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「デザインの思考法図鑑」を読んだ

投稿時刻2024年4月14日 11:07

発想から実践まで デザインの思考法図鑑」を 2,024 年 04 月 14 日に読んだ。

目次

メモ

デザインにおけるペルソナとは p58

デザインはつねに「誰かのため」に行われます。
しかし実際のプロジェクトでは、「誰か」が明確に見えていない段階で企画を進めなくてはならないことも少なくありません。
そのようなときには、チーム内の共通認識としての「誰か」として、ペルソナが役に立ちます。
年齢や職業、性格やライフスタイルなどを含めてペルソナの人物像を作成することで、ユーザーの視点を理解しやすくなり、問題や課題を発見しやすくなるのです。

また、ペルソナのニーズを洗い出して整理したものは、チーム内での指標となり、プロダクトやサービスのリリース前はもちろん、ユーザーテストの実施時、プロダクトやサービスの改修時にも利用できます。

ペルソナを定義する手順 p59

ペルソナの定義は通常、「1.調査 → 2.情報整理 → 3.ペルソナの定義」という流れで進められます。

調査では、できるだけ丁寧にデモグラフィック属性(年齢、性別、職業など)、サイコグラフィック属性(趣味趣向、価値観、欲望、ライフスタイルなど)、ビヘイビア属性(利用頻度、利用目的など)を調べます。
よく行われる調査方法にはユーザーインタビューやアンケート、フィールドリサーチがあります。

次の情報整理では、収集した情報を特徴や傾向ごとに整理し、ペルソナの目的やゴール、情報の一貫性と信頼性などに応じて優先順位を付けて、ペルソナに反映するべき情報を絞り込みます。

ペルソナの目的やゴールについては、ペルソナの目標やニーズに直接関連する情報を優先的に選択してペルソナに反映します。
ユーザーの主要なゴールや課題を特定し、それに対応するための情報を選択するのです。
一方、情報の一貫性と信頼性については、収集した情報の中から、共通の特徴や傾向を見つけ、優先的にペルソナに反映します。

ペルソナの運用では、「名前、顔写真、年齢、性別、職業、家族構成などの社会的な情報」「趣味趣向、ライフスタイルのような行動に関する情報」「価値観、欲望など個人の意識に関する情報」を肉付けすることで、ユーザーを代表する人物像を描きます。

このようにペルソナの運用では、実際の情報を反映しつつ、さらにテストやインタビューの際に得られた情報も付与したり、時には不要な情報を削除したりしながら更新していくのです。

リーン、アジャイル、デザイン思考とは p82

デザイン思考、リーン、アジャイルはいずれもプロダクトやサービスの開発において使われる考え方です。

デザイン思考とは、発散と収束を繰り返しながら、イノベーティブなアイディアを創出するためのプロセスです。
新しいプロダクトやサービスの開発、新規事業の創出などに使われるデザイン思考では、共感・理解、課題定義、アイディエーション、プロトタイプ、ユーザーテストという5つのプロセスを通じてアイディアを創出します(→「はじめに 6 デザイン思考」参照)。

一方、リーンとは、トヨタ自動車の「トヨタ生産方式=生産ラインのムダを徹底的に排除するために確立された生産方式」をベースにマサチューセッツ工科大学(MIT)が体系化した概念です。
リーンでは、顧客目線での価値を最初に定義し、顧客までの「価値の流れ」のムダを取り除くことにより、あらゆる分野の業務プロセスを効率化します。

そしてソフトウェアの開発、新規事業の開発、組織変革など、さまざまな場面で使われるアジャイルはビジネスや社会における「価値」の実現に主眼を置き、探索適応を繰り返すという考え方です。
アジャイル共通の価値観や原則が定義された「アジャイルソフトウェア開発宣言」によれば、アジャイルは、課題解決にフォーカスし、課題に対する柔軟な対応を重視することで、プロジェクトの迅速な推進を可能にします。

