「コンサル一年目が学ぶこと」を 2,023 年 10 月 01 日に読んだ。
目次
- メモ
- 結論から話す p12
- PREPの型に従う p15
- ふだん話すときも、質問に答えるときも、PREPで、結論から話す p16
- 会議は、結論から逆算して運営する p18
- p28
- p32
- 世界共通言語は、英語ではなく、論理(ロジック)と数字。論理があれば、議論はできる p40
- p43
- 感情より論理を優先させる p46
- 論理さえ通っていれば、上の立場の人も耳を貸すが、曖昧なことを感情で説得しようとする若造は信頼しないと言っていました。 p47
- p52
- p56
- 社内用語、社外用語を明確にし、相手の使う言葉に合わせる p61
- 相手の期待値を把握する p64
- 相手の期待を超え続けることがビジネスの基本。そのためにはまず、相手の期待の中身を把握する必要がある p65
- 期待値を満たせないものは、安請け合いしない p70
- ロジックツリーを使いこなす p94
- ロジックツリーの基本は、コンサルティング会社に入らなくても身につけられる p98
- p104
- ロジックツリーを使いこなせるように鍛えるには? p104
- よいロジックツリーをつくるためにはフィードバックが必要 p106
- 雲雨傘 提案の基本 p110
- 事実、解釈、アクションを区別する p111
- 仮説思考 p120
- 議事録には、発言の記録ではなく、後日の証拠となるよう、決定事項を簡潔に書く p152
- エクセル、パワーポイントは、作成スピードが勝負 p170
- p173
- 仕事の速さを2倍速3倍速にする重点思考 p198
- 社会人は「消費者」ではなく、「生産者」。いかに会社に貢献するかと、その先の顧客の満足を考える p216
- p225
- 方法は問わない。人の手を借りてでも、約束を果たすことを最優先する p252
- 師匠を見つける p260
- p266
- 率先してリーダーをフォローする姿勢を示し、周囲に影響を与える p267
メモ
結論から話す p12
「まず、結論から話しなさい」
これは多くのビジネス書で書かれているので、一度は聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
それでもあらためてここで書かなくてはいけないのは、
これがコンサルタントとして学んだことのなかでもっとも役に立ち、いまも意識しているコミュニケーションの鉄則だからです。
そんなわたしもコンサルティング会社に入るまでは、物事は順番に話すのがふつうでした。
学校でも、起承転結、つまり順番通りに話しなさいと習った人のほうが多いはずです。
これを「演繹的な話し方」といいます。
「ああ、こうで、そうで、だから、こうなります」といった具合に、物事を順番に話していく方法です。
数学の式が、典型的です。
はじめに、aとbがあります。
次に、a+bは3です。
その次に、bは2以上の値をとります。
ですから、aは1以下の値になります。【結論】
このように、前提から順番に話しはじめ、徐々に展開して、最後に結論にいたります。
それに対して、結論から話す方法を「帰納的な話し方」といいます。
PREPの型に従う p15
結論から話す方法論としては、PREP法というものがあります。
まずこの原則を理解しましょう。
PREPとは、次の用語の頭文字を並べたものです。
Point = 結論
Reason = 理由づけ
Example = 具体例
Point = 結論の繰り返しで締める
ふだん話すときも、質問に答えるときも、PREPで、結論から話す p16
ふだん話すときも、思いついたことから喋るというをなくしてください。
一度、PREPの型を思い出して頭の中を整理する。そして結論から話すのです。
人はどうしても聞かれたことにすぐに答えなくてはダメだ、まず何かを喋ろうと焦ってしまいがちです。
そして、整理せずに、とりあえず思いついたことを言おうとしてしまう。
わたしにもそういうクセがありました。
人の質問に対して、詰まったり、何か返すことができないと、頭の回転が遅いと思われるのではないか、という漠然とした恐怖感があったからです。
で、その場を取り繕うために、とりあえず、何か言う。
しかし、そういうことは、ビジネスでは通用しないことがわかりました。早速一年目に指摘されたのです。
会議は、結論から逆算して運営する p18
結論がもっとも意識されるべき場面は会議です。
会議の際には、必ず「アジェンダ」を用意します。
アジェンダとは、要するに議題なのですが、日本語で議題というとかなり曖昧なものも含んでしまいます。
これに対し、アジェンダは、より積極的に「論点」とか「どういう結論を出すべきかというゴールイメージ」を列挙したものをさします。
たとえば、「この会議のアジェンダは、コンサルタント一年目でもっとも大事なスキルを30個挙げることが目的です。それが議論したいことであり、ゴールであり、結論になります」
このように、何を結論としたいのか、会議で何を決めるのか、それを数字に落とし込んで宣言してしまいましょう。
会議の最後で何が決まっていればOKなのか。
そのテーマこそが、会議のアジェンダとなります。
そして、どういう結論が得たいのか?
