格はやや神経質で、就巣性はない
日本鶏品種 p64
名古屋種
日本で明治時代につくられた品種で一般には名古屋コーチンの名前で知られる。
年間230個ほどの卵を産み、肉も美味。
就巣性がある
ウコッケイ
江戸時代初期に中国から伝わった品種で、毛並みや毛色の異なる内種も多い。
庭先養鶏では比較的ポピュラー。
強い就巣性をもつ
天草大王
熊本県原産の肉用鶏でオスの体重は5.0~6.7kgほどになる。
昭和時代に一度絶滅したが、原種の交配により平成4年に復元された
土佐地鶏
高知県原産。
日本の地鶏では最も小型でオスは約700g、メスは約600g。
小地鶏ともいわれる。
性格はとても人懐っこい
チャボ類 p64
碁石チャボ
一枚一枚の羽毛が黒と白の2色に分かれ、碁石のような斑模様をしている。
チャボ類の特徴として脚が短く尾羽が立っている
猩々チャボ
全身が淡い黄色の美しい毛並みをしたチャボ。
尾羽の先だけ黒い色をしている。
チャボ類は江戸時代から愛玩鶏として親しまれてきた
愛玩用品種 p65
ポーリッシュ
17~18世紀にヨーロッパでつくられたといわれる。
ふさふさの毛冠が特徴。
体重はオスで2.2~2.4kg、メスで1.5~2kg
スプラッシュシルキー
全身がふさふさの絹毛(シルキー)に覆われ、頭に毛冠のあるかわいらしいニワトリ。
産卵数はあまり期待できない
価格は幼ビナで約300円~ 農家にもらうという手も p66
ニワトリの入手先として、最も手軽なのはペットショップでしょう。
時期にもよりますが、ふ化後間もない初生ビナから、保温などをしなくても育てられる中ビナや大ビナ、もちろん成鶏も手に入ります。
通常、ワクチンも施されているので安心です。
大ビナや成鶏はオスとメスのつがいで販売されていることも多く、一方だけでは入手できない場合があるので、店でよく確認してください。
また、ペットショップといっても、イヌやネコと違って、ニワトリを扱っているところはそれほど多くはありません。
鳥専門の店などもあるので訪ねてみるといいでしょう。
ペットショップでは、ポリスブラウンや名古屋種など一般的な採卵用品種や卵肉兼用品種のほか、ウコッケイや軍鶏、チャボ類など、店舗にもよりますがいろいろなニワトリを手に入れることができます。
価格は品種や性別、月齢によって異なります。
一般に実用鶏の幼ビナで300~1000円程度ですが、ウコッケイは幼ビナで2000~3000円前後。
いずれも中ビナ、大ビナになるとさらに価格が上がり、成鶏は実用鶏で3000~5000円程度、愛玩用や観賞用の品種には1万円以上するものもいます。
愛玩動物(鳥や爬虫類などを含む)の販売は、動物愛護管理法で対面説明が義務付けられているため、インターネットなどによる通信販売はできません。
ただし、畜産に関わるものは例外とされているため、採卵を目的とした家禽であるニワトリはインターネットで入手することも可能です。
実際、ヒナや成鶏を販売しているサイトや交換サイトもありますが、生体の輸送はエサや水の問題もあり、リスクが高いです。
ネットで入手する場合も、受け取りに行くのが理想です。
インターネットでは、より安価に有精卵を入手することもできますので、ふ卵器があればヒナをかえして育てられます。
近所にニワトリを飼っている人がいれば、相談してみるのもいいでしょう。
直接譲ってもらえなくても、入手先を紹介してくれたり、飼い方のアドバイスを聞けたりするかもしれません。
なお、個人に譲ってもらう場合、ヒナは雌雄の判別がつきにくいので、できればある程度大きくなってオスかメスかわかってからのほうがいいでしょう。
また、採卵が目的で成鶏を譲ってもらう場合は、卵をよく産むか確認しましょう。
卵をたくさん産む成鶏を安く手に入れたいのであれば、養鶏農家に相談するという方法もあります。
養鶏農家では産卵率とエサ代などの経済性を考え、通常2年程度でニワトリを淘汰します。
しかし、産卵率が低くなるといっても、平均して2日に1個以上は卵を産みますから、5羽もいれば家庭で消費する分は十分まかなえます。
産卵個数が少なくなって淘汰されるニワトリを廃鶏といいます。
養鶏農家としては淘汰にも費用がかかるので、うまく話をすれば、安価に、またはタダで譲ってくれるでしょう。
その際、くちばしが切断されていないか確認してください。
養鶏場のニワトリはつつきを防止するために断嘴といって、ヒナのうちにくちばしの先を切っていることが多いのです。
そういうニワトリは地面に生えている草をつついて食べることが容易にできません。
断嘴をせずに健康的な平飼いをしている養鶏農家に相談するといいでしょう。
養鶏場の運営サイクルで廃鶏が出る時期は決まっているので、事前に声をかけておきましょう。
ふ卵場でふ化したばかりの初生ビナを手に入れることもできます。
ふ卵場というのは、主に実用鶏の卵をふ化させて養鶏場などにヒナを出荷するところですが、中には少数羽で販売をしてくれるところもありますので、問い合わせてみてください。
ほかにも、農協や畜産センター、各地の地鶏の普及に取り組む団体などに入手先を相談してみるのもいいでしょう。
群れで行動し、闘争もある p69
ニワトリは多分に社会的でもあります。
ヤケイといわれる野性のニワトリはオス1羽に10羽程度のメスでひとつの群れをつくります。
群れの中には必ず順位ができ、家庭で飼う場合も、複数のオスがいると、しばしば闘争によって明確な地位が確立されます。
また、できあがった群れの中に新しいニワトリが入ってきた場合も、新参の個体を排除しようという行動が見られ、争いがおこります。
強いニワトリは弱いニワトリに対し、毛を逆立てて威嚇し、くちばしによるつつき、足の爪による刺しや蹴りなどの攻撃をくわえます。
狭い小屋の中で群れへの参加を排除されたニワトリは、自由に行動することができず、小屋の隅にうずくまっていたり、止まり木から下りられなくなったりします。
すでに飼っているニワトリたちの小屋に新しい個体を入れると闘争が起こりやすいので、なるべく避けたほうがいいでしょう。
攻撃性の強いオスは、人間にも飛びついてきたり、くちばしでつついたりして、群れを守ろうとします。
健康維持には砂浴びと日光浴も大切 p70
砂浴びもニワトリにとって大切な行動で乾いた地面の上に寝転んだり、体に砂や土をかけたりすることで、体についた虫や汚れなどを取り除きます。
