「考具」を 2,025 年 01 月 07 日に読んだ。
目次
メモ
アイデアとは自由奔放な発想 p25
思いつき大歓迎。
実現度なんて後回し
アイデアってなんでしょう?
英語だとidea。
ドイツ語だとidee。
手元にある『ロングマンワードワイズ英英辞典』によると a plan, thought, or suggestion that you have となっています。
『旺文社英和中辞典』ですと①概念・観念:考え・思想:認識:知識、②意見、見解、信念、③計画、趣向、意図:思いつき、④漠然とした印象、直感、予感:想像、予想、⑤(哲学的な)概念・理念、⑥フレーズ、主題……とのことです。
どれも正解ですが、わたしが一番気に入っている、かつ仕事の実践上“使える”と思う定義は、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
というものです。
『アイデアのつくり方』(ジェームス・ウェブ・ヤング著)で提示された定義です。
そしてもう一冊、わたしがとっても大好きな本『アイデアのヒント』(ジャック・フォスター著)の中でもこの定義が採用されています。
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」――ゼロから生まれるアイデアは存在しないことを教えてくれます。
どれほど素晴らしいアイデアであっても、その発想の素になったアイデアがある。
わたしはこの考え方に出会ってから、とても気が楽になりました。
宙から取り出さなくても、十分に新しいアイデアは生まれる!
この定義のおかげで、もう一つ気が楽になる発見がありました。
それは「新しい」をどう理解するか、の問題。
「新しいアイデア」と言われると、全世界的に新しいアイデアでなくてはいけないような気がしませんでしたか?
ついついそんな気がして、誰も考えつかなかったようなことを探してしまうのですが、それはあまり意味がないのです。
わたしたちは今のところ大発明家、大科学者ではありません。
欲しいのは自分の仕事や生活で役に立つ実践的なアイデアや企画です。
つまり、自社にとって、あるいは自分の家族にとって新しければ、それは「新しい」のです。
違いますか?
わたし自身は、この新しさの捉え方に納得がいってから、ものすごく考えることが楽になりました。
例えば書店業界に、スーパーマーケット業界のノウハウを持ち込んだら、それは相当に「新しい」のです。
そしてビジネスを好転させるだけのパワーを持っています。
これで十分。
他社・他業界にちょっとだけ目を向けてみれば、自社だけのオリジナルの企画を生み出すことができます。
少しだけ新しくても、「新しい」のです。
そう考えたら、あたり一面がアイデアの宝庫に見えてきます。
こんな「新しい」の捉え方、いかがでしょうか?
わたしの中で、アイデアの定義がもう一つあります。
それは「アイデアは企画の素である」ということです。
アイデア=企画、ではないと考えています。
ある一つのアイデアがそのまま仕事上でも通用するということは非常に稀です。
他のアイデアとくっついたり、種々の事情で変更があったりして、最終形にまとまっていくものです。
アイデアそのものが既存の要素の組み合わせだとすれば、企画はさらにアイデア同士の四則演算で出来上がっていくものです。
したがってアイデアに完璧さは不要であると思います。
どれもこれもまた、アイデア。
奇抜なアイデアもOK、昔見たようなアイデアもOK。
とにかくいろいろあっていいのです。
ここ、一般的なビジネスマンと違うところみたいです。
どうやら普通の感覚では、この時点でカッコいいアイデアでないといけないみたいな不文律の常識がある気がします。
それ、取っ払ってください!
広告会社のアイデア出しの打ち合わせって、すごく下らない話が多いんです。
または、「すいません、それを実現するには1兆円ぐらい必要ですけど?」レベルの“アイデア”がたくさん出てきます。
この本の読者であれば「量が質を生む」ことはご存じでしょう。
質を生むために必要な量って、どのくらいでしょう?
失礼ですが、5つぐらいで誤魔化していませんか?
もっともっともっと、必要なんです。
そして、量を出すためには下らないものとか、当たり前すぎるものも当然含まれます。
しかし、あなたにとっては当たり前でも、他の人には新しいかもしれませんよ?
それから、誰しもいきなり良いアイデアなんて浮かんできません。
量が必要と言われるにはそれなりの真理があります。
さらに、アイデアは多くの情報量で構成されている必要はありません。
1行でいいんです。
恥ずかしながら、わたしが打ち合わせで出すアイデアメモでも下らないもの、たくさんあります。
つまんないのも相当数あります。
でもこの時点ではそれでよいのだ、とあなたのパラダイムを変えてください。
「そうはいっても、下らないメモを部長には出せないよ」。
そんな声が聞こえてきそうです。
分かります!
弊社もそうです。
打ち合わせの席上、50枚はメモ紙を持ってきているのに、チラリチラリと1枚ずつ披露して、結局20枚も見せない人もいます。
確かにあまりにつまらないアイデアを出すのは自尊心が許さないですよね。
でも、あなたとその彼との違いは何でしょう?