そのためにはどういう段取りをするのがよいのか?
どういうふうにそれを決めていくのか?
といったように、得たい結論から逆算して会議の運営をします。
これを意識するだけで、会議の方向性がブレにくくなります。
報告書はもちろん、日常のメールも、
話すときも、答えるときも、会議の運営も、
すべて、結論から。
PREPの型に沿って。
p28
ストレートに話をすると、空気が読めない、と言われることもあります。
けれども、それでもストレートに話したほうが、結局は信頼を得ることができます。
もちろん、利害が対立している相手との交渉といったような、
一方が得をして、一方が損をするもの(これをゼロサムゲームと呼びます)においては、
ごまかしたり、はぐらかしたり、嘘をついたり、そういうことが効果的なこともあるかもしれません。
交渉のコミュニケーションの本などでは、そういうゼロサムゲームで有効な策が多く提示されています。
けれども、実際の仕事の場面では、お互いが協力して、1プラス1が3になるような結果を出す人のほうがやはり評価されます。
同じ利益を追求しようとしている者同士ですから、率直にものを言い、駆け引きをしないほうがうまくいくものです。
p32
そもそも、営業社員はどういった顧客を訪れるべきだと思いますか?
もちろん売れている顧客、より正確に言うと、「予算をたくさんもっていて、実際に買おうと考えている顧客」ですね。
では、そういう顧客のところに、自社の営業社員はちゃんと足を運んでいるのか?
当たり前と思われるかもしれませんが、本当にそうなのか、数字による確認が必要です。
わたしは、その数字の分析を当時のマネジャーに指示されました。作業は地道なものでした。典型的な、新人の仕事です。
まず、営業の日報を取り寄せ、誰がどこに何回訪問したのかを集計しました。
そして、実際の売上実績や、マーケティング会社が提供する市場規模のデータとそれらを突き合わせました。
その結果、その会社の営業社員は、自社製品をすでに使ってくれている顧客に足繁く通っていて、
結果的に、予算があるものの攻めきれていない顧客には、たいして時間を割けていない傾向があることがわかりました。
部長が知りたかったのは、この事実です。
実際に、自社の営業社員がどういう行動をしているのか、部長は感覚的には問題を認識しつつも、
実際の数字としては、事実を把握できておらず、人を納得させる「証拠」がありませんでした。
ですから、わたしたちはコンサルタントとしてそれを調べあげました。事実は、予想された通り。
営業社員は、予算のあるところにではなく、行きやすいところに行っていたのです。
世界共通言語は、英語ではなく、論理(ロジック)と数字。論理があれば、議論はできる p40
グローバルな多国籍企業では、それぞれ考え方の土台や習慣が違うということは前提です。
これを多様性(ダイバーシティ)と呼びます。
どこかひとつの国の文化を全員に強いるということはしません。
その代わり、どんな文化の人でも、絶対に共通して認め合うことができるような単純なものを基礎とします。
なぜなら、日本人特有の言い回しをしても伝わらないし、じゃあ南アフリカ流を身につけようと思っても、すぐには無理だからです。
では、どんな文化の人でも絶対に共有して認め合えるものとは何なのか?