また、日差しの弱い冬は、じっと日に当たって気持ちよさそうにしている様子も見られます。
日光浴をすることによって、卵の殻の形成に大切なカルシウムの吸収を助けるビタミンDがつくられるのです。
こうした健康を維持するための行動が制限されるとストレスになります。
ニワトリを飼う場合、砂浴びや日光浴ができる環境をきちんとつくってやってください。
地面をひっかいてエサ探し p70
ニワトリを庭に放すと、足で地面をひっかきまわしたり、くちばしでつついたりして、ミミズや土の中の小さな虫たちを探して食べます。
一日のほとんどはそうしたエサ探しに費やされます。
ときどき小さな石を飲み込むことがありますが、これは歯がないニワトリにとって必要な行動です。
飲み込んだ小石は砂のうという器官にためられ、エサをすりつぶすために使われます。
オスは一日11~15回程度 交尾する p71
オスとメスを群れで飼っていると交尾は毎日のように行われます。
時間帯は夕方が最も盛んで、一日の交尾回数はオス1羽あたり11~15回程度といわれています。
交尾をするときは、オスが羽ばたきをしながらメスに接近し、メスは拒否をしなければその場にうずくまってオスを迎えます。
メスの背中に乗ったオスは首のあたりをくちばしでくわえて交尾するので、メスの中には首の周りの毛が抜けてしまうものもいます。
交尾の時間は数秒です。
複数のオスがいる場合、順位の高いものが優先的に交尾を行い、順位の低いオスにはメスが拒否することもあります。
多くの動物には一年の中で決まった繁殖期がありますが、ニワトリは季節によらず繁殖行動をします。
鳴き声で縄張りや順位の優位性を示す p71
「コケコッコー」という大きな声で鳴くのはオスだけです。
早朝3時頃から鳴き始め、日中も2時間おきくらいに鳴きます。
夕方暗くなると眠りますが、何か物音がしたりするとそれに反応して鳴くこともあります。
明け方の声は縄張りや群れの中の優位性を示すものだといわれ、複数のオスがいる場合、最も順位の高いものが最初に鳴くようです。
メスはオスほど大きな声では鳴きませんが、まったく鳴かないわけではありません。
産卵の前などは「コケーッ、コケーッ」と落ち着きなく甲高い声をあげます。
イヌやネコなど外敵の存在を感じたときも盛んに鳴き、多数のニワトリを飼っていると1羽の鳴き声に群れ全体が反応して大合唱がおきます。
近所に家がある場合、ニワトリを飼う上で最も気を使うのは鳴き声です。
日中は生活音であまり気になりませんが、夜は屋内に入れるなどの対策をするといいでしょう。
何でも食べる雑食性 エサの消化には小石も必要 p72
ニワトリは雑食性の生き物です。
雑草やミミズ、昆虫など、自然にあるものはもちろん、野菜、果実、肉、魚、米など、人間が口にするようなものは何でもよく食べます。
家庭で出る生ゴミもよいエサになります。
ニワトリを放し飼いにして観察すると、自然にあるもので何を好んで食べるのかがわかります。
どこでも見られる雑草では、イネ科のメヒシバヤマメ科のクローバーなどをよくついばみます。
畑があればニワトリが真っ先に食べるのは、キャベツやハクサイなど、アブラナ科の葉物野菜です。
イチゴやブルーベリーなどの果実も好みますが、ニワトリの目線より高い場所にあるものについてはあまり興味を示しません。
ミミズや虫の幼虫は大好物です。
ニワトリ同士で取り合いになります。
バッタやカエルなども捕まえて食べることがあります。
放し飼いのニワトリは、地面を足でほじくりながら土をついばむことにも時間を費やします。
それも木陰になって落ち葉が積もったような場所を特に好んでほじくります。
これは土の中にいる虫やミミズを探しているのかも知れませんが、土と一緒に土着菌なども摂取しているようです。
実際、落ち葉が発酵してできる腐葉土や生ゴミなどからつくる堆肥もついばむのです。
自然養鶏農家ではくず米やおから、米ぬかなどを配合して発酵させた飼料をやっているところも多く、ニワトリにとって発酵菌は、健康を維持する上で欠かせない要素のようです。
また、ニワトリが土をついばむのは、体内に米粒ほどの小石を必要としているためでもあります。
エサとしてではなく、食べたものを咀嚼するために使うのです。
ニワトリは歯がありません。
そのため、砂のう(筋胃)と いわれる胃の一部に小石をためて、そこで筋肉の収縮運動により食べたものをすりつぶすのです。
小石が不足すると食べたものをうまく消化できず、固形のまま排出したり、下痢をおこしたりします。
砂のうの中の小石は摩耗すると、自然に排泄されます。
小石の摂取はニワトリを放し飼いできる環境ならば問題ないのですが、ケージや床が土の地面ではない小屋で飼う場合は、小石の混じった土や砂を入れておくといいでしょう。
庭先養鶏で手軽に利用できる市販の配合飼料 p72
豊かな自然の中でニワトリが暮らしていれば、先述したような自然のものをエサとし、そこから必要な栄養をとりますが、家庭で飼う場合は人間がエサをやらなくてはいけません。
養鶏農家では、自家配合で飼料をつくっていますが、ペットショップやホームセンターで手に入る市販の配合飼料を利用する方法もあります。
価格は、20kgで1000~2000円程度です。
よく卵を産むメスのニワトリで一日110g程度食べますから(水分を含んだ自家発酵飼料の場合120~150g)、5羽飼う場合でも20kgあれば一ヵ月以上持ちます。
市販の配合飼料の主な材料はトウモロコシ、小麦、大豆、油カス、魚粉、貝殻などで、栄養成分がバランスよく配合されています。
ただし、輸入された材料には、昨今、世界で問題になっている遺伝子組み換え作物や残留農薬の心配があることを覚えておいて下さい。
p75
エサは基本的には午前中にやります。
前日の食べ残しなどを観察して、食べきれる量をやるのがよいのですが、やりすぎたからといって食べすぎることはありません。
飼っているニワトリがみんなで食べられるようにやってください。
水は常に切らさないように朝夕、必ずチェックします。
水道水でもかまいませんが、理想はわき水、雨水、井戸水などの自然の水です。
卵の約7割は水分です。
ニワトリにとってきれいな水はとても重要です。
湿気の少ない場所で雨露、外敵を防ぐ工夫を p76
ニワトリを飼うためには、まず小屋を用意しなくてはいけません。