彼は見せる見せないはともかく、50枚書いてます。
見えないから中身は分からないですが、とにかく50枚は書いた。
この事実がとっても重要だと知ってください。
おそらく今までは「こりゃないや」と思ったらそのまま頭の中で消滅させてました……ね。
それ、今日から禁止です。
頭の中で消していいのはエキスパートのみの特権だと思ってください。
下らないことでも何でも、全部紙に書いてみてください。
それは全部、「あなたが考えたアイデア」なのです。
あなたの知的作業の成果です。
実現度?
そんなの後回し!
100兆円かかるとか、自社が10倍の規模にならないとできないとか、競合の状態を無視しているとか、この時点では、とりあえず無視してください。
まだ、夢物語で構いませんから。
20枚から30枚は書いてみてください。
「おっ、これイケそうじゃん!」から「紙の無駄かも……」と思えるものまで、あなただけが作れる玉石混淆なアイデアの海を作ってみてください。
アイデアをフィージビリティスタディしたもの、それが企画 p31
アイデアはいわば食材。
企画という名の料理にする、コースにする
これはいいぞ、と判断できるアイデアに実現性を持たせると「企画」になります。
企画とは、予算と準備と時間さえあれば、実施できる目処が立つ計画のことだ、とわたしは考えています。
つまり、実施不可能なものや、裏の取れそうにないものは、まだ“なんちゃって企画”。
これを本気で得意先や上へ提案すると、“優しい微笑み”で迎えられるか、「馬鹿!」と言われて終わるか、です。
アイデアのフィージビリティスタディ(実現可能性を確認すること、いわゆる裏取り)は、誰が読んでも見ても理解できるようになっているか、を詰めていく作業です。
広告の世界では「詰める」という表現をよく使います。
それだけ、ボンヤリとしたアイデアから仕事が始まっていることの証左なのでしょうか。
アイデアの時点ではたった1行でもよかったのですが、企画レベルではそうもいきません。
内容としてもいくつかのアイデアの複合体となるでしょう。
場合にもよるのですが、この時点では本当に細かいところまでを詰め切っている必要はまだないのではないでしょうか。
この企画ならできるな、という実感が持てるところまで詰められればいい、と思います。
[WHAT]と[HOW]とがバランスよく含まれている状態です。
詳細まで詰め切るのは実際に実施過程に入ってから。
広告の世界では「絵コンテ」、あなたなら「企画書」です。
「マニュアル」はその次の段階。
ただし、その「企画書」にはあなたの新しいアイデアが盛り込まれていないと「新しく」ないんですね。
その盛られ方、はちょっとしたレストランを想像していただくのがわかりやすいと思います。
一つひとつのアイデアは、いわば食材。
それが一皿の料理になるには、下ごしらえがあり、煮たり焼いたりがあり、他の食材とのハーモニーがあって完成します。
さらに大型の企画ともなれば、コース料理。
一品料理の集合です。
もちろん料理それぞれの取り合わせもあります。
食べる人にとって、一番おいしそうに見えるには……?
一流のシェフならきっとそこまで考えているはずです。
企画も同じ。
ましてやコース料理とは比べものにならないくらいの金額がかかるのです。
企画を立てるアイデアマンとしては、シェフ以上の気配りと慎重さ、そして大胆さとを持って課題に臨みたい、そう考えてもおかしくないですよね?
この比喩にはもう一つの意味があります。
生まれて初めての場合は別としても、どんなコースを頼んでも一つや二つは食べたことがある、あるいは名前だけでも知っている料理があるでしょう?
前菜からデザートまで見たことのないお皿ばかりである必要もない、と思いませんか?
一つの企画が、新しいアイデアばかりで構成されている必要もない、ってことです。
こう考えると、またまた気分が楽になります。
企画の核となるアイテムがあなたにとって、御社にとって新しく、効果があるのであれば、それで十分じゃないのか、といつも思っています。
アイデアの定義「既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」を思い出してみてください。
とはいえ、いきなり企画は生まれない、ことを確認してください。
有象無象のアイデアの残骸を乗り越えて、初めて企画が誕生するのです。
アイデア出しのステップをいい加減にしてしまうと、やっぱりいい企画にはなりにくい。
選び抜かれたアイデアが中心の核になっていると企画が魅力的になってきます。
上司に「企画に深さがない」などと言われてしまうのは、こちらの準備不足が相手に見えてしまうからなんですね。
人間はなぜか評価する力だけは備わっていますから、何も考えてなさそうな人でもあなたの企画の良し悪しを、悔しいかな結構的確に指摘します。
「分かってねえな!」と思うのですが、そのオヤジたちを乗り越えていくのもまた、アイデアマンたちの喜びでもあります。
……ちょっとMですか?
