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「「お金の流れ」がたった1つの図法でぜんぶわかる 会計の地図」を読んだ

投稿時刻2024年2月5日 15:00

「お金の流れ」がたった1つの図法でぜんぶわかる 会計の地図」を 2,024 年 02 月 05 日に読んだ。

目次

メモ

p51

費用は大きく変動費と固定費の2つに分かれる。
難しそうだ。
こういう会計用語が苦手意識につながっていた。
でも実態は難しくない。
変動費は、商品をつくるためにかかる原材料など「売上に対して変動する費用」。
固定費は、家賃や給与など「売上に対して変動しない費用」だ。
つまり費用を下げるには、変動費を減らすか固定費を減らすか、2つの選択肢がある。

なぜ、変動費と固定費に分けるか。
それは、分けることでビジネスの特徴が見えてくるからだ。

たとえば航空会社は、航空機を保有、もしくは借りる必要がある。
自動車会社は、工場・設備などを多く持つ必要がある。
その設備などを維持するために大量の固定費がかかる。
「大きな設備を必要とするビジネスは、固定費が大きい」という特徴があるのだ。
一方、大きな設備を必要としないビジネスは、固定費が少ない分、変動費が大きい場合が多い。

ビジネスの特徴が見えると、その特徴に照らした効果的な費用の下げ方を考えられる。
たとえば、固定費である「人件費」が大きいにもかかわらず、年間を通して人が必要になる時とそうでない時の差が激しい場合、正社員を雇用するより業務委託として、人件費を変動費にすることが、費用を下げることにつながるかもしれない。

固定費として残すのは、その企業の独自性や優位性の源泉となるようなものに厳選する。
たとえば正社員を雇い、人件費を固定費として残すのは、会社が正社員を競争力の源泉として考えているということでもある。

変動費と固定費で分け、費用をどう効果的に下げることができるか、何に費用をかけるべきなのかを考えるのは、ビジネスで大事なことだ。

p66

PLは、これまで見てきた売上・費用・利益の3つを一覧できる書類。
日本語では「損益計算書」と呼び、売上から費用を引いて利益を計算する書類だ。
特に、利益を計算する中で、「何にどれだけ費用がかかったか」を細かく見ていくことが重要になる。

英語だと「Profit and Loss」なので、略してPL(ピーエル)と呼ばれる。
PLは、「財務諸表」という企業の一定期間の財務状態等を明らかにするために作成される書類の1つである。
ちなみに、財務諸表は「決算書」ともいわれる。
よく使われる財務諸表は3つあって、PLの他にもう2つある。
のちのち紹介するので、今はPLだけ理解すれば大丈夫だ。

「何に、どれだけ費用を使ったか」を明らかにするもの p67

あらゆる会社は、基本的に1年単位で動いている。
自分の会社の売上や費用や利益を計算したものを、1年ごとに財務諸表という形にし、利害関係者に報告しなければならない。
それは、納税するためでもある。

ビジネスパーソンが財務諸表の意味や構造を理解することは、英語や中国語を学ぶのと同じように、世界中のあらゆる会社で使われている共通言語を理解することになる。

PLは、売上から費用を引いて利益を計算するものだが、費用はいくつかの項目に分かれている。
売上原価、販売費及び一般管理費(販管費)、営業外損益、特別損益、税金(法人税)の5つだ。
この5つを暗記する必要はない。
重要なのは「なぜ費用が分かれているか」だ。
その理由は、「何にどれだけ費用がかかったのかを、個別に見られるから」である。

PLで最も大事なことは、いろいろな費用を引いたあとで最後に残る利益が「当期純利益」になる、ということだ。
当期純利益は、株主のものである。
ここでいう株主とは、「会社に出資して、株式を保有した人」のことだ。
株式をもつということは、その会社の経営権を、株式の保有割合に応じて手にすることを意味する。

「純」と言っても、株主の期待に応えるためのもの p99

純資産を増やすのは、株主からの期待に応えるためだ。
そもそも、会社は株主が出したお金によって始まる。
そのお金を元手に事業を行い、利益を積み上げていく。
この積み上げた利益のことを「利益剰余金」という。
この利益剰余金を増やし純資産を増やすことで、株主からの期待に応える。

本来、純資産は、企業のオーナーである株主のものだ。
そのため、利益剰余金として蓄積するのではなく、全部配当として株主に配るべきだという考え方もあり得る。
それでも、その会社が純資産の一部を事業に投資することでリターンが増えることを期待しているからこそ、配当せずに利益をためる選択ができるのだ。

つまり、純資産は「期待に応えられないなら、全部配当として返してくれ」と株主に言われかねないお金だということ。
企業は、株主が出資してくれた期待以上のリターンを生み出すという正当性が認められてこそ、利益剰余金をためることができる。