広さは畳1枚で2~3羽が理想的で、多くても5羽までにしてください。
10羽なら1坪以上の広さが必要です。
なるべく広々とした環境のほうがニワトリたちも小屋の中をのびのびと歩き回れます。
密飼いをすると、ストレスがたまり、ほかのニワトリの毛をむしる(毛ぐい)などのトラブルが出やすくなりますし、ニワトリが増えたときのことを考えると、小屋の広さはなるべく余裕をもたせたほうが安心です。
家庭でニワトリを飼っている人の多くは、自分で建てています。
ホームセンターで手に入る安価な木材を使った簡単な構造でかまいません。
材料の切断や接合は電動工具があれば楽ですが、畳1枚程度の広さならノコギリやカナヅチなどの手道具でも、それほど手間をかけずにつくることができます。
間伐材や建築廃材などを入手して利用できれば材料費も抑えられます。
気をつけたいのは小屋の場所です。
ニワトリは湿気を嫌うので、雨が降っても水たまりができない場所を選んでください。
小屋の周りに溝を掘って雨水の浸入を防ぐのもよい方法です。
庭の広さが限られるようなら、家の軒下などを利用するのもいいでしょう。
屋根は片流れにしてトタン波板を葺くのが最も簡単です。
軒を長く伸ばすなどして、夏の強い日差しや雨の吹き込みを防ぐ工夫をしてください。
日当たりは必要ですが、ニワトリは夏の暑さが苦手なので、直射日光で小屋の中が暑くなりすぎるのはいけません。
小屋は風通しをよくするために金網などを利用して壁にします。
網目の大きさはスズメやヘビ、ネズミが入れない程度。
ただし、あまり網目を小さくするとほこりが付着しやすくなるので、風通しが悪くならないように定期的にほこりを払いましょう。
金網はすき間ができないように張ってください。
小屋の下部40cmほどは板張りやトタンにします。
理由はイタチやキツネ、ネコなどの外敵にニワトリの存在をわかりにくくするためです。
イタチなどの外敵は地面を掘って小屋に侵入することがあるので、小屋の周りはブロックや丸太などを深さ30m程度埋めておくと安心です。
床は乾いた土の地面が基本です。
もみ殻や落ち葉、刈り取った雑草などを敷いておきます。
ニワトリがフンをして、足でひっかきまわすと、床の有機物が撹拌されて、微生物が活発に活動し、発酵床がつくられます。
床が発酵することで、フンの臭いも抑えられます。
床の土は半年から1年に1回程度入れ替えて、清潔な環境を保ちましょう。
エサ箱や水入れは市販の自動給餌器や給水器などもありますが、空き缶や木箱、バケツでもかまいません。
小屋の壁に取りつけるなどして、ニワトリにひっくり返されたり、水を汚されたりしないように置きます。
卵を産ませるため産卵箱も設置します。
ニワトリは狭くて暗い場所に隠れて産卵する性質があります。
産卵箱の寸法は幅、高さ、奥行き各30~40cmくらいがよいでしょう。
中にはもみ殻や細かく刻んだわらなどを入れて卵が割れないようにしてください。
扉をつけて小屋の外から卵を取れるようにすると便利です。
止まり木は地面から最低30cmくらいの高さがあれば十分です。
ニワトリが飛び乗れる高さなら、もっと高くてもかまいません。
飼っているニワトリが、みんな並んで止まれるようにつくってください。
約150日で産卵がスタート 平均寿命は約10年 p78
ニワトリの卵は、親鶏が温め始めてから21日目にふ化します。
ヒナが自分の力で殻を割って出てきます。
ふ化したばかりのヒナは濡れた羽毛に包まれており、この時点ですでに目が見えています。
ふ化して30分くらいで羽毛が乾いて、立ち上がります。
ヒナは消化器官が発達していないため、すぐにはエサを食べません。
体内の卵黄を栄養源にします。
ふ化後48~50時間で卵黄は大部分が消化吸収されるので、そこで初めてエサを食べ始めます。
卵黄を栄養にしている間はエサや水をやる必要がないため、養鶏場などに多数のヒナを輸送するときは、この産まれたばかりのタイミングで行います。
一般的な卵用鶏で、産まれたばかりのヒナの体重は40g程度です。
ヒナは成長に合わせて、ふ化後30日までは幼ビナ、60日までは中ビナ、それ以降は大ビナと呼ばれ、養鶏場ではそれぞれエサの配合を変えるなど、異なる管理下において飼育します。
ニワトリは非常に成長が早い生き物です。
産まれてから1ヵ月で体重は10倍近くに増え、70日後には約800gにもなります。
大ビナになると見た目はもう立派なニワトリですが、鳴き声は幼ビナの頃と変わらずピヨピヨとかわいらしく鳴きます。
体重は120~130日で1300g前後です。
産卵はふ化後150日前後で始まります。
卵用鶏であれば、最初の頃は2~3日に1個くらいのペースですが、間もなく毎日のように卵を産むようになります。
養鶏場の卵用鶏の場合、だいたい210日前後で産卵のピークを迎え、以降、徐々に産卵個数が少なくなってくるため、エサ代などコストを考えた経済効率上、通常は2年程度で廃鶏として処分されます。
ただ、家庭で飼う場合はそれほど高い産卵数を求める必要はありません。
実際に産卵が停止するのは7~8年です。
ニワトリの産卵は日長と深い関係があります。
2歳以上のニワトリは、日が短くなる秋から冬にかけて、といって羽が生え換わる時期になり、この間は卵を産みません。
春になって、少しずつ目が長くなるとまた産卵するようになります。
寿命は平均10年程度といわれていますが、大切に飼えば15年くらい生きます。
ニワトリを飼い始めるのは春がいい 飼育環境は季節に合わせて p79
ニワトリを飼い始める時期は、日ごとに暖かくなっていく春、3月~5月頃がいいでしょう。
ヒナから飼い始める場合はなおさらです。
ニワトリはほかの多くの動物たちと違いがあるわけではありませんが、自然の生態に従えば、やはり春は繁殖に最も適した季節です。
特にヒナは保温が必要なので、気温が低い冬の飼育は難しくなってきます。
秋までには成鶏に育つように、時期を逆算して飼い始めてください。
春~秋にかけては、ニワトリのエサとなる草が茂り、小さな虫やミミズなども活発に活動します。
放し飼いができる環境ならニワトリたちは庭を自由に走り回って足で地面をひっかいたり、くちばしでつついたりして、自然の植物や生き物を食べます。
ニワトリは暑さが苦手なので、夏はよく木陰で砂浴びをして、日中そのままじっとしていることが多いです。