情報が入る→アイデアを拡げる→企画にまとめる p35
拡げて絞る。
これが頭の動き方の基本原則
何かを考えるときには、まず既存のアイデアが自分の頭に入ってきて、それが組み合わさって「新しい」アイデアになり、そして企画という実現可能なカタチになる。
この流れで知的作業が進んでいくようです。
既存のアイデア、は以前から知っていたこともあるでしょうし、いま抱えている問題意識が気づかせたものかもしれません。
朝から晩まで、わたしたちはいろんな物事を見聞きしているわけですが、その中でこれから必要になりそうな既存のアイデアが頭の中にストックされていきます。
新しいアイデアが既存のアイデアの組み合わせだとしたら、既存のアイデアはたくさん知っていた方が有利です。
チャンスを逃さず、吸収しまくりましょう。
その頭の中にあるストックが結びついて「新しい」アイデアがいくつも出てくる。
組み合わせる、といっても単純な足し算だけではなくて引き算や掛け算など、組み合わせ方はいろいろあるでしょう。
キチンとストックができていれば出てくるアイデアは一つでは終わりません。
ここは拡げまくるところです。
アイデアの出し過ぎで怒られることはありません!
余ったっていいじゃないですか。
目前の課題には合わなくても、他の問題にはジャストフィットするかもしれないですよ。
だいたい、わたしたちが抱えている悩みって一つだけじゃないですよね、普通。
せっかく浮かんできたアイデアは、自分の中でガンガン使い回してしまいましょう。
そして少し冷静になって、使える/使えないを判断してアイデアを取捨選択していきます。
新しいアイデアに、既存のアイデアも絡ませながら、実現度の高い、越えられそうな高さのハードルに整えていきます。
このステップで、拡げまくったアイデアを達成したい課題解決に向けて収束させていきます。
あなたが考えた、非常に強力で魅力的な企画へ。
アイデアや企画につながる頭の使い方は、拡げて絞って、また拡げて絞る。
こんな伸縮活動になってきます。
そして拡げるときには奔放に。
壁があっても無視して拡げる。
絞るときはシンプルに。
いい企画はシンプルです。
やりたいから、では予算は下りません。
分かりやすくて、狙いは明確、そしてアイデアがある企画。
必然性と面白さとを両立させながら絞る感じです。
絞る=つまらなくする、と見るのは狭い見方。
面白い、新しいアイデアであれば、絞ってもその面白さはちゃんと生き残りますから。
特に注意しておきたいのは、拡げるとき。
自分では拡げているつもりでも、端から見るとそうでもなかったりするんです。
体育の授業やダンスのレッスンを思い出しましょう。
ええっ、こんなにまでやる?と思うくらい、恥ずかしいくらいでちょうどいい具合です、きっと。
続いて確認しておきたいのが、頭の動き方。
これをちょっとだけでも知っておけば、これから毎日行う知的作業がスムースになります。
どうやら頭というのは、拡げてまとめて、の動き方をするときには、放射線状に働くらしいのです。
あるいはあちらこちらに飛びながら進んでいくらしい。
思い当たりませんか?
今日の打ち合わせのことを考えていたのに、なぜか今朝見た折り込みチラシが目に浮かぶ……。
かといって、デートのことを忘れてしまったわけではなくて、すぐまた戻ってくるあの感じです。
それから関係性のない、いくつかの問題の答えが立て続けに出てくることってありませんでしたか?
わたしたちが普段行っている知的活動の方法は、頭の働き方とズレている、という人もいます。
普段の知的活動の基本となっているルール、それは直線的であることです。
例えばワープロ。
横書きだとすれば、一番左上から書き始めて右隅へ。
また左に戻って……とページの右下へ向かって一本の線として移動していく書き方がルールです。
文章として最後にまとめ上げるには一直線でいいのですが、最初にアイデアを爆発させるときには、この書き方は大きな壁になるんです。
アイデアや企画のためのルールは、ちょっと違います。
今までの直線的なやり方を、一度でいいですから変えてみてください。
p42
最初にあなたに使いこなして欲しい「考具」は、情報を自分の頭に呼び込むための道具です。
新聞をよく読むとか人気のTV番組はすかさずチェックする、その延長線上にある道具です。
五感を通じて飛び込んでくる情報は、
①今すぐ、のお役立ち情報
②ちょっとは関係ありそうな周辺情報
③よく分からないけど、なぜか気になった何となく情報
ぐらいに分けられます。
どれも大事ですね。
でも仕事は待ってはくれないし、急ぎの案件も多いですから、①今すぐ情報の割合が多い方がいいでしょうか?
あなたが必要としているのがどんな情報であれ、最初にやっておくべき作業があります。
情報がドンドン集まってくるためのコツです。
今あなたが集めたい情報とは何でしょうか?
何を解決しなければいけないのでしょうか?
まずはそれを頭にしっかりと刻んでください。
声に出してブツブツつぶやいてみたり、紙の切れっ端にメモってみるのもお薦めです。
恥ずかしいし面倒くさい!