企業の「安全性」や「収益力」が見える p99

純資産を見ると、会社の安全性、つまり「倒産する可能性がどのくらいか」を分析できる。
会社の資産に対してどれだけ純資産があるかを見れば、どれだけ負債に頼らずに資金を調達できているかがわかるからだ。
この資産に占める純資産の割合を「自己資本比率」という(本書では、自己資本と純資産は同じものと考えてもらっていい。)。
この比率が高ければ、負債に頼っている比率が低く、倒産する可能性が低いといえる。

p101

もう1つの誤解は、「無借金経営=いい会社」とは限らないということだ。
たしかに、有利子負債が少ない状態であれば、利子を支払い続けたり負債の返済に追われることが少なく、手元のお金が無くなってしまう(倒産する)リスクは少ないため、「安全性が高い」という評価はできる。

ただし、本来、それだけ安定している状態なら、もっと借金をしてリスクをとって投資することでリターンを増やすこともできるのではないか、という見方があるのだ。

前述のとおり、株主は自分たちの利益を増やしてくれると思って投資をする。
それなのに無借金経営をしているということは、株主のリターンを増やすためにリスクを取ることを怠っている、とも捉えられるのである。

もちろん、だからといって、「借金が多ければいい」という話でもない。
安全に経営をすることにとらわれすぎて成長の機会を逃していないか、というバランス感覚を持っているかが問われているのだ。

p106

BSは、資産・負債・純資産の3つを一覧できる書類だ。
日本語では貸借対照表と呼ぶ。
左側がお金の使いみち、右側がお金の出どころ。
つまり、会社の活動を「どのようにお金を調達したのか」という原因と、「どうお金を使ったのか」という結果で分解し、照らし合わせて見ることができる。

この左右の値は必ず一致するので、左右を対照させて見るから、貸借対照表と呼ぶ。
英語だと Balance Sheet で、略してBS(ビーエス)と言われる。
BSはPLと同様、財務諸表のうちの1つである。

p107

たとえば、負債の中に「流動負債」というものがある。
1年以内に返済しなければならない負債のことだ。
流動負債が、1年以内に現金化できる資産である「流動資産」より大きいと、支払いが滞ってしまう可能性が高い。
そのため、流動負債と流動資産の比率を見ることで、返済が滞るリスクを判断したりする。
なお、この比率を「流動比率」という。

また、「自分たちの資産をどれだけ利益につなげられているか?」を判断するために、利益と資産を比べてみたりする。
これは「総資産利益率(ROA)」と呼ばれる。
このように、会社の利益を考えるうえでも、会社の存続を考えるうえでも重要な指標となるのがBSなのである。

「比較」するとおもしろい p107

自分の会社のBSを見てみよう。
業界特有の比率があるのかを調べて業界の理解を深めたり、業界の一般的な比率と自社を比べて自分の会社の特徴を知ることができる。
そうすると、会社が安全性や効率性についてどう考えているのかを数字で読み解くことができるし、自分が社内でどういう意思決定をするべきかに迷ったときの指針にもなるだろう。

p124

CFは、現金の使われ方をみるためのツール。
「現金を何にどれだけ使ったのか」を、営業、投資、財務の3つの分け方で考える書類だ。
現金(キャッシュ)の流れ(フロー)を見るものなので、キャッシュフロー計算書。
Cash flow Statement を略してCF(シーエフ)と言われる。

CFは、BSやPLと同様、財務諸表のうちの1つである。
BSとPLは説明済みだから、これで財務諸表の3つがそろった。

「どのように現金を得て、何に使ったか」が丸わかり p125

CFは、BSやPLよりも歴史は浅い。
日本では2000年に使われることになったもので、PL、BSとは成り立ちとして独立している存在だ。

p132

財務3表は、これまで見てきた代表的な3つの財務諸表、PL、BS、CFをまとめた呼び名だ。
財務諸表は、企業の経営状態を見える化してくれる。
ここで、それぞれの解説に戻る必要はない。
このまま読み進めて大丈夫。
「なぜこの3つなのか?」を知ることが何より大事だからだ。

p160

会計用語としての「のれん」という言葉は、店先に垂れ下がっている、あの「暖簾」からきている。
元々、暖簾には会社のブランドやロゴなどが描かれており、会社を象徴するものだったからだ。

会社には、資産には計上できないものの、その会社の評価に含まれるものがある。
たとえば、優れた経営者がいること。
たとえば、長年消費者に愛されるブランド。
そういう目に見えない資産が「のれん」と呼ばれ、企業の価値をつくるうえで重要な働きをする。

のれんは、英語では Goodwill と訳される。
日本語では「信用」だ。
つまり、「信用するに値する企業だ」と人々に思われることがブランドの価値につながり、それがのれんとみなされるのだ。

時価総額のところで説明したように、純資産と時価総額の差分がのれんになる。
のれんは時価総額と連動していて、時価総額があがるほど、のれんも多くなる。

そして通常、のれんはBSに記載されない。
なぜなら、会計は定量化できない価値は記載できないからだ。
それでも、のれんは、会社の価値を考えるうえでとても重要な役割を担っている。