デザイン思考、リーン、アジャイルの考え方は異なりますが、それぞれが排他的ではありません。
互いに、共存し、重なり合う関係なのです。

デザイン思考、リーン、アジャイルの使い分け p83

デザイン思考とリーンは似た概念ですが、この2つは「使い時」が明確に異なります。

デザイン思考と相性が良いのは、主に新しいプロダクトやサービスの開発です。
デザイン思考では、最も実現可能性の高いビジネスモデルのアイディアを模索し、コンセプトを改良し続けます。
そして、コンセプトが十分に練られたところで、コンセプトを検証するために、新しいプロダクトやサービスの限定的なローンチ計画を立てるのです。

一方、リーンでは戦略自体がピボット(方向転換、路線変更)の対象とされていることからもわかるように、顧客に対して価値を提供し続けるために考え続け、改善し続ける姿勢に重きを置いています。
そのためリーンは、既存のコンセプトを改善したり、新しいコンセプトを打ち出したりするときに役立ちます。

そしてアジャイルは、デザイン思考による新しいプロダクトやサービスの開発プロジェクト、リーンによる既存のプロダクトやサービスの改善・刷新プロジェクトを迅速に推進することを可能にします。
新しいプロダクトやサービスの開発、既存のプロダクトやサービスの改善や刷新には、正解はありません。
つねにアイディアの立案や検証を繰り返し、模索しながらプロジェクトが進められます。
そこでは、課題に対する柔軟な適応を重視するアジャイルが役立つのです。

デザインに「制約」は付きもの p84

デザインにはさまざまなアートの技法や感覚が使われるため、ときにデザインとアートは混同されがちです。
しかし、実際には、目的や自由度などにおいてデザインとアートは別物です。

デザインとアートの最も明確な違いは、デザインの本質が「誰かのために作る」ことにある点です。
「誰かのために」ということは、「対象となる誰かが必要な何か」という制約があることを意味します。
デザインとは、この一見不自由に感じられる制約の中で行われる活動なのです。

そのため、プロダクトやサービスのデザインに関わることになったら、まずどのような制約があるかを確認しておかなくてはなりません。
その上で、どのようなハードルがあるか、どのようなデザイン上の工夫ができるかを考慮して、解決策を探るのです。

制約がない場合には、自ら設定する p84

デザインに制限が設定されてない状況では、適切な制約を自ら設定した方がよいでしょう。
制約が設定されていないと、アイディアの手がかりがなく、かえって発想が難しくなるからです。

たとえば、「夏らしさを感じる文章」というお題があったとします。
これだけでは、文章の文字数がどのくらいか、どのように「夏らしさ」を表現するかなどがわかりません。
しかし、「夏らしさを感じる俳句」というお題にすれば、文字数は5・7・5の17字となり、夏らしさの表現には「季語」を用いると決められます。

このように、制約を設定することで、アイディアを発想しやすくなり、さまざまなデザインを出しやすくなります。
また、「このアイディアのどの点がどのように新しいのか」という観点も持ちやすくなるため、斬新なアイディアも出やすくなります。

お客様第一主義≠顧客の声を最優先 p86

プロダクトやサービスの開発において、多くの人は「お客様第一主義=顧客の声を最優先」が正しいアプローチであると考えがちです。
しかし、そのアプローチでは、ユーザーに愛されるプロダクトやサービスは開発できません。

プロダクトやサービスの開発で重要なのは、ユーザー視点でサービスやプロダクトを考えることです。
「ユーザー視点で考える」とは、顧客の声をそのまま商品に反映するのではなく、顧客の潜在ニーズをより深く理解し、顧客の想像を超えるレベルのサービスやプロダクトを作り出すことなのです。

では、顧客の声を最優先に考えたがゆえに、いつの間にか顧客の「御用聞き」になってしまう状態に陥らないためにはどうすればいいのでしょう。
ここでは、そのためのツールとして「バリュープロポジション」、そのためのフレームワークとして「バリュープロポジションキャンバス」を紹介しましょう。