んですけど、やってみるとこれが違うんです。
理屈は分かりませんけど。
騙されたと思ってやってみてください。
これで準備完了。
情報が集まる集まる……「考具」を使ってみるとしましょう。
p90
イベント制作の世界では「仕込みが8割、現場が2割」なんて言ったりします。
現場でいくら奮闘しても、それまでに80%が決まってしまっていれば、リカバーするに常も限界があります。
常日頃の“仕入れ”の重要さを改めて確認してください。
p97
私見ですが、世の中の常識的には、ものを書くことは崇高なこと、とみなす雰囲気があるような気がします。
いきなり清書する感覚があるような。
わたし自身も広告会社に入って仕事を始めるまではそんな先入観がありました。
両親から、また学校でも紙を無駄にしてはいけないと教えられた気もします。
でもアイデアを出す上では、それがとても邪魔になってしまいます。
意識改革してください。
紙はじゃんじゃん使ってください!
環境のことを考えるなら、コピーの反故紙をどっさり使いましょう。
わたしもそうしています。
という具合でラフなアイデアスケッチを書いてみます。
ここで再度注意!
最初から珠玉のアイデアは出てきません。
書き始めはありがちだったり、すっげーつまんねー、と人様には見せられないアイデアでしょう。
わたしの場合も最初の数枚はつまんないですね、明らかに。
だんだん調子が出てきますから大丈夫です。
そのまま続けてください。
基本的には1枚1案で、書いていきます。
ケースバイケースでしょうが、最低10枚、行ければ300枚は書いてみたいですね。
30枚といっても1枚1行なら30行。
意外に行けます。
大半の方はそんなに書いたこと自体がないかもしれないですね。
量が質を生む、というレベルに行くにはこのくらいは必須でしょう。
コピーライターの人たちはそれこそ100案ぐらいは常に考えています。
負けていられません。
だんだんノッてくると、書いている途中で「ああ、こんなのもあるな」とさらに思いつくはずです。
アタマって勢いがつくとさらに激しく動きます。
詳しく書くのは後回しにして、ちょいメモでもいいです。
こんなときはスピード重視で。
それから「これはないだろうなあ」と思うアイデアも当然出てきます。
スケールが壮大すぎるとか、すでに他社がやっているに違いないとか。
全部とりあえず書いておいてください。
この時点で一人勝手に諦めるのは禁止です。
ちょっとだけ違うのも、一つの立派なアイデアです。
堂々と書いてください。
キャッチコピーなんかそうですよね。
「○○は〜」と「○○が〜」とは「は」と「が」との違いだけですが、別のアイデアである、とみなしてください。
繰り返します。
似たような案を、似ているからといって一緒くたにしてしまったり、頭の中で勝手にまとめてしまうこともよくありがちですが、それはもったいない。
展開するときは拡げて拡げて拡げるのが大事。
ちょっとの違いを大切にしてやってください。
兄弟みたいなものでも別人格のアイデアですよ。
考具 その8 ポストイット p101
目の前に威勢よく拡げる。
記憶を頭の外に引きずり出すメモ用紙
みなさんおなじみのポストイット。
どんな風にお使いですか?
アイデアを書くぞと机の前に向かった時点では、それなりのヒントになる情報がすでにあなたの頭の中に取り込まれているはずですよね。
それをポストイットにメモってみてください。
原則は1枚1ネタ。
しおりに使うような小さいやつはもちろん不向きです。
正方形などの大きめサイズがいいですね。
各色ありますから、お好みで。
きちんとした方だと「○○情報は黄色、××情報は緑色」なんて厳密にやるかもしれませんが、わたしはズボラなので、すごく適当にやってます。
大きさも色も、バラバラです。
どんなのがあったっけなあ……とブツブツつぶやきながら書いてみてください。
ポストイットそのものを会議に提出するわけではないですから、汚い書き方でも全然問題ありません。
文字である必要もありません。
イラストもどきでも。
ここで出てくるメモの中身は、大きく分けて2種類。
最初は、課題そのものと直結したメモが出てくるかもしれません。
それと普段から自分の中に貯め込んでおいたアイデアのヒント。
それがその後どうなるこうなるは、とりあえず無視!
思い浮かんだものをそのまま書いてください。
滑りの悪い筆記具を使っていると数多く書くこと自体が苦痛になってきますので、愛用のペンを起用して。
書き入れたポストイットは、机に貼ってください。
あるいは壁でもいいですね。
ポストイットの真骨頂。
思いついたことを書くだけなら別に単なるメモ紙でもいいんですが、貼ることができません。
10枚?
20枚?
いろんなヒントがアトランダムに並びます。
ちなみに、わたしの場合は並べ方、貼り方も直感的に、このへんかなあ……と思うところに貼ってます。
貼ったらちょっとだけ眺めます。
何枚かが視界に入るようにして。
で、どうするか。
……そのままです。
というのは、貼っている最中に「これとこれでこんなことにならないかなあ」とアイデアが突如浮かんでくるからです。
そうしたらすぐ、紙に書いてください。
とりあえず手元のポストイットでもいいですよ。
アイデアのネタとアイデアは別物です。
ここは強調しておきたいのですが、アイデアを考えることに、正しい順番はないと思うんです。
思いつくときは突然やってくる。
おそらくポストイットに書くことがそのための滑走路になっているんですね。
飛べるようになったらすぐ飛んでください!