それが、論理(ロジック)と数字です。
英語ができなくても、裏で何を考えているのかわからなくても、論理と数字は相手に伝わります。
p43
違うところ、理解できないところは、合わせるのではなく、そのままにしておく。
それが多様性というものです。
そして、理解できる共通の言語は何かを探って、それでコミュニケーションをします。
ビジネスの世界では、それは論理と数字なのです。
感情より論理を優先させる p46
ここまで、論理と数字で話す、ということを述べてきました。
すると、反論として、本当の意味で人が動くのは、理屈ではなく感情からではないか、という声が聞こえてきそうです。
たしかに、ロジカルなイメージのあるコンサルタントといえども、ベテランともなると、
ときに感情に訴えたり、想いを伝えたりと、人情的な面を強調して話すことも少なくありません。
人を動かすことのできる本当に説得力のある話は、論理面と感情面、どちらも高いレベルで完成されているものです。
それでも、あえてわたしがここで、論理、論理、と言っているのは、
もし論理と感情、どちらを優先して身につけるべきかと、若い人に聞かれたら、やはり論理を優先すべきだと答えるからです。
今回わたしが取材させていただいたコンサルタントの一人であるアーンスト・アンド・ヤング・アドバイザリーの奥井潤さんも、
「新人ならば、まず、論理を優先して話すことを身につけなさい。感情や熱意で押していくことは、ベテランになってからでも間に合う」と言っていました。
なぜなら、「クライアントは、非常に賢い」からだと。
論理さえ通っていれば、上の立場の人も耳を貸すが、曖昧なことを感情で説得しようとする若造は信頼しないと言っていました。 p47
企業での第一線でビジネスをやっているような人は、
たとえ伝統的な、いかにも日本的なビジネススタイルで仕事をしているように見えたとしても、若い人が思うよりずっとずっと合理的です。
論理が通っていないことを熱意で押したり、ちょっと曖昧なことがある部分を感情で説得しようとしたりしても、すぐに見抜かれてしまいます。
そして、そのような態度をとる人は信頼されません。
まず筋が通っている話をもっていかないと、相手は話を聞いてすらくれません。
論理をおろそかにして熱意や感情だけで突っ込んでいくと、相手が経験豊富であればあるほど、うまくいかなくなるのです。
大企業はもちろん、どんなに小さな企業でも、経営者に近い立場の人ほど、より数字で物事をとらえ、合理的に判断しています。
経営者は、当然誰よりも成果に責任をもっています。
ですから、厳しい議論でも筋が通っていて成果につながるものならば、意外なほど耳を傾けてくれます。
責任ある立場の人ほど、数字と感情の区別がつきます。
最終的に納得してもらうためには、論理にプラスして、感情的な面でも優れている必要があるのはたしかです。
もちろん最終的にはそこを目指すべきですが、まず、話に筋が通っていなければ、話自体を聞いてもらえない。
スタートラインに立てないのです。
p52
人は案外、自分のことは自分でわからないものです。
そのコンサルタントは、ときに家族から根本的な指摘を受けることもあったとのことでした。
知識がない人に説明して、理解してもらえるかどうか試す。
このように、家族などに話してみて気づくのは、自分たちにとっては常識だと思っていることでも、
相手が同じことを知っているとはまったくもって限らない、ということです。
わたしの場合、これを理解して実践するのにとても苦労しました。
ついつい、このくらいは相手も知っているだろう、こんな簡単なことを説明したら逆に怒られるのではないか、
少し高度な話をしたほうが、相手も満足するのではないか、といった考えからどんどん小難しい話をしてしまっていました。
わたしがはじめて行ったロジカルシンキングのセミナーは、いま思い返しても散々なものでした。
アンケートの感想は「まったくわからない」「もっとやさしく話してほしい」ばかり。