なお、バリュープロポジションやバリュープロポジションキャンバスは元々、マーケティング用語として知られていました。
しかし、現在では、プロダクトやサービスの開発の文脈において注目されるようになっています。

バリュープロポジションとは p87

バリュープロポジションとは、「1 自社が提供する価値」「2 ユーザーが真に求める価値」「3 競合他社が提供していない価値」という3つの条件が揃った領域です。
バリュープロポジションはしばしば、マーケティングにおいて「顧客があなたのプロダクトやサービスを買う動機」を明確にするために使われます。

プロダクトやサービスの開発では、多くの場合、作り手の視点と顧客の視点が異なります。
そして、マーケター、エンジニア、デザイナーなどの作り手はプロダクトやサービスの開発を進めるにつれて、「顧客視点で考える」ことを忘れてしまうのです。

しかし、最終的にプロダクトやサービスの良し悪しを決めるのは顧客です。
顧客視点で考えることを忘れることは、しばしば顧客が価値を感じにくいプロダクトやサービスの開発につながります。
バリュープロポジションを意識することで、つねに顧客視点で、プロダクトやサービスを考えて開発する必要があるのです。

バリュープロポジションキャンバスとは p87

バリュープロポジションキャンパスとは、「ビジネスモデルキャンバス」の提唱者の1人であるアレックス・オスターワルダーが提唱した、
顧客のニーズや状況と自社のプロダクトやサービスとの関係を可視化するフレームワークです。
顧客の感情など、定性的な情報も含めて考えられる点がパリュープロポジションキャンパスの強みです。

バリュープロポジションキャンパスは、右側で「ユーザーの視点」を理解し、左側で「自社のプロダクトやサービスがユーザーの問題を解決しているか」を確認できるようになっています。

バリュープロポジションキャンバスを使えば、裏紙やホワイトボード、付箋があればいつでもどこでも気軽にプロダクトやサービスのアイディアを整理できます。
ぜひ日頃から、バリュープロポジションキャンバスを使ってアイディアを整理し、仮説を立てる習慣を身に付けてください。

p89

なお、ビジネスモデルのフレームワークに共通して言えることですが、強力なフレームワークは使うことそのものがゴールになってしまいがちです。
しかし、フレームワークはあくまでアイディアを整理するツールに過ぎません。
「正しい問い」を繰り返すことで、仮説・検証を続けていくことが重要なのです。

顧客開発モデルに見るPMFの重要性 p90

顧客開発モデル (CDM、Customer Development Model)とは、顧客と対話を重ねながらプロダクトやサービス、ひいてはビジネスモデルを作りあげていくメソッドです。
著名なアントレプレナーであるスティーブン・ブランクが、彼の著書『スタートアップ・マニュアル』(翔泳社)の中で提唱しました。
ハーバード・ビジネス・レビューにおいて“Master of Innovation”の1人として紹介されているスティーブン・ブランクは、シリコンバレーの起業家の中で知らない人はいないと言われる人物です。

顧客開発モデルでは、多大な時間とコストをかけて作ったプロダクトやサービスが実は「まったく顧客に必要とされていなかった」という悲劇を免れるために、会社のフェーズを顧客との関係性によって定義し、各フェーズごとにやるべきことを決めています。
顧客開発モデルにおける会社のフェーズは、「カスタマーディスカバリー(顧客発掘)」「カスタマー・バリデーション(顧客評価)」「カスタマー・クリエーション(顧客創造)」「カスタマー・ビルディング(顧客構築)」の4つです。
そして、創業間もないスタートアップ企業が当分の目標として据えるべきは、カスタマー・ディスカバリーとカスタマー・バリデーションという前半2つのフェーズを乗り越えることとしています。

また、次のフェーズに移行してよいかの判断指標として、課題解決へのフィット(Problem Solution Fit、PSF)と市場へのフィット(Product Market Fit、PMF)を挙げています。