途中でストップして、アイデア書きに入る。
すると、そのままアイデアがポンポン出てくる人が多いのではないでしょうか。
わたしはそうです。
だから、やり始めたポストイットは、いつも途中で尻切れトンボになります。
頭の中のネタ素を完全に出し切ることは、まずないです。
まじめな方ほど、ポストイットを全部書いてから次のステップへ、と思われるのかな?
途中で止めてしまってくださいね。
目的はアイデアの方。
書いたポストイットはすぐに捨てちゃいますから。
どうやらわたしたちがこれまで受けてきた教育はかなり一直線的なパラダイムに支配されているようです。
順番をしっかり守るパターン。
しかし「考える」という知的作業は、その反対。
行きつ戻りつすることが頻繁に起こります。
行きつ戻りつの試行錯誤がない企画もまたパワーがないのです。
迷う=複数の選択肢の可能性に自分を置いてみることは大事です。
創造性がない、と言われる背景には、こうした選択肢があまりに少ない環境で結論を出してきたことにあるとも感じます。
情報を整理しているときに、突然アイデアが浮かんできます。
あるいは、Aの課題をどうしようと悩んでいたときに、何の前触れもなくBの課題の答えを思いつきます。
そうした頭の動き方に慣れてください。
受け入れてください。
ちょっとだけ時間を割いて、浮かんできたアイデアをメモっておくことです。
一言でもメモる。
そして元に戻る。
こうしたアトランダムな頭の動き方を知っていれば、それに備えた準備をすることができるようになるわけです。
この本も「本」という体裁をとっている関係上、直線的に内容が続いていくのですが、原稿を書く順番は後先バラバラでした。
アイデア・企画を考えていく現実の過程は順序通りには事が運ばないようです。
広告会社にいると、常時複数の課題、それも全く別業種・レベル違いの課題を抱えています。
A社記者会見での社長原稿の骨子と、B社イベントで使用する映像の台本、それにC社新商品のプロモーションアイデア……。
仕事だけではなく、自分自身の生活上のこともありますね。
今度の連休どうしようとか。
いろんな問題・課題が同居しているこうした入り組んだ状況にも、あえて順番をつけないでください。
それぞれに応じて締め切りはありますが、気持ちはアトランダム。
街を歩いていて見つけたアイデアのヒントが、どの課題とぶつかるか分かりません。
頭のパソコンでは、いつも複数のアプリケーションを開いているイメージです。
話がそれました。
もう一度繰り返しますと、ポストイットにネタ素を書き出している最中にいいことを思いついたら即、そっちに取りかかってください。
そのままそっちに行きっぱなしで構いませんから。
特にアイデア出しの時点では、数が勝負。
アイデアって不思議なもので、出れば出るほど、またさらに出ます。
どうぞ遠慮せずに出しちゃってください。
こうやってポストイットを使うと、ものすごく大量に使うことになります。
残念ながらここでケチるとダメみたい。
ある程度広いテーブルや壁も欲しくなります。
ひろーい会議室や個人スペースがある会社がうらやましくなる瞬間!
それでもできる範囲内での広さを確保して、ポストイットやネタ素メモを拡げることは、忘れないでください。
考具 その9 マンダラート p107
シンプルなフォーマットから不思議なほどアイデアが出てくる
アイデアを出すときには、数を限定せずいくつでも出すこと、とこれまで繰り返してきました。
一直線ではなく四方八方、放射状に展開していくイメージです。
そうした頭の動き方をトレースしたかのような考具があります。
「Mandal-Art」(マンダラート)。
頭の中にある情報やアイデアのヒントをグイグイ引っ張り出してくれます。
わたしが数年にわたり愛用しているフォーマットです。
紙の手帖、パソコン版、パーム版と揃っていまして、わたしは手帖とマッキントッシュ版をメインに使っています。
まずは次のページの図を見てください。
大きな正方形の中が区切られて9つのセルになっていてます。
これをマンダラと呼ぶのですが、このシンプルな形の上で、あなたの脳が縦横無尽に活躍するから不思議です。
真ん中にテーマを書きます。
自分への問いかけです。
お試しでやってみましょうか。
周りにマグカップはありませんか?
マグカップの新商品企画についてのアイデアを出さなければいけないとしましょう。
マグカップ?
難問です。
マンダラの中心のセルに「マグカップ?」と書いてみます。
そして、その問いかけに対する答え、この場合なら新商品企画の手がかりになりそうなことを周辺のセルに埋めていきます。
「取っ手」
「カラーリングの多さ」
「飲み口の薄さ」
「かわいいイラスト」……といった具合。
マンダラの周辺セルは8つあります。
なんとか、ここを全部埋めてみてください。
いま4つですね。
あと4つ。
「価格」
「頑丈さ」
あと2つ。
ちょっと疑問だけど「洗いやすさ」。
あと1つ。
とりあえず「重さ」!