そのお客さんから次の仕事の依頼はありませんでした。
これには、本当に落ち込みました。
以来、「相手はそのテーマについて何も知らない」という前提で話すことにしています。
勝手な思い込みは無用。
自分では常識と思っていることでも、相手は何も知らないという前提で、
ゼロから話す。
p56
相手の理解度を測るには、相手の仕草をひたすら観察することです。
たとえば、相手が資料をめくるスピード。
自分が1枚資料をめくって次に進もうとしたとき、まだ前のページをちらちら見ているということは、何か理解できていないことがあるということです。
一方で、ドンドン先のページをめくって読み進めているようなお客さまは、説明に退屈していて「要点を話してほしい」と思っているかもしれません。
社内用語、社外用語を明確にし、相手の使う言葉に合わせる p61
相手のフォーマットに合わせる、相手の土俵に合わせる、ということについては、相手の言葉に合わせるという点がかなり重要になってきます。
学生が社会人になって最初に知らなければならないことのひとつは、
社内用語、業界用語だと思いますが、同じことが、商談の相手の会社を理解するうえでも必要になってきます。
なぜなら、社内用語にこそ、その会社の独自の考え方が反映されているからです。
入社一年目の人なら、まずは、自社の社内用語を理解する必要があります。
と同時に、それが社外でも通用するものなのかどうかを知り、社内用語、社外用語をはっきりと区別するのです。
それを意識することによって、あらためて、自分たちがどういう考え方をするのか、
他人はどう考えるのか、ということを客観的に見ることができるようになります。
相手の期待値を把握する p64
この章の終盤として、少々高度なお話をしましょう。
高度ではありますが、非常に重要なことなので、この章に入れました。
「ビジネスをするうえでいちばん大事なものは何か?」
こう問われたら、あなたはどう答えますか?
やりがいとかお金とか、そんな個人的なことを聞いているのではありません。
どうしたら、常に評価と信頼を得られて、次にも仕事がくるようになるのか? ということです。
取材を通して、多くのコンサルタントにこの質問をしてみたところ、なんと全員の答えがずばり一致しました。
ひょっとしたら、あまり聞き慣れないことかもしれませんが。
それは、「相手の期待を超え続けること」です。
相手の期待を超え続けることがビジネスの基本。そのためにはまず、相手の期待の中身を把握する必要がある p65
「ビジネスというのは、突き詰めると、相手の期待を、常に超え続けていくことにほかならない。
顧客や消費者の期待を超え続けていくこと。上司の期待を超え続けていくこと」
期待値を満たせないものは、安請け合いしない p70
相手の期待がどこにあるのか、どの程度までのものであるかを把握するためには、そのためのコミュニケーションが重要になってきます。
一方で、ときには、相手の期待値そのものをマネジメントする必要がでてきます。
つまり、期待値を下げてもらうのです。
ときには、相手の期待値を下げる、
期待値のマネジメントも必要。
たとえば、相手がすべてにおいて100%を期待しているような場合。
自社のリソースをはるかに超えるものを、実現不可能な期日とコストで求められるような場合。
こうしたとき、決して安請け合いしてしまってはいけません。
常に、相手の期待値のちょっと上をいくことがビジネスの基本である以上、
どんなに努力したところで、相手の期待値が絶対に超えられない、とあらかじめわかっている案件は受けるべきではありません。
そういう場合は、本質的でない部分については期待値を下げてもらうように、
事前にコミュニケーションをとっておくことも必要です。これが、期待値のマネジメントです。
ロジックツリーを使いこなす p94
コンサルティング会社に入って学べるものの筆頭といえば、
ロジックツリー、構造化、問題解決手法といった、一連のロジカルシンキングや問題解決の手順です。
1 一生使える