小屋に日陰ができないような環境でしたら、すだれやよしずなどを利用して日陰をつくってやるとニワトリも快適に過ごせます。
冬は鳥インフルエンザが流行しやすい時期なので、放し飼いは控えます。
ニワトリは寒きには比較的強い生き物ですが、寒冷地では小屋の周りを板で覆うなど、冷たい北風や雪の侵入を防ぐなどの対策はしたほうがいいでしょう。
エサやりは午前中、早めに 卵の回収も毎日、忘れず行おう p80
ニワトリはとても早起きです。
朝は、日の出前の午前3時頃にオスが「コケコッコー」と遠くまでよく響く大きな声で鳴きます。
まだ、時計が普及する以前は時をつくる鳥として、大切にされてきました。
一番鶏が丑の刻(午前2時頃)、二番鶏が寅の刻(午前4時頃)を告げるといわれ、それを聞いて人は目を覚ましていたそうです。
メスは大きな声では鳴きませんが、空が明るくなる頃には動き始め、お腹が空いてエサを欲しがっているときなどはコッコ、コッコと小さな声で鳴きます。
朝は、まずエサをやりましょう。
時間は何時でもかまいませんが、ニワトリもお腹をすかせているので、早くやったほうが喜びます。
自分が朝食を食べる前とか、あととか、ある程度決めて習慣にしておくと忘れません。
エサと一緒に水の確認も忘れないでください。
水はいつも切らさないようにして、必ず容器に十分な量を入れておきます。
汚れた水はニワトリの健康によくないので、毎日、新しい水に替えてください。
エサを食べ終わると、だいたい午前中のうちにメスは産卵箱に入って卵を産みます。
産卵が確認できたらなるべく早く卵を回収したほうがいいのですが、たくさんのニワトリを飼っているとそういうわけにもいきません。
午後にはほぼすべてのニワトリが産卵を終えるので、それからまとめて回収してもいいでしょう。
卵をそのまま産卵箱に置いておくと、就巣性の強いニワトリは温め始めたり、中には卵を食べてしまうニワトリもいたりするので気をつけてください。
もしも、そういうニワトリがいたら、別飼いするなど対策をとるようにします。
庭に放し飼いできる環境なら、日中は小屋から出してやるのもいいでしょう。
ニワトリたちは砂浴びをしたり、地面をほじくってエサを探したりしながら自由に過ごします。
エサは一日1回でもかまいませんが、夕方にくず野菜や雑草などの緑餌をやると喜びます。
水も少なくなっていたら新しくしてやります。
放し飼いにすれば、庭の草や虫を勝手に食べるので、それが夕食になります。
また、オスがいれば夕方に交尾活動をすることが多いです。
放し飼いにしていたニワトリは、暗くなる前に自分で小屋に戻ってきて、止まり木に止まって寝る準備をします。
すべてのニワトリが戻ってきていることを確認したら、夜、外敵などに襲われないようにしっかりとドアをしめてください。
就巣性のあるニワトリで親鶏に卵を抱かせる母鶏ふ化 p82
卵からヒナをかえすのは、ニワトリを飼う楽しみのひとつです。
オスとメスを飼えば、有精卵を産むので、それを温めればヒナをかえせます。
メス20羽に対して、オス1羽で約80%が有精卵になります。
オスとメスが交尾をするとその3日目頃から有精卵になり、1回の受精で約10日間有精卵が産卵されます。
複数のニワトリを飼えば、交尾は自然に行われますが、よいヒナをかえすためには親鶏を選ぶことも大切です。
種をとる時期に、体格や性格、産卵性など、交配させるのに理想的なニワトリをするといいでしょう。
ヒナを育てるのは春がいいので、種卵をとるのもその頃にします。
自然界でも春は繁殖の季節です。
親鶏が産卵したら種卵は形のきれいなものを選んで取り上げ、温度15~20°C、湿度40~70%の場所に保存します。
冷蔵庫には入れないでください。
温度が低すぎます。
また卵を洗うのもよくありません。
保存期間はできれば1週間以内とします。
卵を取ると親鶏は卵を産み続けるので、その間にふ化させるのに必要な個数を集めます。
ヒナをふ化させるには、親鶏に抱かせる母鶏ふ化とふ卵器を使う方法があります。
親鶏に抱かせる場合は、そのニワトリに就巣性がなくてはいけませんが、家禽の長い歴史の中で品種改良された現在の多くのニワトリは、就巣性を失っているものが少なくありません。
家庭でよく飼われているニワトリで強い就巣性をもつものとしては、チャボ、ウコッケイ、名古屋種などが挙げられます。
親鶏がほかのニワトリに邪魔されないように抱卵小屋をつくってやり、集めた卵を巣に置いてやれば、就巣性のあるニワトリは卵を温め始めます。
巣についた親鶏は一日1回くらい食事と排泄に巣を離れるくらいで、ほとんど動かずに卵を温め続けます。
抱卵小屋は薄暗くし、エサと水を置いておきます。
床には藁やもみ殻を敷き、卵が転がり出ないようにします。
親鶏が卵を温め始めてから21日目にヒナがかえります。
p82
周りを板で囲んだ薄暗い抱卵小屋で卵を温め始めた親鶏。
こうして巣につくとエサもあまり食べず、ほとんど動かなくなる
2回の検卵で発育を確認しよう p82
ふ卵器は5~20個くらいの卵が入る家庭用のものがいろいろ市販されています。
小型でも2~5万円くらいする高価なものですが、就巣性をもたないニワトリのヒナをふ化させる場合は必需品です。
ふ卵器は自作することもできます。
種卵を37~38°C、湿度60~70%で保てるような箱をつくればよいのです。
熱源はヒヨコ電球を利用し、サーモスタットで温度を一定に保ちます。
また適度な湿度を得るために箱の中には水を入れた容器を置いてスポンジなどを浸しておきます。
ちょっと手間がかかるのは転卵です。
18日目まで4~5時間おきに1日5~6回卵の傾きが逆になるように位置を替えなくてはいけません。
母鶏ふ化の場合は、親鶏が足で上手に転卵します。
母鶏ふ化でも、ふ卵器を使う場合でも、卵を温め始めてから5~7日目と17~18日目にきちんと発育しているか確かめるための検卵を行います。
暗い部屋で卵に電球の光を当てて内部の様子を確認するのです。
検卵したときの卵の状態はP83のイラストを参考にしてください。
正常に発育していれば、5~7日目には胚から血管が広がっているのが観察できます。
発育中止卵や無精卵があれば取り除きます。
母鶏ふ化の場合、親鶏の中には自分で無精卵をはじき出すものもいます。
17~18日目にもう一度検卵し、その後は転卵を中止します。
ふ化が始まったら慌てて取り出そうとせずヒナが自力で殻を割って出てくるのを見守ってください。