それぞれ、PSFとは顧客の抱える課題が明確で、それに対する解決策が提供できている状態であり、PMFとは解決策を落とし込んだプロダクトやサービスが市場に受け入れられている状態です。

スタートアップの約80%近くはPMFを達成できずに潰れてしまうと言われています。
PMFの達成はスタートアップ企業の健康状態を理解する上での1つの指標と言っても過言ではないでしょう。

アフォーダンスとは p92

アフォーダンスとは、プロダクトやサービスに施された視覚的・物理的な表現によって、どのように利用するかをわかりやすく感じさせるデザイン要素を意味します。
アフォーダンスが優れていると、使用するのに難しい説明を必要としないため、ユーザーは迷うことがありません。
そのため、そのプロダクトやサービスを使いやすいと感じるのです。

たとえば、Webサイト上の「角が丸い箱のような四角形」の上に「Sign up」という記述があれば、これがボタンであること、クリックすればこのサイトに会員登録できることを直感的に理解できるはずです。

ただし、アフォーダンスはあくまでも「このような動きをするかも」という可能性を示唆しているに過ぎません。
ユーザーが「どのように動くのか」をはっきりと理解できるとは限らないのです。

シグニファイアとは p92

「どのように動くのか」をさらにわかりやすく伝えるために、使われるのが「シグニファイア」です。
シグニファイアは、「このように使ってください」「このような動きをしますよ」というシグナルを送るデザイン要素なのです。

シグニファイアでは通常、ユーザーに適切な行動を伝えるために、印や音、動きや色などを利用します。
シグニファイアは、認識可能なヒントを提供することで直感的にプロダクトやサービスの使い方や動作をユーザーに感じさせるのです。

たとえば、ボタンの上にマウスを持ってきた時に色が変わると、クリックしたり、押したりすることで何かしらのアクションが発生するとユーザーは直感的に理解します。
シグニファイアは、デザイン要素としてこうした補助的な役割を担っているのです。

MAYA理論とは p94

MAYAとは、「インダストリアルデザインの父」とも呼ばれるレイモンド・ローウィが発見し、提唱した理論です。

MAYAとは「Most Advanced Yet Acceptable」の頭文字を取った言葉であり、「最も先進的だが、受け入れられる」ことを意味します。
最も先進的であることと、受け入れられやすいこととのバランスを示したMAYA理論は、行動経済学の知見に基づいて提唱されました。

MAYA理論における「最も先進的 = Most Advanced」と「受け入れられやすい = Yet Acceptable」のバランスを表したのが上の図です。
横軸が「新しさ」、縦軸が「受け入れられやすさ」を示しています。

人は、あるプロダクトやサービスがあまりにも古いと感じると魅力を感じず、プロダクトやサービスを受け入れません。
一方で、人は、あるプロダクトやサービスがあまりにも新しいと感じると、ついていけないと感じて受け入れないのです。

多くの人がこのように感じる理由は、人が新しいものに対する好奇心と、変化を嫌う保守性という2つの特性を併せ持っているためだと考えられています。

上の図においても、新しすぎても、古すぎても、受け入れやすさが低くなっています。
つまり、ユーザーに受け入れられやすいのは、ちょうど良い新しさのプロダクトやサービスなのです。

3種類のフロトタイプ p101

プロダクトやサービスの開発では通常、「ファンクショナルプロトタイプ」「デザインプロトタイプ」「コンテクスチュアルプロトタイプ」という3種類のプロトタイプを開発します。
3種類のプロトタイプを用途に応じて使い分けるのです。

それぞれ、ファンクショナルプロトタイプは動作や機能の検証、デザインプロトタイプはビジュアルイメージの検証、コンテクスチュアルプロトタイプはユーザー体験の検証に使われます。

ただし、どのようなプロトタイプを作るべきかについては正解がなく、作り方や活用方法にも決まりはありません。
プロトタイプの作成とプロトタイプによる検証の方法は、試行錯誤を重ねながら、決めていくほかないのです。