ロジックツリーや問題解決手法は、時代に左右されないもっとも基礎的なスキルです。
そして、一度覚えてしまえば一生使えます。繰り返し役に立ち、応用することができます。
わたしが新卒で入社してからすでに15年がたっていますが、そのときに書かれた本は、いまも古くなっていません。
さらにいえば、大前研一さんや堀紘一さんが新人だった、さらに15年~20年前も、コンサルティングは同じ手法を使って行われていました。
つまり、すでに30年~35年間、基本的な方法論は、まったく変わっていないことが証明されています。
いまでも問題解決手法といえばロジックツリーですし、それは今後も変わらないでしょう。
3 捨てる能力が身につく
重要度が判断できるようになってくると、いらない部分を捨てて、
自信をもって重要な部分にだけフォーカスして時間を使うことができます。
重要な部分だけをやって、あとは捨てる捨てることができると、非常に効率的に、速いスピードで仕事が進められます。
多くの人が捨てることができないのは、捨てる勇気がないのではなく、単に何を捨てていいのかの重要度がわからないからです。
どれも大事な気がして、捨てる判断がつかない。だから捨てられない。
捨てるためにはロジックツリーを使い、全体像を描き、幹の部分と枝葉の部分を区別できるようになることが必要です。
ロジックツリーの基本は、コンサルティング会社に入らなくても身につけられる p98
わたしがロジックツリーの考え方にはじめて触れたのは、学生時代でした。
大前研一氏の『企業参謀』という本で知ったこの考え方に惹かれ、関連する本を読み漁りました。
特に、現在でも古典として読み継がれている『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』(齋藤 嘉則)はロジックツリーと問題解決のバイブルで、わたしは繰り返しこの本を読んでは練習をしました。
そのおかげもあってか、幸いなことに、コンサルティング・ファームに入社することができました。感謝しています。
コンサルティング会社に入れば、何か特別な方法論を学ぶことができるのではないか?と期待している人も多いと思います。
コンサル一年目で受けられるような研修を自分も受けることができれば...そう思っている人もいるかもしれません。
まさに本書は、そのためにあるものなのですが、実際、コンサルティング会社に入らなくても、その方法論を学ぶことはできます。
というのも、コンサルティング会社で最初に受けた研修も、先ほどの『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』と同じ内容だったからです。
英語で、 Issue Based Problem Solving という名前がついていましたが、
名前こそ違えど、「問題解決プロフェッショナル」の本で書かれていた方法論そのままでした。
それ以降も、コンサルティングの現場に投入されて、プロジェクトをこなしましたが、
実際のところ、この「問題解決プロフェッショナル」以上の方法論は使いませんでした。
つまり、結局のところ、コンサルタントの問題解決に、何かすごい裏ワザテクニックはありません。
とても基礎的な方法論を応用しているにすぎないということです。
p104
〈参考図書>
『企業参謀』『続・企業参謀』 大前研一(ともに講談社)
『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』 齋藤 嘉則(ダイヤモンド社)
「世界一やさしい問題解決の授業』 渡辺健介(ダイヤモンド社)
『3分でわかる問題解決の基本』 大石哲之(日本実業出版社)
『イシューからはじめよ知的生産の「シンプルな本質」』 安宅和人(英治出版)
『自分のアタマでかんがえよう」 ちきりん(ダイヤモンド社)
ロジックツリーを使いこなせるように鍛えるには? p104
実際にロジックツリーを身につけるためにはどんなことができるでしょうか?