「コカ・コーラだから買う」という信用がのれんになる p161

のれんが重要な理由は、それが会社の付加価値そのものだからだ。

たとえば、コカ・コーラのような世界的に知られているブランドであっても、会社が長年培ってきたブランドそのものは、通常、BSに記載されない。
しかし、「コカ・コーラが知られていること」それ自体が信用や安心を生み、「コカ・コーラだから買う」という人が世界中にいる。
これは、会社の付加価値そのものだと言える。

のれんに当てはまるような、目に見えない価値を生み出していくことこそが、会社を永く存続させ、社会にインパクトを生むために重要なのだ。

ところで、なぜ「純資産と時価総額の差分」がのれんになるのだろうか。
時価総額は、「その会社を買収し自分がオーナー(株主)になるとしたら、いくらで買えるか」を表している。

たとえば純資産が1億円程度だったとしても、世界的に知られるものすごいブランドを持っていたら、10億円で買われるかもしれない。
その差分の9億円が、のれんになる。

p170

PBR(株価純資産倍率)は、「純資産に対して、どれだけの時価総額があるか」を表す指標だ。
ピービーアール、と読む。
「のれんがどれだけあるか」を間接的にあらわしているという意味で、会社の価値を測る最も重要な指標ともいわれている。

会社の価値を「短期」「長期」の両面から測れる p171

PBRは「PER」と「ROE」の2つに分解できる。
図解したとおり、ROEは「純資産からどれだけ利益を出しているか?」を見る指標であり、PERは「将来の成長性とリスクはどうか?」を見る指標である。

ROEは短期的な視点で、PERは長期的な視点で会社の価値を測る指標になっている。
つまり、会社の価値は、短期と長期どちらの視点からも重要であることを示している指標だ。

その2つから成るPBRは、会社の価値を最も端的にあらわしていると言える。
「のれんがいくらあります」と金額だけ言われても比較しにくいが、PBRという指標があれば比較できる。

PBRは「1倍」とか「2倍」などと表現される。
純資産と時価総額が1対1なら1倍、1対2なら2倍だ。
1倍未満になることもある。
「PBR1倍未満」とは、純資産よりも時価総額のほうが少ない状態、つまり「のれんがマイナス」であることを表している。

p180

ROE(自己資本利益率)は、「純資産に対して、どれだけ利益を稼げたのか?」を表す指標。
英語の Return On Equity を略してROEと表記され、読み方は「アールオーイー」だ。
アルファベット3文字の略語はビジネスでよく見かけるが、その中でも頻出中の頻出用語がROEだ。

p183

裏を返せば、ROEという指標は、意図的に操作が可能だ。
負債を増やせば、つまり純資産の比率を下げればROEが増やせるからだ。

そのため、ROEだけを見るのではなく、ROIC*という別の指標が近年注目されている。
ROICとは「企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したか」を示す指標のこと。
利益を分子にして、有利子負債と純資産を足したものを分母にして計算する。
分母は、事業活動にどれだけのお金を調達しているかということを表す。

なお、無利子負債は、買掛金のように、事業をしていると自然に発生するものであるため、ここでは考慮していない。

ROICは、負債を増やして財務レバレッジを操作することができないことが特徴で、指標として有用だと言われる。
ただ、理解するのがむずかしく、現場の人になかなか伝わらず、指標として使うにはハードルが高いとも言われている。

ここでも、ROICについて理解してもらいたいわけではない。
伝えたいことはROEでもROICでも「単一の万能な指標があるわけではない」ということ。
つまり、指標にどんな見方があるのかを理解し、そのうえで指標を適切に使い分けることが大事なのだ。
*ROICは投下資本利益率と呼ばれ、 Return on Invested Capital の略である。
「ロイック」や「アールオーアイシー」と読む。

日本の会社は「過小評価」されている p190

181ページで先述した伊藤レポートは、2017年に経産省から「伊藤レポート2.0」として再度発表されている。
そこには、「PBR(167ページ参照)を1倍以上にすることが大事だ」という趣旨の内容がある。
しかし日本の現状は、PBRが1倍未満の会社が半分以上もあると言われる。
僕は初めてこれを知ったとき、衝撃を受けた。
PBR1倍未満ということは、純資産よりも時価総額の方が小さいということ。
すなわち、日本の会社の大半が、本来もっている純資産よりも市場から評価されていないことになる。

なぜ市場から評価されないのか。
なぜPBRが低いのか。
いろいろな見方があるが、その大きな要因の1つは、のれんを生み出す力が不足しているからだ。
のれんを生み出す力は、創造性によって発揮される。

反対から言えば、PBRが低いということは、創造性をいかす余剰がまだまだあるということだ。
どうしたら、もっと目に見えない価値をつくりだし、のれんの価値を生み出し、会社が社会に貢献できるかを、この本を読んでいる方と一緒に考えていきたい。