「漫画村の真相 出過ぎた杭は打たれない」を 2,024 年 01 月 28 日に読んだ。
目次
メモ
p3
2021年6月2日、福岡地裁において、著作権法違反および組織犯罪処罰法違反の罪で実刑3年、罰金1000万円、追徴金6257万円の判決を言い渡され、
大分刑務所に収監されていたぼくに仮釈放が認められ、保護観察の身分ながら外の世界に出ることを許されたからです。
2019年7月7日、ニノイ・アキノ国際空港。
日本政府の要請を受けたフィリピン入国管理局によって身柄を拘束され、日本へ強制送還、そのまま機中で逮捕されました。
拘束された日から考えると、実に1214日ぶりのシャバの空気でした。
p22
情報の授業ではHTML言語(Webサイトを作成するための言語)を習いましたが、これも赤点で補習対象になりました。
補習に出てみたら赤点はぼく一人。
先生にマンツーマンで教えてもらい、HTMLの基礎を学んで、少し面白いなと思いました。
こんな言い方は申し訳ないですが、このとき先生が熱心にHTMLを教えてくれなければ、ぼくのその後は違ったものになっていて、当然、漫画村も作れなかったでしょう。
p25
ぼくの両親、特に母親にはぼくが怠惰に見えたようです。
実際怠惰だったのかもしれません。
母はぼくにアパートの一室を借りてくれて、その家賃も含めて10万円の仕送りを半年間、という約束をしてくれました。
p36
家を放り出されて4ヶ月め、つまりそのアフィリエイト収益が振り込まれたのは親からの「手切れ金」が尽きる6ヶ月めですが、この月の振込額が40万円。
資金が尽きる月で、翌月以降の保証も何もないのですが、ギリギリで収入としては黒字に転じたのです。
プログラミングを学ぶコツ p37
プログラミングを学ぶコツは？みたいなことをよく聞かれます。
どうやって技術を身につけたんですか、とか。
学ぶコツも何も、そうしないと食べていけなかっただけです。
ぼくの場合、追い詰められることが一番のコツ、ポイントでした。
やらなきゃ生きていけないし、飢え死にしたくないならやるしかない。
それも学校に通って体系的に身につけるとかお行儀の良い方法ではなくて、とにかく手を動かしながら調べて覚えるのです。
完成図を描いたら、逆算してそのための技術を調べて、学んで、意地でもやる。
学生時代は何ひとつ満足に続かなかったぼくですが、絶対にこの道でやってやる、と決めたら徹底的にやる。
道がなければ誰よりも手を動かしながら藪を切り拓く方法を研究して、やる。
逆境にあるときの自分の突進力に、この頃気づいたような気がします。
メイド喫茶の雇われ店長との出会い p65
そこでノウハウを持つ人を探していたところ、知り合いから紹介されたのが、漫画村事件までの付き合いになる伊達さん(一応仮名)でした。
伊達さんはメイド喫茶を5軒、雇われ店長として経営していたのですが、そのオーナーが脱税で捕まったので、その時点で無職というか、バイト生活になっていました。
伊達さんは、少なくともお店の経営にはノウハウがあったので、店の実務をやってほしい、とお願いしました。
求人をして、研修をしてという感じで、徐々にバーは立ち直ってゆき、バーとしてある程度の面目を保てるようにはなってきていました。
ぼくの本業はあくまでITです。
なので、このバーに関しては、ぼくがオーナー、伊達さんが実務担当という分業でした。
同時に、伊達さんはぼくがIT技術を持っていることを知っていたので、ぼくにIT分野での稼ぎ方を知りたい、何か稼ぐ方法はないか、と聞いてきました。
これ自体は普通のことです。
ぼくと知り合った人はだいたいこれを求めてきますしね。
その話を、サイト運営上知り合った、広告代理店勤務の森さん(仮名)にしたところ、「今、稼げるネットビジネス」みたいな感じで、いくつか候補を出してくれました。
その中に、漫画の閲覧サービス、つまり漫画村の原型があったわけです。
このいくつかの選択肢から漫画という道をチョイスしたのも伊達さんなのです。
「漫画村」開設当初は泣かず飛ばず p69
話を元に戻します。
漫画村のサイトは、2016年の1月に開設されました。
サイトの基本部分には、ハッキリ言って何ひとつ難解な技術は使っていません。
「WordPress(ワードプレス)」という本当に誰でも使える、Webサイトを作る人なら一度は触ったことがある、というぐらいの基本的なソフトを使って作りました。
最初期の漫画村は鳴かず飛ばずでした。
ようやく稼げるようになってきたのは、2017年に入ってからだと思います。
p70
そんな関係性で、藤坂からぼくにLINEが来ました。
今の仕事の給料が安いから、何か仕事はないか、というような話でした。
なので、ぼくは伊達さんと藤坂と一緒にご飯を食べに行き、伊達さんに藤坂を紹介し(伊達さんが藤坂とすでに知り合いだったとはまったく知らなかったので)、そこで漫画村の作業をするメンバーとして藤坂を雇いましょう、という話になりました。