重要なのは、プロトタイプによってアイディア・動作・ビジュアル・課題を検証しながら、プロトタイプをアップデートしていくことです。
これにより、検証の精度を段々と向上させていくのです。
ファンクショナルプロトタイプ
動作や機能を検証するためのプロトタイプ。
主に、プロダクトやサービスの操作や動きの確認に使われる。
Webサービスやアプリであれば、スクロールしたり、ボタンを押したりした際の動作を確認する。
実際の動作を事前に確認し、問題点を抽出できる。
なお、紙にフリーハンドでインターフェイスを書いてテストするペーパープロトタイプもファンクショナルプロトタイプの1つである
デザインプロトタイプ
ビジュアルイメージを検証するためのプロトタイプ。
主に、プロダクトやサービスのフォルムや画面イメージなどの確認に使われる。
紙を使用して簡易的にも作成できるが、PhotoshopやIllustratorのようなデザインツール、Adobe XD、Sketch、Figmaなどのプロトタイピングツールを使用すれば、より具体的で、リアリティのあるデザインプロトタイプの作成が可能である
コンテクスチュアルプロトタイプ
ユーザーの体験を検証するためのプロトタイプ。
「コンテクスチュアル = 文脈上の」という意味の通り、プロダクトやサービスを通じてユーザーに提供する「体験」「ストーリー」「意味」を確認する。
アプリやゲームなどを使用している様子を動画で撮影し、ユーザーへ公開するのもコンテクチュアルプロトタイプである。
ある意味、プロモーションビデオやコマーシャルのような役割を果たす

テスラーの法則 p116

「テスラーの法則」とは、「どのようなシステムやプロセスにも、減らすことのできない複雑さが存在する」ことを示した法則です。
シリコンバレーの研究者、ラリー・テスラーによって提唱され、「複雑性保存の法則」とも呼ばれます。

ユーザー体験は、「基本的にシンプルにすることが正しい」とされています。
しかしテスラーの法則によれば、どのようなシステムやプロセスにもこれ以上シンプルにできない「臨界点 = 本来備わっている複雑性」があります。
臨界点を超えた後に、シンプルなユーザー体験を目指す上でできることは、問題を提供側で解決できる仕組みの提供だけなのかもしれません。

また、スムーズなユーザー体験を提供する上では、何をどのように使ってほしいかを、ユーザーが一目で理解できるインターフェイスにすることも重要です。
多少の「遊びの要素」を入れても構いませんが、基本的には、ユーザーを混乱させないようにシンプルなインターフェイスをデザインしましょう。

ハロー効果 p117

ハロー効果とは、「外見が優れているものは、中身も優れている」と捉える傾向です。
デザインで言えば、例えば「美しいデザインのプロダクトやサービスは性能も優れているように見える」「見た目が良くないプロダクトやサービスは性能も劣っているように見える」といった傾向が挙げられるでしょう。

ハロー効果はUIデザインにも活かせます。
見た目の美しさを追求すれば、ユーザーに「良いプロダクト」「良いサービス」と認識してもらえるからです。
しかし、本来デザインする上で優先するべきは、見た目の美しさよりもユーザーの目的を達成するための機能です。

今回は、UIの基本に立ち返り、ハロー効果をデザインの実践において活かすための3つの心構えを紹介しましょう。

まず、「究極のユーザーインターフェイスはその存在を感じさせない」ことです。
つまり、優れたUIとは、単純な見た目の美しさを追求したものではなく、ユーザーがその存在を意識しないほどに「透明」なものでなくてはならないのです。
当たり前のように存在し、疑問を抱かないほど自然な状態であることが重要です。
UIデザインでは、構造や設計が根本的に重要であり、UIを構成するビジュアルや要素はその「透明感」を実現するための道具であると心得ましょう。

次に、「インターフェイスは使ってもらうことにこそ価値がある」ことです。
インターフェイスは、ユーザーに使われてこそ存在価値が生まれることを忘れてはいけません。
使い心地の良さは、ユーザーインターフェイスにおいて不可欠なのです。