ふ卵器でふ化したヒナは温度を約36°Cにした育すう箱に移します。
育すう箱は通気性と保温を考えてつくる p85
ヒナを育てることを育すうといいます。
育すうの方法はふたつあり、ひとつは親鶏に育てさせる母鶏育すう、もうひとつは人間が育てる方法です。
親鶏に卵を抱かせて母鶏ふ化させたヒナの場合は、そのまま抱卵小屋でしばらく親鶏と一緒に育てます。
ふ化したばかりのヒナは体温を調節することがうまくできませんが、母鶏育すうの場合、ヒナは寒ければ親鶏のお腹にもぐり込んでいくので、小屋の保温は特に必要ありません。
エサ箱にはヒナ用のエサを入れておきます。
餌づけについては親鶏が面倒をみてくれるので、人間は何もしなくて大丈夫です。
こうして親鶏に育てられたヒナは、小屋にいるほかのニワトリにいじめられることも少ないので安心です。
1羽の親鶏でだいたい15~20羽のヒナを育てることができます。
子育て経験のある親鶏を抱卵小屋に入れて卵を抱かせ、巣についたところを見計らって、ふ卵器でかえったヒナを夜の間に卵と入れ替えて、その親鶏(仮親)に育てさせる方法もあります。
一方、ペットショップなどから入手したヒナや、親鶏に就巣性がなくふ卵器でかえしたヒナは、人間が親鶏の代わりになって育てなければなりません。
その場合、育すう箱を用意します。
10羽くらいのヒナなら、育すう箱は床面40×70cm、高さ40cmくらいの大きさがあれば十分です。
大きさは飼育するヒナの数に合わせます。
狭すぎるのはいけませんが、広すぎても保温がうまくできません。
育すう箱は板材で簡単な箱をつくってください。
天井には金網を張って通気性を確保し、いつでもヒナの様子を見られるようにします。
ヒナが寒そうにしているときは、金網の上に板などをおいて箱の中の熱が逃げないようにするなど温度調節します。
ビニールは通気性を損なうので避けます。
保温に気を使うあまり、換気を怠るとかえって病気にかかりやすくなります。
保温にはヒヨコ電球を使います。
育すう箱の天井や壁に設置し、箱の中の温度が33~35°Cくらいになるようにします。
箱の中心に布を垂らすなどすれば熱が逃げにくくなりますし、暑いときはヒナが布の外に出て涼むことができます。
数十羽のヒナを一度に育てる場合はコタツを利用するのもいい方法です。
床には藁やもみ殻を敷き、フンがたまらないように定期的に掃除してください。
新聞紙を敷いて毎日取り替えるなどしてもよいです。
2~3週間かけてゆっくりと自然の気温にならしていく p86
ふ化したばかりのヒナは、1~2日は体の中に残っている卵黄を栄養にします。
卵黄は50時間ほどで消化されるので、餌づけはその後に行います。
エサは、細かく刻んだ緑餌やくず米、ゆで卵の黄身、ミミズなどを皿状の器に入れてやりましょう。
市販のヒナ用飼料もあります。
自家配合飼料をやる場合、ふ化後30日までは魚粉を15%くらいにして、たんぱく質をやや多めにします。
水は深い器だとヒナが落ちて溺れる危険があるので、専用の給水器を利用するか、浅い器を使います。
育すう箱の温度は毎日ちょっとずつ下げていき、2~3週間で自然の気温と同じくらいになるようにします。
ヒナが熱源の近くに集まってピーピー鳴くようだと寒すぎるし、熱源から遠ざかって羽を広げ、苦しそうに口を開けているようなら暑すぎます。
気候とヒナの様子を観察しながら温度調節してください。
ふ化から30日で中ビナと呼ばれ、羽もほぼ生えそろい、体重は300gほどになります。
エサはもう成鶏と同じもので大丈夫です。
食欲が旺盛になるので、不足しないようにたっぷりやってください。
飼う場所も広い小屋に移しましょう。
ただし、成鶏がいる小屋に移すといじめられやすいので、別の小屋を用意したほうが安心です。
作物に必要な肥料分をバランスよく含む鶏フン p88
循環型の有機農業を営む農家にとって、昔からニワトリは暮らしに欠かせない生き物です。
鶏フンが野菜のとてもいい肥料になるからです。
作物の生育には、自然から吸収できる酸素や炭素なども含めて、17種類の必須要素がありますが、中でも肥料の三要素といわれる窒素、リン酸、カリは特に重要です。
鶏フンはこの3つの成分をバランスよく含んでいます。
成分量はエサなどによっても異なるため一様ではありませんが、一般に市販されている乾燥鶏フンの場合、窒素3.0%、リン酸4.5%、カリ2.5%くらいです。
採卵用のニワトリは石灰分も比較的多く含みます。
参考までに牛フン(水分60%)は窒素0.8%、リン酸0.9%、カリ0.8%、豚プン(水分60%)は窒素1.2%、リン酸2.1%、カリ0.7%です。
家畜・家禽フンの中でも鶏フンは扱いやすい上、とても高い肥料成分を有しているのです。
ニワトリは一日、約140gのフンをします。
1回にするフンの大きさは大人の親指の先ほどで、全体に黒っぽい色をしていますが、よく見ると一部に白くなったところがあります。
これはおしっこです。
ニワトリは哺乳類のような尿道はなく、フンとおしっこを総排泄腔というところからまとめて排泄します。
そのおしっこも含めてフンの約75%は水分です。
水分が抜けたフンの重さは30~35gほどですから、一年で1羽のニワトリから約1kgの鶏フンを得られる計算になります。
鶏フンを肥料として利用する場合は、事前に乾燥または発酵させます。
ただし、乾燥させただけの鶏フンは水分を吸うと悪臭を放ち、使用も元肥に限られますので、できれば発酵させた方がいいでしょう。
ニワトリ小屋の床に藁やもみ殻、落ち葉などを15~20cmほどの厚さで敷いておけば、ニワトリはそこでフンをし、足でひっかきまわすので自然に発酵が進みます。
乾燥しすぎる場合は、水をまくと発酵が促進されます。
雑草やくず野菜などの緑餌、生ゴミなども床にばらまいてかまいません。
ニワトリが食べ残したものがフンと混じって肥料になります。
発酵が進んだ床は半年~1年もすれば取り出して肥料として使えます。
取り出した鶏フンをすぐに使用しない場合は、畑の隅などに積み上げておいてもかまいません。
たまに水をかけて適度な湿りけをもたせ、2週間に1回くらい切り返すと発酵が進みます。
発酵鶏フンは、元肥として使う場合、作づけの2週間ほど前に畑に施して土にすき込みます。
乾燥鶏フンの場合は1ヵ月前です。
