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「世界最高峰の美術大学セントラル・セント・マーチンズで学ぶ デザイン・アートの基礎課程」を読んだ

投稿時刻2024年2月5日 15:00

世界最高峰の美術大学セントラル・セント・マーチンズで学ぶ デザイン・アートの基礎課程」を 2,024 年 02 月 05 日に読んだ。

目次

メモ

p4

がっぽりお金を稼ぎたい?
だったら今のうちにほかの道を探したほうが賢明です。
もちろん、ビジュアルアートを仕事にしてお金をたくさん稼いでいる人もいます。
私もそのひとりです。
ただ、私はとてつもなくラッキーでした。
38歳になるまでアートで最低賃金すら稼げませんでしたし、大学でアートを学べたのも、まだ学費が無料という黄金時代に学生だったからです!
ある意味これは、よい診断テストになるでしょう。
お金が儲かるかどうか気にならないのであれば、あなたにもアートの世界へ進む適性があります。
心を震わせるような美しさ、斬新なアイデア、驚異的な職人技や、独創的なソリューション、衝撃的なイメージに抱く興奮、そういったものを大切にする人だ、ということだからです。
ほかの人も同じように感じ、あなたを支えてくれるような世界の一員になりたいはずです。
アートの世界はひたむきな人々であふれる、刺激的で充実した場所ですが、そこで生きることは簡単ではなく、すべてが楽しいわけでもありません。
短距離走ではなくマラソンなのです。
成功にもいろいろな形があります。
それは仲間から認めてもらえることかもしれません。
有意義な制作によって大きな喜びを得る、あるいは単に、完成した作品に心から満足することかもしれません。
ときには、お金が後からついてくることもあるでしょう。

p18

Step 1 「~イズム」について調べる

サイコロを振って「~イズム」をひとつ選びます。
その言葉から連想するものをすべて絵に描き、まわりの人にもアイデアを出してもらいます。
「不正解」はありません。
図書館やインターネットで用語の定義を確認し、できるだけ多くの情報ソースを使って関連する史実を調べ、幅広いレファレンス〔参考文献〕のリストを作成します。

例: アナーキズム

文脈に当てはめる p32

これまでは、自分の知識や直接アクセス可能なものだけを活用してきましたが、ここで、現在のアート・デザイン活動の文脈に自分の作品をしっかりと位置づけ、主題に関する十分な知識を得るための戦略を、いくつか伝授したいと思います。

美術館やアートギャラリーを訪れる
自分の興味の対象と明らかに関係の深い企画やコレクションを目当てにするのは当然ですが、扱うテーマと接点がなさそうな作品へ目を向けることにも、同じくらい意味があります。

図書館や書店を利用する
本や雑誌が情報と知識の宝庫であることは言うまでもありません。
繰り返しになりますが、図書館の目録から自分のテーマに直結する書籍を探し出すだけでなく、書店や図書館の棚に目を通してみることも大切です。

インターネットを利用する
インターネットを使えば、膨大な量の便利な情報にアクセスできます。
ただし、頼りすぎもよくありません。
数ある外部ソース活用手段のひとつという扱いにとどめましょう。

ブログを開設する
集めたリサーチ結果を自分なりにまとめたり、選んだ情報への見解を記すのに適しています。
主題、素材、工程、スケールなどの考察を含む、分析コメントも加えましょう。

p69

「実験に失敗はつきものです。
実験では未知の領域に足を踏み入れるため、失敗は避けて通れません。
成功など予測できるでしょうか?
見知らぬものと向き合う勇気がとても大事なのです」

マリーナ・アブラモヴィッチ〔セルビア人のコンセプチュアル・アーティスト〕
著『Walk Through Walls: A Memoir』(2017年)からの引用

リスクを冒し失敗を受け入れる方法 p73

ここで紹介する12の1時間エクササイズは、リスクと失敗にポジティブな可能性を見いだし、それを作品づくりに活用していくための戦略です。

課題1: テイストの境界線を探る
悪趣味を象徴するモノを見つけ、それを取り入れた作品をつくりましょう。

課題2:街頭に作品を展示する
路上に自分の作品をひとつ展示してみましょう。
見せ方を考えてください。
離れたところから、見る人の反応を観察します。

課題3: アイデアなしで作品をつくる
通りがかりの人が気づき、興味を向けてくれるような何かが起こるまで、素材をいじり続けます。
具体的なアイデアが浮かんだら、いったん手を止め、また一からやり直します。

p75

課題8: マルセル・デュシャンの「破壊は創造でもある」という概念を探る
壊れたアイテムまたは中古品を見つけ、ばらばらに分解します。
その部品を使って別のモノをつくりましょう。

p75

課題11: 当たり前を受け入れる
社会派アーティスト、ウィリアム・ケントリッジ〔多角的な創作活動を展開する南アフリカ共和国出身の現代アーティスト〕の語った「必要な愚かさ」という概念を掘り下げます。
何かの問題に対して、あまりにも当たり前で平凡な解決策を考え、それを実行します。