ちょっと苦しくなっても、とにかく8つ埋めてください。
埋まりましたか?
全部埋めることで、商品コンセプト=切り口が8つも登場したことになりますよ。
これが横罫のノートだったら、8つも出てきたでしょうか?
8つのセルを埋めるという少しばかりの強制力が働くと、頭が必死になって回転を始めるのです。
ここで、8つのうちどの切り口が有望なのかを選択することもできますが、今はさらに商品のアイデアを探しに行きます。
書いたばかりのマンダラの周辺セル、その一つひとつをさらに展開させます。
次のマンダラの真ん中には「取っ手?」と書きます。
このコンセプトを新商品に発展させるには、何が必要でしょうか?
この問いに対して周辺の8つのセルを再び埋めていきます。
「指が2本入る」
「人間工学」
「子どもでも持ちやすい」
「日本調のデザイン」
「滑らない」などなど。
もし事前に「取材」ができていたらもっと良い要素が見つかるかもしれません。
取っ手といえば、この前雑誌で見たユニバーサルデザインも関係あるかな?と思い出して、「ユニバーサルD」と埋める。
ユニバーサルデザインで持ちやすい……右手でも左手でも持ちやすいか?と思いついて、「RもLもOK」と書き込む。
そういえばこの前入ったカフェでカフェオレを頼んだら取っ手のない大きなボウルみたいなのが出てきたな。
「フランスって取っ手のないカップで飲むんです」とか店員が言ってたけどホントかいな?
で、「取っ手ナシ」。
これで8つ。
すでに取っ手だけでも8つのバリエーションがある商品コンセプトが生まれています。
この後は「取っ手 その2」に行ってもよいですし、お次のコンセプト案「カラーリング」を展開させても。
8つの切り口があって、それぞれをまた8つ展開できたら8×8=64の新商品企画につながる要素が生まれたことになります。
単純計算ですが、これらの要素の数学上の組み合わせの可能性は億どころか兆の単位でも収まりません!
とんでもなく効率的に、新しいアイデアを数多く作ることができるのです。
もちろん、本当の新商品としての企画になるまでにはコンセプトの検討と選択、そして実現度のチェックが必要ですが、その前提となる数多くの選択肢をいとも簡単に生み出すことができる考具がこのマンダラート。
雑誌で見たユニバーサルデザインの話や、たまたま飲んだカフェオレの体験もヒントになってくれました。
おそらくマグカップについて考えることがなければ、あの取っ手のないボウルのことは思い出さなかったでしょう。
普段の生活で積み重なった記憶を引っ張り出し、組み合わせるだけでも、新しいアイデアがたちどころに誕生するのです。
当然ながらマグカップについての深い知識があれば、またマグカップが使われるときのシーンを思い浮かべられたら、さらに拡がるはずです。
さらに男性と女性とでは出てくる言葉が違うはずですし、気がつく点、改良して欲しい点も違うはずです。
2人で持ち寄ったら、収拾がつかないほどのアイデア数になりそうですね。
自分1人だとしても七色いんこ(考具その4)してください。
指がもっと小さかったら、もっとごつかったら…どんなマグカップが売れるんでしょうね?
必要なのは、8本の線が引いてあるだけの紙。
この不思議なマンダラートはデザイナーの今泉浩晃さんが開発された手法です。
p122
それにしても、なぜこんなにたくさんのアイデアが出てくることが可能になるのでしょうか?
アイデアの素になる要素が一つのテーブルに載っかっているからです。
いちいち思い出す必要なくヒントが目の前に並んでいると、アイデアが生まれやすいんですね。
ポストイットをたくさん貼っているのと同じです。
最初に頭の中にあった情報やヒントを目に見える形に出しておくことによって、アイデアが出やすい、つまり要素を組み合わせやすい環境を作ってあげる。
加えて、マンダラが放射状に働く頭の動きに忠実な形をしていることも要因の一つ。
デザインのチカラ、を感じずにはいられません。
これがアイデアを拡げて拡げて拡げるマンダラートの使い方です。
すでに頭の中にある情報=既存の要素をうまく引き出すことができれば、新しいアイデアを生み出すことは簡単になるのだということがお分かりいただけたでしょうか?