追肥に使う場合は、作物の根が伸びていく先に穴を掘って施します。
発酵が未熟な鶏フンを使うと作物の生育に影響が出るので注意しましょう。
畑で利用する「チキントラクター」 p89
チキントラクターとは、床のない持ち運びができる小型のニワトリ小屋で、畑に置いて利用します。
この中にニワトリを入れておくと、雑草を食べてくれ、地面を足でひっかきまわすことで、畑が耕されます。
ニワトリがしたフンはそのまま肥料になります。
写真のチキントラクターは床面が約90×65cm、高さ約70cmの三角形をした1羽用です。
半分を金網にして通気性を確保し、板張りの薄暗いところで産卵をします。
1~2日で草がすっかりなくなるので、そうしたら場所を移動します。
外敵のことを考え、夜は安全なニワトリ小屋に戻します。
三角屋根のチキントラクター。
雑草は1~2日できれいになくなる
尻つつき p93
ニワトリにとって深刻なトラブルのひとつに毛ぐいがあります。
密飼いや栄養の偏りなどによるストレスで、ほかのニワトリの毛をむしる行為です。
毛ぐいが進むと、むき出しになった尻をくちばしでつついて肉を食べてしまう尻つつきが始まります。
多くの養鶏場では、それを避けるためにヒナのうちにくちばしの先を切ってしまう断嘴を行いますが、そうすると配合飼料以外の自然のエサが食べられなくなってしまうので、庭先養鶏ではやらないほうがいいでしょう。
いったん尻つつきの癖がつくと治りません。
ほかのニワトリと別飼いするなどの対策をとりましょう。
ニワトリ小屋のつくり方 p94
ニワトリを飼うために、まずはニワトリ小屋を用意しましょう。
10羽までなら1坪くらいの広さがあればOKです。
ホームセンターで手に入る資材を使って、DIYでつくることも難しくはありません。
予算約3万円、DIYになれた大人2人で2~4日あればできる簡単なニワトリ小屋づくりをご紹介しましょう。
基礎の上に柱を置いてビスで接合するだけ p95
ここで紹介するニワトリ小屋は、ピンコロという四角いコンクリートブロックの基礎の上に2×4材の土台を固定し、柱を立てた簡単なものです。
難しい加工はなくし、材と材の接合はビスやカスガイを使って行います。
整地はスコップで穴を掘って砕石を突き固めます。
軽い小屋なので基礎の高さは水平器を使って合わせる程度で十分です。
屋根はトタン波板を葺くのが一般的ですが、ちょっと見た目にこだわって、板葺きとしました。
下地にアスファルトルーフィングという防水紙を施工するので、雨漏りの心配はありません。
破風や鼻隠しもジグソーでデザインカットしています。
ニワトリの産卵は人間でいう排卵と同じ p104
ニワトリは、ふ化してから150日前後産卵を開始します。
品種にもよりますが、よく卵を産む卵用鶏の場合、産卵開始後2~4カ月の間が最も産卵数が多くなり、その後、徐々に低下します。
産卵するのは、当然ですがメスだけです。
オスを飼っていなくても、メスだけで産卵します。
それを不思議に思うかもしれませんが、ニワトリが卵を産むのは、人間でいうところの出産ではなく、排卵と同じだからです。
人間の生理が月周期なのに対し、ニワトリは日周期で24~25時間に1個の卵を産みます。
鳥類は、本来、ヒナの面倒をみられるだけの数しか卵を産まないものですが、産んだばかりの卵がなくなると、次々に産卵する性質があります。
ニワトリも、その祖先は産卵数が年間10個程度でした。
しかし、人間が卵をとるようになり、長い歴史の中で、今のようにほぼ毎日、卵を産むようになったのです。
メスだけで産む卵は無精卵といいます。
受精していませんから、温めてもヒナはかえりません。
スーパーなどに並んでいる卵は、基本的に無精卵です。
オスを一緒に飼えば、受精した有精卵ができます。
20羽のメスに対して1羽オスがいれば、約80%の確率で有精卵になります。
無精卵と有精卵の違いは卵を割ってみるとわかります。
有精卵は黄身の上に直径3~4mmの白いドーナツ状の輪が見られます。
胚といって、この部分が育ってヒナになるのです。
排卵から卵ができるまで24~25時間 p105
メスのニワトリには、ブドウの房のような卵巣があります。
卵巣には直径1~35mm程度の大小さまざまな卵胞という球状の細胞があり、これが卵黄のもとになります。
スーパーの精肉売り場で、ピンポン玉を少し小さくしたようなキンカンという黄色い部位を見かけることがありますが、これは卵巣を取り出したものです。
卵胞はヒナのときからありますが、ニワトリが成長して産卵できるようになると、血液によって卵黄物質が卵胞に運ばれます。
卵黄物質を蓄積した卵胞は10日ほどで成熟して排卵され、漏斗部といわれる、卵黄を受け取る大きな口のような部分から卵管に入ります。
卵管は、排卵された卵黄が放卵されるまで通っていく管で、だいたい70cmほどの長さがあります。
漏斗部から卵管に入った卵黄は、まず膨大部でねっとりとした卵白に包まれます。
その後、峡部と呼ばれるところで殻の内側にある薄皮、卵殻膜が形成されます。
排卵から漏斗部の通過におよそ15分、膨大部が3時間前後、峡部が1時間15分ほどかかります。
ここまで4時間30分くらいです。
卵殻膜ができると、子宮部でその周りに石灰質がくっついて約20時間かけて卵殻が形成され、尻にある総排泄腔から放卵されます。
排卵から放卵までの時間は24~25時間で、毎日卵を産んでいるニワトリは日ごとに産卵時刻が遅くなり、夕方近くに産卵するようになると、1~3日休産し、その翌日からまた産卵します。
産卵は日長にも影響を受けます。
日が長くなるとよく産卵し、短くなると産卵数が低下します。
そのため養鶏場では鶏舎に電灯をつけて日照時間を調整し、一年中、卵をよく産むようにしています。
いろいろな卵 p106
ニワトリの卵は品種によって、卵殻の色や大きさが違います。
スーパーなどで、最も多く目にするのは、白玉といわれる純白の卵で、卵重は平均55~60g程度。
これは白色レグホーン系統の卵です。
ほかには淡褐色や赤玉といわれる褐色の卵があります。
主にロード・アイランド・レッドをもとにしてつくられた品種の卵です。
赤玉は、いかにも栄養があっておいしそうですが、栄養成分は白玉と変わりません。
卵の大きさは品種による違いのほか、日齢にも左右され、年をとるほど大きくなります。