色とスタイル p81

グラフィックデザインとイラストレーションの歴史において、赤という色は、白黒画像へのアクセントカラーとして重要な役割を果たしてきました。
そこの背後には、経済的な理由と記号論的な発想があります。
第一に、デザインを3色に限定すれば費用が抑えられます。
第二に、赤は人の目を引きつける力のある色だからです。

すっきりしたラインとシンプルなフォルム、フラットな色づかい、規則的なレイアウトなどで構成される印象深いグラフィックデザインのビジュアル様式は、20世紀初頭のバウハウスから、1950~60年代のスイス・スタイル〔「国際タイポグラフィ様式」とも呼ばれるグラフィックのスタイル〕へと継承されました。
その影響は、現代のグラフィックデザインやイラストレーションにも色濃く残っています。

このプロジェクトでは、複雑なアイデアやナラティブをシンプルでダイレクトなコミュニケーションに落とし込むという、コミュニケーションデザインの基本に取り組みます。
加えて、画面の構成、文字とイメージの関係、配色などを考える、大事なデザインスキルを学んでいきます。

p129

以下のQ&Aは、1969年にルーヴル宮内のパリ装飾芸術美術館で開かれた「Qu'est ce que le design?(デザインとは何か?)」という展覧会のコンセプトのベースとなった対話です。

ヨランド・アミック〔パリ装飾芸術美術館学芸員〕:
デザインの限界はどこにありますか?

チャールズ・イームズ〔ミッドセンチュリー家具の名作を生んだアメリカを代表するデザイン界の巨匠〕:
人が抱える問題に、限界などあるでしょうか?

アミック:
デザインは、一般的な表現方法のひとつでしょうか?

イームズ:
いいえ、行動方法のひとつです。

アミック:
一般人の行動は、デザインの進化を助けますか?

イームズ:
それが適切な行動であれば、どんなものでも進化させることが可能です。

アートかデザインか p144

アートとデザインはその境界線があいまいになりがちなため、ふたつをするには、最初にある程度知識を整理することが大切です。

アーティストとデザイナーのスキルセットや知識ベースには共通点が多く、作品に用いる技術、題材、ビジュアル言語といった点にも大きな差はありませんが、制作の動機がまったく異なります。
誰もが納得するような定義や明確な分類方法はありませんが、診断プロセスを進めるにあたって、アートとデザインのあいだに簡単な線引きをしておくとよいでしょう

アート
アーティストの創作は、たいていその人個人の関心事から生まれ、アトリエで好きなだけ時間をかけてそれを探求します。
完成した作品は、ギャラリーや特定の公共スペースに展示され、アートに興味をもつ人々に鑑賞されるのが一般的です。

デザイン
デザインはほとんどの場合、クライアントや外部組織のニーズや願望を満たすための「依頼」からはじまります。
デザイナーの提案する解決策には、機能性はもちろんのこと、訴求力、技巧、見た目の美しさなども求められます。
デザインはパブリックドメイン〔公有財〕であり、そのメッセージ、意味、機能は、鑑賞者やユーザーの政治、社会、経済への関心やその文脈と密接な関わりをもちます。

p156

1964年、ケン・ガーランド〔思想家でもあったイギリス人グラフィックデザイナー〕は、広告業界に異議を唱えるマニフェスト「First Things First」を起草し、同時代を生きるデザイナーたちとともに、広告は「消費者にモノを売りつける甲高い叫び声」であることを批判しました。
彼らが提唱したのは、「より有益で持続性の高いコミュニケーションのために、優先順位を逆転させる」ことでした。
最近の例では、メタハーヴェン (Metahaven) というオランダのデザインオフィスが、単純なグラフィックデザインから離脱し、政治や社会に関わる問題提起や批評に取り組みはじめています。