そのアイデアが面白いかどうかは組み合わせの妙が問われることになります。
しかし、組み合わせの方法よりは、組み合わせる要素をどれだけ多彩に引き出せるのか、の方が重要なのかもしれません。
考具 その13 オズボーンのチェックリスト p147
行き詰まったらこれ。
迷路脱出のための処方箋
今まで登場した考具たちは、あなたの頭の中にある情報を効率的に、知らないうちに引き出すためのものだったり、組み合わせやすくするために目の前で見える形にしたり、という機能を核としていました。
組み合わせ方は、あなた次第。
どんな組み合わせも自由です。
しかし、行き詰まるときもあります。
詰まってしまうパターンは主に2つ。
組み合わせる要素そのものが出てこないとき。
そして組み合わせ方が分からなくなってしまうとき。
要素出し、については連想ゲームやマンダラート、マインドマップ……いろいろご紹介しました。
アイデアのヒント・要素は作り出すのではなく、探す・見つけるという捉え方の方が正解です。
そして組み合わせ方。
調子のいいときは理屈なくアイデアがポンポン出てくるのですが、途中で止まってしまうと、どうにも前に進まないこともあります。
頭と気持ちをポンポン状態に戻すのに一番効果的な薬は、アイデアが出ること。
アイデアがアイデアを呼びます。
オズボーンのチェックリストは、そんなときに使ってください。
アイデアを生み出すための要素の組み合わせ方、その基本パターンが網羅されています。
このチェックリストを抜き書きしたメモカードを1枚、手帳か財布、PDAに忍ばせておくといざというとき、光り輝いて見えます。
オズボーンのチェックリストは全部で9カ条。
◆転用したら? 現在のままでの新しい使い道は?
◆応用したら? 似たものはないか?真似はできないか?
◆変更したら? 意味、色、動きや臭い、形を変えたらどうなる?
◆拡大したら? 大きくする、長くする、頻度を増やす、時間を延ばすとどうなる?
◆縮小したら? 小さくする、短くする、軽くする、圧縮する、短時間にするとどうなる?
◆代用したら? 代わりになる人や物は?材料、場所などを代えられないか?
◆置換したら? 入れ替えたら、順番を変えたらどうなる?
◆逆転したら? 逆さまにしたら?上下左右・役割を反対にしたら?
◆結合したら? 合体、混ぜる、合わせたらどうなる?
アイデアを生み出すための要素の組み合わせ方に関して、基本パターンを問いかける形でまとめています。
問いかけの形になっているところがいいですね。
おしゃべり感覚で試してみましょう。
それぞれの問いかけへの答えをビジュアルで想像してみてください。
手元に紙とペンがあれば、ぜひ落書きしてください。
確かに新しい何かがそこに生まれましたね?
それ、メモっておいてください。
転用したら……?
拡大すると……?
素材を変えてみると……?
気がついたら興が乗ってきますよ。
教科書的に全部の項目に答える必要はこれまで同様もちろんありません。
ダメそうだったらパスして次の問いに行ってください。
どれから始めるか、も自由自在。
順番はありません。
あるいは今まで気がつかなかった方向性を求めて、あえてすべての問いに答えてみるのも面白いですね。
自分の頭に隠れていた新しいアイデアを発見してください。
繰り返すうちに、組み合わせるパターンをいつの間にか覚えます。
ある情報やアイデアのヒントを、ああでもないこうでもないとやりくりして考えられるようになります。
一つの事象をいろんな角度から見ることができるようになります。
同じ情報源からアイデアが生まれる可能性を何倍にでもできるわけですから、これは強力な武器。
正確に暗記して上から順番に厳格にやるかどうかは、個人のお好み。
わたし自身は困ったときの辞書代わりに使っています。
すでにお分かりのように、アイデアの作り方、その手法はいたってシンプルなんです。
今も昔も変わらない。
違うのはその方程式に入れるデータ。
データは時代や環境に応じていつも新しく変わっていきます。
だからこそアイデアが尽きる、ということはありえません。
いま世の中にあるものが絶対的な正解でないことも明らかです。
現実の仕事は、あなたのアイデアをいつも待っています。
ニュートンとかエジソンのような、社会をまるっきり変えてしまうようなアイデアには程遠くてもいいじゃないですか。
まずは身近な生活や日常的な業務を変えるアイデアを。
そしていつしか、会社全体や世の中に影響を与えるアイデアを生み出せばいいんです!