最後は、「見た目のデザインはその機能に基づく」ことです。
UIデザインの中心にあるのはビジュアルではなく機能であると心掛けましょう。
求められているのは、ユーザーが直感的に操作を理解できるようにデザインすることです。
ビジュアルよりも機能を優先してデザインするのです。
その上で、魅力的なビジュアルを追求することで、使いやすく美しいプロダクトやサービスを実現できます。

UXデザインの評価指標 ① = UXピラミッド p124

UX デザインのクオリティを測る手法の1つに「UX ピラミッド」があります。
UX ピラミッドを構成する6階層のうち、下の3つが実用性、上部3つが利用時の感覚を測る評価指標です。
つまりUXピラミッドでは、実用性と利用時の感覚の双方からUXデザインの質を評価するのです。

UXデザインにおいて実用性を判断する指標は「1. 機能的である」「2. 信頼できる」「3. 使いやすい」の3つ、利用時の感覚を判断する指標は「4. 便利である」「5. 楽しい、心地よい」「6. 価値がある」の3つです。
1~3は客観的な指標、4~6は主観的な指標と言えるでしょう。

UXデザインの評価指標 ② = UXハニカム p126

UXピラミッドと同様に、UXデザインのクオリティを測る手法にUXハニカムがあります。
UXハニカムでは、「1. 役に立つ(Useful)」「2. 好ましい(Desirable)」「3. アクセスしやすい(Accessible)」「4. 信頼できる(Credible)」「5. 探しやすい(Findable)」「6. 使いやすい(Usable)」「7. 価値がある(Valuable)」という7つの評価指標に基づいてデザインの質を評価します。
各指標ごとに評価し、最終的な総合得点によってデザインの質を判断するのです。

ユーザーフローの設計 p134

UXデザインのプロセスの1つに、ユーザーフローの設計があります。

ユーザーフローとは、プロダクトやサービスを使用・利用する上でユーザーがたどる必要のあるプロセスです。
ユーザーフローの設計では、こうしたプロセスを明確にすることで、一連の“流れ”に抜け漏れがないようにするのです。

ユーザーフローの明確化にあたっては通常、「ユーザーフロー図」と呼ばれる、プロダクトやサービスを利用する上でのユーザーの動きをマッピングして可視化した図を作ります。

ユーザーフロー図の作成におけるポイントは大きく、「1. ユーザーゴールを設定する」「2. タスクフローを作成する」「3. タスクとアクション/画面をワイヤーでつなげる」の3つです。

ユーザーゴールの設定で最も重要なのは、「最終的にユーザーに何を達成してもらうためのユーザーフローなのか」を決めることです。
あたりまえのように思うかもしれませんが、実は、これが明確になっていないケースが少なくありません。
そして、ゴールが不明瞭だと、誤ったユーザーフローを設計してしまう可能性があるのです。

ユーザーゴールを設定したら、「ユーザーゴールを達成するために必要なタスクの流れ = タスクフロー」を明確にします。
このとき、「ユーザーの行動 = アクション」と、「ユーザーの決定 = デシジョン」を分けて考えることが重要です。

タスクとアクション/画面をつなげる際には、必要とされるアクションや操作画面を線で結びつけることになります。
この時、適宜、簡単な注釈を入れることで、ユーザーにとってもらいたいアクションや思考がより具体的に可視化されます。

選択肢が多いと選ぶエネルギーが必要になる p136

選択肢は多ければ多いほどよいわけではありません。

これを示す有名な例に、「ジャムの法則」があります。
ジャムの法則によれば、人は選択肢が多すぎると選択することに精神的なプレッシャーを感じてしまい、行動を起こさなくなってしまいます。
プロダクトやサービスの選択においても同様です。
ユーザーに余計なプレッシャーを与えないように選択肢を減らすのも手でしょう。