ただし、卵黄の大きさは、若いニワトリは若干小さいものの、卵の殻が大きくても小さくてもほぼ同じです。
殻が大きな卵は卵白の量が多くなっているのです。
卵黄の色はエサで変わる p106
卵殻の色はニワトリの品種によって異なりますが、卵黄の色はエサによって変わります。
卵黄の色はカロテノイドという色素によるもので、これはニワトリ自身で合成することはできません。
つまり、エサによって卵黄の色を調整できるのです。
黄色を濃くするエサとしては、トウモロコシやマメ科のアルファルファがあり、さらに濃い橙色に近づけるにはパプリカやトウガラシを食べさせます。
くず米などが中心のエサだと、あまり色がつかず薄い黄色になります。
一般には色の濃い卵が好まれますが、栄養成分が変わるわけではありません。
比較的脂質が少なく、たんぱく質に富むヘルシーな肉 p108
トリ肉は、日本で最もポピュラーな食肉です。
ウシやブタと異なり、肉の中に脂肪があまり入り込まないため、皮を取り除くと脂質が低くなり、ヘルシーな食肉として好まれています。
品種やエサにもよりますが、比較的あっさりとしていて、クセがないのもトリ肉の特徴で、幅広い料理に利用されます。
食感や含まれる栄養成分などは部位によって異なります。
最も大きな肉がとれるのはモモ肉です。
よく動かす部位なので肉が締まり、歯ごたえがあります。
栄養成分としては、ムネ肉などに比べて脂質、レチノール、ビタミンAなどを多く含みます。
市場での価格も高めです。
ムネ肉はモモ肉と双璧をなす大きな部位で、脂質が少なく、たんぱく質に富んでいます。
肉質がやわらかく淡白な味わいなので、どんな料理にも合わせやすいのが特徴です。
ササミはムネ肉の一部であり、翼を動かすときに使う筋肉です。
1羽のニワトリから2本しかとれない貴重な部位で、細長い形が笹の葉のように見えることからササミと呼ばれます。
肉はたんぱく質のかたまりで、脂質はムネ肉よりさらに少なく、サラダなどにも利用されます。
翼の部分は手羽といい、胴体との付け根部分を手羽元、翼の先を手羽先といいます。
手羽先の先端を落としたものを手羽中として扱うこともあります。
からあげによく使われる部位で、皮が多く脂質を多く含みます。
ニワトリは心臓(ハツ)や肝臓(レバー)、砂肝といった内臓も非常に美味で、肺や腸を除けば、ほとんどの部位を食べることができます。
さらに肉をとったあとの、ガラをじっくりと煮込んで取り出す濃厚なスープも見逃せません。
p108
肉用のニワトリはブロイラーで50~55日、地鶏などは100~150日くらいで出荷される
自家繁殖させれば、若鶏の肉を得ることもできる p110
自給的暮らしに役立てる生き物としてニワトリを飼う人にとっては、卵はもちろん肉もニワトリから得られる恵みです。
卵用鶏は産卵率が落ちたら引退です。
養鶏場では、だいたいふ化後2年くらいで淘汰しますが、経済性を考える必要のない庭先養鶏なら3~4年は卵を産ませてもいいでしょう。
ただし、それくらいの年になると、肉は非常に硬くなります。
ムネ肉やモモ肉などは大きなかたまりのまま料理すると噛むのも困難なので、なるべく細かく切るか、ひき肉にすると食べやすくなります。
おいしい肉を味わうなら、オスとメスを飼って、ヒナを自家繁殖するのもいい方法です。
ふ化したヒナの半分は確率的にオスですから、半年ほど育ててから締めれば、ほどよい歯ごたえとコクのあるとてもおいしい肉が得られるはずです。
ニワトリを締めるときは、事前にニワトリがすっぽり入る大きさの鍋に湯を沸かしておきます。
毛をむしる際、ニワトリを湯に浸し、毛穴を開くためです。
また、頭や羽毛、内臓などを処理する場所も考えておいてください。
締めるときはニワトリが暴れないようにしっかりと押さえ、動脈をカッターナイフでひと思いに切ります。
血を抜き、毛をむしるとニワトリは肉に変わります。
p118
もらったニワトリはボリスブラウンという種類で、産卵性が優れることから養鶏農家にも人気が高い。
ペットショップにもヒナがよく売っている。
ボリスブラウンは、昔から世の中にいた純血の種ではない。
採卵を目的に人の手によってつくられた品種だ。
専門的にはF1品種、実用鶏、コマーシャル鶏などといわれる。
特定の両親をかけあわせてつくられる雑種で、雑種強勢という現象により一代目は両親の優秀な部分を現すが、二代目以降、その性質は継続しない。
野菜なども同じで、トマトの「桃太郎」やトウモロコシの「ゴールドラッシュ」といった、スーパーに並んでいる野菜はたいていF1品種だ。
その種をまいても同じものは決してできない。
つまり、その育種法を握っている企業しかつくり出せないのだ。
日本の養鶏場のニワトリは、大半が海外で育種されたF1品種だ。
卵を直接輸入しているわけではないが、大元はそういうことになる。
加えて、飼料も輸入品頼りだ。
p119
ニワトリをもらうことになってから、多少でも飼い方を知っておいたほうがいいと思い「増補版 自然卵養鶏法」(中島 正著・農文協)を入手した。
初版が1980年と古く、内容も本格的な農家向けで少し重いところもあるけれど、知識を得るにはよい本だ。
平飼い養鶏のバイブルと言われているらしい。
p121
ニワトリを締めるのは初めてだったけれど、そのことには何の抵抗もなかった。
逆さ吊りの首がないニワトリが暴れたからといって戸惑いもしなかった。
むしろ、自分のできることがひとつ増えたことがうれしかった。
腹を開いたニワトリにキンカン(産卵前の卵黄)はなかった。
やはり産んでいなかったんだ。
初めてだったこともあり、肉をさばくのにたっぷり1時間以上かかった。
それから、手羽はから揚げ、モモはロースト、ムネは親子丼、肝は焼き鳥など、それぞれ調理し、その日の夕食はニワトリ尽くし。
いただきますの言葉にも心が込もる。
手始めに最もおいしそうなモモのローストに食らいつく。
「ん……」。
硬い。
ものすごく硬いのだ。
肉というよりゴムのようで、今まで食べていたトリ肉とはまったく別物。
あれはふ化後55日前後の若鶏だ。
この日締めたニワトリはざっと5~6歳。
肉は締まりに締まっている。
情けないが人の手によって、食べやすくつくられた食になれた私の歯と顎では太刀打ちできない。
結局、包丁で細かく切って口に放り込む。
たくましく野性的な歯ごたえに、ちょっと敗北感。
p123
ニワトリのエサは、近所のホームセンターで20kg1480円の配合飼料を買っている。