考具 その14 ブレーンストーミング p153
他人のアイデアにただ乗り。
気がつきもしなかった視点をもらう
さて、ここまでは一人でアイデアを生み出すための考具を取り上げてきましたが、グループで使う考具も大事です。
三人寄れば文殊の知恵、一人ですらあれ程のアイデアを生み出せるのですから、そんなアイデアマンが集まれば、すごいことになりそうです。
何人かでアイデアをたくさん生むための方法としてよく取り上げられるのがブレーンストーミング。
広告業界ではよく「ブレスト」と略して呼ばれています。
ブレーンストーミングには4つのルールがあります。
それは、
ルール1 他人の発言を批判しない
ルール2 自由奔放な発言を歓迎する。夢物語でもよい
ルール3 質より量を求める
ルール4 他人のアイデアに便乗する
IDEOというアメリカのインダストリアルデザイン会社では、ブレーンストーミングをよりよくするための、7つの秘訣をうたっています。
①焦点を明確にする
②遊び心のあるルール
③アイデアを数える
④力を蓄積し、ジャンプする
⑤場所は記憶を呼び覚ます
⑥精神の筋肉をストレッチする
⑦身体を使う
詳細は『発想する会社!』(トム・ケリー&ジョナサン・リットマン著)をご覧いただきたいのですが、現実にはブレーンストーミングを運営することはかなりの困難。
その原因はルール1の原則を守れないことにあります。
ついつい、他の参加者の発言やアイデアに「ダメ出し」してしまう人が多いんですね。
参加メンバーに上下関係があったりすると、特にその傾向が強くなってしまいます。
この問題を解消するためには、ルール4、そしてルール3の二つを特に意識します。
まず他人の発言の尻馬に乗っかること。
どっちのアイデアがいいかどうかの視点で見るのではなく、そのアイデアをジャンプ台にして自分がアイデアをどれだけ付け加えられるか、と考えてください。
同じ課題について考えているはずなのに、自分には全く思いもつかなかったアイデアがあります。
物事の見方があります。
その違いがまた面白いところですね。
ブレーンストーミングはそうした全く別の視点を“盗む”いいチャンスです。
ブレストに出てきたアイデアから自分の知らなかった、あるいは興味を持てなかったジャンルを知ってください。
さらにあなたの得意ジャンルが拡がっていきます。
アイデアマンにはこのような予期せぬ出会いも大切です。
わたしたちは、放っておくと自分の好きな方、好きな方に流されていきます。
自分に興味のないことにも目を向けよう!
なんて言われても……できないんですねえ。
暇がない訳でもないんですが、できない。
なので半ば強制的な出会いが必要です。
ブレストはそんな出会いの場だと思ってください。
ブレストを成功に導くためのコツをもう一つ。
競争感覚を忘れないでください。
ブレストは数の勝負です。
出席したメンバーの中で一番数多くアイデアを出した人、になることに燃えてください。
アイデア会議に批評家は必要ありません。
自分がリードする意気込みで。
ブレストを活性化させるのは、その場でどれだけ新しいアイデアが生まれてくるかにかかっています。
ポロリポロリと出てくると、急に場が沸いてきます。
そうなったらしめたもの。
一人で悩んでいるよりも面白いアイデアが誕生します。
そのキッカケはあなたが作ってあげませんか?
そのための“秘策”は考具を使えば、十分あるはずですから。
ブレーンストーミングは、自分一人だけでは到達することのできないアイデアの宝庫です。
ただし日本の企業社会においては批評会議になってしまうリスクがあります。
その壁を打破するのは、あなた。
他の参加者があきれるほどのアイデアの束をミーティングルームに持ち込んでください。
みんな新しい物好きなのです。
アイデア好きなのです。
ドカンと積まれたペーパーの山を見たら、部屋の温度がググッと上昇します。
仕掛けてやってください。
p194
まずお薦めするのが考具の持ち腐れにならないための使い回し。
考具は、その使い方と、考え方・ノウハウとがセットになっています。
考え方とかノウハウにはそれなりのルールがありますから、そのルールに慣れて、自在に使いこなせるようになるまでには時間と、そして試してみるたくさんの機会が必要です。
本来的にはこれ、と決めた考具を徹底的に使い込んでみるのが早道だと思いますが……そうもいかないですよね。
わたしもダメなクチです。
考具の使い回し、しましょう。
その日の気分、何となくで使う考具を決めてください。
どの考具を使っても結果として頭の使い方、動かし方は同じです。
少し違って見えるだけ。
だからあまり気にせず、自分のお好きなように、お好みで。
それよりも何よりも大事なのは、とにかくアウトプットし続けること。
ネタ素や情報を集め、引き出し、組み合わせることを、あなたの習慣にしてしまうことです。
本 p217
世の中に存在する情報を凝縮させたもの、としては破格の価値があります。
誰かが必死になって研究してきた成果をその何十分の一、何百分の一の時間で取り込むことができます。
小説や詩などの文芸作品からは、練り抜かれた表現を通して微妙な人間の心の動きを知ることができます。
ノンフィクションやルポルタージュからは他人の人生や事件の真相を知ることができます。
本を読むことは疑似体験をすることです。
アイデアや企画を考えるためには、誰かの身になり代わってみることが大事でした。
多くの本に接することは、そうした疑似体験のバリエーションを拡げ、自分以外の視点、視座を持つことの近道でもあります。
ただし欠点もあります。
まずタイムラグがあるということ。
基本的なスケジュールでは本が出版されるまでには最低3ヵ月。
ほとんどの書籍はそれ以上の時間がかかっています。
リアルタイムで世の中をつかむためには、少々スピードの遅い情報源です。
それから筆者の視点が強く打ち出されてしまうこと。
世間を真っ二つにしているような話題があった場合、一方の主張を聞いただけでは総合的な判断はできません。
時としてバランス感覚を要求されるメディアです。