集団心理を活用し安心感を与える p137

誰もやったことのない行動を起こすのには勇気が必要です。

たとえば、Webサイト上の気になった商品にレビューが付いていないと、おそらく購入率は落ちるでしょう。
逆に、他人も同じ行動を起こしているとわかると、人は行動を取りやすくなります。

またレビューやロコミの信頼性が高く、内容が詳しいほど、ユーザーは行動を起こしやすくなります。
家族や友人のように信頼している人、専門家のように権威のある人からの情報があると、人は行動を起こしやすくなるのです。

ブランディングとデザインの関係 p160

ブランディングとデザインの関係はシンプルに表現すると「手段と目的」です。
ブランドはデザインの対象なのです。

実際、ブランディングに関わるさまざまな活動を実施する上で、デザインの力は活用できます。
デザインなしにはブランディングは成立しないほど、両者は密接に関わり合っているのです。

ブランディングでは、ユーザーに与える体験のすべてを正しく演出し、「価値」という約束をステークホルダーと結び、守っていきます。
これを実現するのが、前述の「1. ブランドポジショニング」「2. ブランドパーソナリティ」「3. ブランドアソシエーション」「4. ブランドストーリー」「5. ブランドプロミス」というブランドの5つの構成要素です。

そして、ブランドの構成要素を考える上では、デザイン的な発想が求められます。
ここでは、ブランディングに求められるデザインを紹介しましょう。

ブランド価値の測定 p162

本来、ブランディング施策の目的は、ブランド価値を向上させることです。

では、ブランディング施策の実施によるブランド価値の向上効果はどのように測定すればよいのでしょう。
たとえば、マーケティング施策であれば、訪問者数、コンバージョンレート、リード獲得数など、施策の実施効果を具体的な数値で測定できます。
一方、目に見えないブランド価値は数値化が難しいため、ブランディング施策の実施効果も「ふんわり」した結果でしか測定できません。

そのため、ここでは、ブランド価値を測るために「Oデータ:経済的データ」「Xデータ:感情的データ」という2つのデータを使います。
以下に簡単に解説しましょう。
・Oデータ:経済的データ
・Xデータ:感情的データ 

Oデータ:経済的データ p162

Oデータの“O”とは業務(Operations)を意味します。
Oデータは販売データ、財務データ、人事データといった業務に直接関連するデータなのです。

データドリブンなアプローチでは、ブランド価値の測定結果に基づいて、現在のパフォーマンスを検証したり、将来のパフォーマンスを判断したり、予測したりします。
Oデータは、経営陣が注力したい指標に基づいて取得するとよいでしょう。

例えば、売上アップを優先したいときは販売データを、人材獲得を優先したいときは人事データを優先的に取得するのです。

こうしたデータは基本的に企業内に蓄積されているため、プラットフォームやツールを活用することで比較的容易に収集できます。
ただし、Oデータでは企業活動の背景や原因、当時の状況を詳細に把握するのが難しいことには留意する必要があります。

背景や原因、状況などを把握するには、Xデータが必要になります。

Xデータ:感情的データ p163

Xデータの“X”とは、体験(Experience)を意味します。
Xデータは消費者やユーザーの「感情」に関係するデータなのです。
Xデータは、感情的な意思決定やブランドに対する印象などを定性的に理解する上で主に利用されます。

Xデータの取得方法としては、ユーザーインタビュー、フォーカスグループ、アンケートなどの手法が使われます。
またリサーチにあたっては、「期待値と結果のギャップ」「要した時間とエネルギー」「ポジティブインパクト」といった項目をしっかり押さえましょう。

単純な一問一答形式よりも、回答を深掘りする第二、第三の質問や、アンケートに自由形式のフィードバックを入れる余地を残しておくことも重要です。

OデータとXデータの掛け合わせ p163

OデータとXデータは、2つを掛け合わせて活用することで本領を発揮します。
「何が」「なぜ」「どのような」結果になったのかを定性と定量の両面から理解することで、より精度の高いブランド価値の測定が可能になるのです。