5羽で1日どんぶり一杯。
一袋で約1カ月もつ。
毎日卵3個として、1個約16円。
スーパーの卵より若干安いが、ニワトリを育てる手間を考えると、必ずしもそうとはいえない。
でも、お金の問題ではない。
自給するということに意味がある。
その卵がどうやってできているかが重要なのだ。
理想を言えばエサも自給するべきで、実際、米ぬかで自家配合の発酵飼料をつくっていたこともあるのだが、材料集めの手間と保存性の問題で長続きしなかった。
今は手軽な配合飼料に頼っている。
米ぬかや古米が手に入ると、それをやったりもする。
その日、産卵するニワトリは午前中に卵を産み終わるので、午後には小屋の扉を開けて庭に放す。
すると、あちらこちらの地面を足でひっかきまわし、自分たちでエサを見つけて食べる。
ニワトリたちのお気に入りの場所は、畑の残渣やキッチンから出る生ゴミを堆肥化するために積み上げている堆肥小屋。
小さな虫やミミズがわんさかいるし、発酵した有機物も好きらしい。
庭に隣接した畑はニワトリが入らないように柵で囲った。
これをしないと野菜が全滅する。
柵は高さが1m50cmもあれば、飛び越えることはあまりないが、隙間があるとそこをくぐって侵入する。
突貫工事で柵をつくったためずさんなところがあり、当初はしばしばニワトリの侵入を許してしまった。
気がつくと敵は荒らされ、植えたばかりのキャベツの苗が食べられていた。
棒を持って追い払うのだが、しばらくするとまた畑に侵入しているのだ。
雑草はその辺にいくらでも生えているのだが、ニワトリもおいしいものをよく知っている。
まき割りをしていると、虫を探してニワトリが寄ってくる
鳥インフルエンザが発生しやすい環境とは? p130
ニワトリの病気で広く知られているのは鳥インフルエンザだ。
冬にシベリアや朝鮮半島から飛来する渡り鳥によって持ち込まれるケースが多く、野鳥との接触やウイルスに感染した野鳥を食べた小動物などが媒介する。
ただし多くの場合、野鳥に感染した時点では無害。
ウイルスが高密度の養鶏場に侵入し、感染していく過程で致死率の高い高病原性鳥インフルエンザに変異するのだ。
庭先養鶏においてそれが怖いのは、発生した場合、周辺の養鶏場などに移動制限が講じられ、地域的、業界的に大きな被害をおよぼすおそれがあるからだ。
鳥インフルエンザの対策 p130
鳥インフルエンザの対策としては野鳥や小動物との接触をさけることだが、ウインドウレス鶏舎(窓のない閉鎖型鶏舎)でも発生しているように、ウイルスの侵入を完全に防ぐことは難しい。
むしろ、そういう密飼いの養鶏場で鳥インフルエンザは猛威を振るう。
過密なうえに飼育環境が悪いため、ニワトリの免疫力や抵抗力が落ちており、ウイルスが急激に広がってしまうのだ。
庭先養鶏でもネットを張るなどして野鳥や野生動物との接触を避けるなど対策は必要だが、風通しのいい運動できる環境で、健康的に育てることが何よりも大切である。
多元交配によってつくられる現代の実用的なニワトリたち p137
私たちが普段食べている卵や鶏肉は、実用鶏、またはコマーシャル鶏といわれるニワトリのものがほとんどです。
実用鶏とは、異なる品種を交配することにより、雑種である子が両親より優れた遺伝的能力を得る生き物の「雑種強勢」という現象を利用したもので、品種間、または系統間の多元交配によってつくられます。
一般に販売されている卵は白色、淡褐色、褐色の3タイプがありますが、白色の卵は白色レグホーンの系統間交配によって作出されたニワトリのもの、淡褐色卵は白色レグホーンとロード・アイランド・レッドや横斑プリマス・ロックによる交配、赤玉と呼ばれる褐色卵は白色レグホーンが関与せずにロード・アイランド・レッドや横斑プリマス・ロックがもとになった系統です。
ブロイラーと総称される肉用の若ドリも、すべて実用鶏です。
実用鶏はボリスブラウンやゴトウモミジなと名称はありますが、品種として固定されたものではありません。
ですから、その卵をふ化させても、親と同じ性質をもった子は産まれないのです。
選抜と交配を繰り返して行われる実用鶏の開発は、通常、企業秘密となっています。
古くから日本にいる在来種と広い意味で使われる地鶏 p140
地鶏という言葉は、地元のニワトリという意味で江戸時代から使われており、地名を冠した岐阜地鶏、土佐地鶏、会津地鶏など、地域品種の総称となっています。
また、明治時代に外国鶏が輸入されるようになってからは、日本の在来種をすべてまとめて地鶏と呼ぶようにもなりました。
さらに近年は、地域特産の実用鶏(日本鶏と西洋鶏の交配種など)にも地鶏の呼称が使われます。
やまがた地鶏やにいがた地鶏、甲州地どりなどです。
にいがた地鶏は、蜀鶏のオスに名古屋種のメスを交配してできたオスに、横斑プリマス・ロックのメスを交配したものです。
土佐ジローや東京しゃもなど、名称に地鶏とつかなくても一般には地鶏とされているニワトリもいます。
こうした実用鶏の地鶏については、日本農林規格で「在来種由来の血液百分率が50%以上のもので、出生証明ができ、かつ28日齢以降1㎡あたり10羽以下で平飼い飼育していること」と、その定義が定められています。
このように、地鶏という言葉は今では広い意味で使われています。
一方で、古くから日本で成立した品種をいう場合、在来種という言葉がよく使われます。
正確には明治時代までに国内で成立、または導入されて定着した品種のことで、日本農林規格には3種が定義されています。
その中には、小国や東天紅、チャポ、岐阜地鶏、ウコッケイなどの天然記念物に指定されているニワトリはもちろん、古くから日本に輸入されている外国鶏の横プリマス・ロックやロード・アイランド・レッドなども含まれています。
ちなみに比内鶏は在来種ですが、日本三大美味鶏として知られる比内地鶏は、比内鶏のオスとロード・アイランド・レッドのメスを交配したもので、広義の地鶏ではありますが、在来種ではありません。
同様にさつま地鶏も、在来種の薩摩鶏とは異なります。
ヤケイを家禽化し、8000年以上を人と共に暮らしてきたニワトリは、日本でも数多くの品種が生まれ、自給的暮らしの供としてはもちろん、その美しい姿や声もまた人を魅了してきました。
ニワトリほど多種多様に進化した家畜・家禽はいません。
そういう意味でもニワトリは、とても面白い生き物なのです。