これが2017年の3月のことです。
これが、「ぼく側から見た事実」です。
共犯メンバーと「村民の掟」 p73
まずぼくは江藤が関わっていることすら知りませんでした。
運営用の業務連絡LINE、ふざけた名前で「村民の掟」というのですが、このメンバーは、伊達さん、ぼく、そして藤坂の3人です。
江藤は入っていません。
つまり江藤が勝手に藤坂の作業を手伝っていたのでしょう。
漫画村のアクセス数が大爆発！ p76
メンバー紹介が長くなりました。
ともかく、漫画村は2017年の夏に爆上がりしました。
アクセス数はケタ違いに伸び、収益も月1千万円単位になり、超有名サイト、と言っていい部類に入っていました。
月1億6000万アクセスの怪物サイトに p78
漫画村は、その後2018年2月時点で、月に1億6000万のアクセスがあり、その90%が日本からのトラフィックで、
そのシェアは全Webサイトのうち2位である、と一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が発表したそうです(Yahoo！ニュースオリジナル特集「「漫画村」ブロッキング――誰が、どんな経緯で動いたのか」田中徹)。
セーシェルにある会社の香港口座とは p180
ここから銀行の口座がいろいろ出てくるので、少々その説明をしておきます。
ぼくは、セーシェルという国に会社を持っていて、その銀行口座は香港にあります。
何度も説明していますが、漫画村のオーナーは伊達さんです。
ですが、漫画村を運営するお金のやりとりを含めた取引にはぼくの会社法人と、その香港の口座を使っていた、ということです。
この口座のことはこのあと「セーシェルの会社の香港口座」と呼びます。
この「セーシェルの会社の香港口座」は、会社の口座ですから、つまり広告代理店からアフィリエイト報酬が振り込まれてくる口座です。
フィリピンで身柄を拘束されたときに一度だけ出てきた、香港のぼくの個人口座とは別です。
さらに言うと、この会社の香港口座には漫画村の収益だけではなく、他のサイトの収益も入っています。
そして著作権法のときと同じで、漫画村の収益のすべてが立件されたわけでもないのです。
捜査機関も把握していない。
検察が言う公訴事実3は、「犯罪収益等の財産」合計4845万0532円を、
広告代理店ウィング(仮名)に勤めている2人に、ウィングの口座など2つの口座から、2016(平成28)年の12月26日から2017(平成29)年9月1日までの約8ヶ月、計18回にわたって、「セーシェルの会社の香港口座」に送金させた。
これは星野が金を隠そうとしたのだ、というわけです。
p181
あえて言えば、ですよ。
セーシェルという国は「タックスヘイブン(租税回避地)」として知られています。
ですから、裁判所の事実認定には「同国には被告人星野の居住実態がなく、本件法人の営利活動も行われていない。
本件法人の代表者は記録上不明で、本件法人の連絡先として登録されていた電話番号も、被告人とは別人の電話番号である」なんてマヌケなことが書いてあります。
当たり前です。
そんなところに問い合わせてホイホイ記録が出てくるようだと、タックスヘイブンとして意味を成しません。
ただ、だからといって「セーシェルの会社の口座に金を移動したのは、隠そうとしたから」というのは極端過ぎます。
p191
たとえば、先述のセーシェルの会社についての認定事実のくだり。
「また、漫画村は、サイト上でその運営主体を明らかにしておらず、漫画村と本件法人のつながりは一見して明らかではない」とあります。
でも、セーシェルの会社が漫画村の運営をやっていることは、広告代理店の社員に事情聴取していて、ぼくも認めているのですから「明らか」ではないですか。
むしろこれほど明らかなことはない。
これのどこが「隠している」ことになるのでしょうか。
さらに、会社の香港口座について、「捜査機関は、平成30(2018)年10月に、国際刑事警察機構(ICPO)経由で、本件口座の取引明細等を明らかにすべく、中華人民共和国香港特別行政区に宛てて捜査共助を要請したが、回答は得られていない」などとしょうもない言い訳も添えてあります。
「セーシェルにある会社を調べても何もわからなかったし、銀行口座がある香港も何も教えてくれなかった。これは秘匿性が高い。隠しとるやろ」などと言われても、知ったことではないんですよね。
それを調べるのが仕事ですし、調べられなければ起訴できないはずですし、起訴したところでこのようなものが、裁判における証拠として成立するわけがない。
自分たちが仕事をしていないだけなのに、「それは星野が隠しているからだ」こんな理屈で有罪になるんですよ。
めちゃくちゃ怖くないですか。