現在は事業開発コンサルタントとして、またソプラノ歌手としても活躍する、秋山ゆかりさんが新人時代に行ったユニークな方法をご紹介しましょう。
それは、毎朝、通勤電車の中で、とにかく目に入るものすべてを使って、ロジックツリーを立てるというものでした。
たとえば、周りの人が読んでいるスポーツ新聞で、「ヤクルト、首位に踊り出る」という見出しが目に入ったとしましょう。
そこから「ヤクルトが強くなった理由は何か?」という問いを立て、ロジックツリーを使って仮説をつくる訓練をするのです。
中吊りの広告の見出しも同じように活用できます。見出しには、詳細は書かれていません。
ですから、「年100万円を貯める」などの見出しが目に入れば、すぐに「どうやったら、最速で年100万円貯められるのか?」という課題をつくることができます。
よいロジックツリーをつくるためにはフィードバックが必要 p106
わたしはロジカルシンキングの本も書いているので、こういうことを言うのは憚られますが、読者のみなさんのために、最後に、正直に書いておこうと思います。
課題を漏れなく、ダブりなく分解したり、意味のあるロジックツリーをつくるには、適切な指導者が必要です。
勉強会などで、若手社会人同士でロジックツリーのトレーニングをし合っている場面を見ることがありますが、あまり成果が上がっているようには見えません。
この手のトレーニングの問題点は、ロジックをつくっている張本人は、自分で間違いに気づくことができないことです。
結局、ツリーの問題点や論理のミスは、すでにそれができるようになっている人が指摘してあげないと、何がどう間違っているのかがわかりません。
雲雨傘 提案の基本 p110
コンサルタント一年目で学んだことのなかで、とりわけわかりやすく、すっと頭に入ってきたことのひとつに、雲雨傘の論理があります。
「黒っぽい雲がでてきたので、雨が降り出しそうだから、傘を持っていったほうがいい」
これは、事実と、解釈と、アクションの区別をつけることのたとえです。
いったいどういう意味でしょうか?
事実、解釈、アクションを区別する p111
雲というのは、「事実」をさします。
実際に目で見て観測したこと。雲が出ているということは、誰が見てもわかる客観的な事実です。
雨が降りそうだというのは、その事実から推測される「解釈」です。
雲が黒いという事実から、雨になるだろう、という解釈を引き出しているのです。
最後は、傘です。雨が降り出しそうだ、という解釈から、傘をもっていくという「アクション」を起こしています。
もう一度整理すると、次のようになります。
(事実) 「空を見てみると、雲が出ている」
(解釈) 「曇っているから、雨が降りそうだ」
(アクション)「雨が降りそうだから、傘をもっていく」
仮説思考 p120
「はじめに仮説有りき」――これは、コンサルタントの思考法のなかでも、もっとも重要な特徴のひとつでしょう。
たとえ一年目であっても、「仮説思考」でものを考えられることが徹底的に求められます。
「お前の仮説はなんだ?」
「仮説はできたのか? 仮説は証明されたのか?」
コンサルティング会社の社内では、常に、仮説、仮説、という言葉が飛び交います。
議事録には、発言の記録ではなく、後日の証拠となるよう、決定事項を簡潔に書く p152
では、コンサル仕込みの正しい議事録の書き方とは?
というわけで、これからご紹介します。
まず、新人がやってしまうもっともありがちな間違いは、発言録を書いてしまうことです。
誰々がこういうことを言ったというのを逐一書いてしまう。
あの人がこう言って、この人がこう言って、いろいろ意見がありました。
その発言を、時系列に記録したようなものをつくってしまうのです。
会議を録音して、それを文字に起こしたような感じのものですね。これはNGです。
本来、議事録とは、その会議で決まったことを書くもの。それが原則です。
非常に極端なことを言えば、途中の経過などは必要なく、その会議で何が決まったかを書く。
決まったことを紙に証拠として残すのが議事録です。
エクセル、パワーポイントは、作成スピードが勝負 p170
コンサルティング会社の出身者の隠れた武器に、「エクセル、パワーポイントの作成スピード」があります。
1日で40~50枚のパワーポイントの資料をつくってしまうというのは珍しいことでもなんでもなく、
コンサル時代はそれが常識だと思っていましたが、ほかの業界の人から見ると、異常なほどのスピードらしいのです。
コンサルタント出身で、現在は経営者になっている方にも意見を聞きましたが、
経営者になったいま、部下がたくさんいるというのに、「いまでも社内でいちばんエクセル表をつくるのが速い」というのです。
なぜ、これほどまでに差がつくのか? 次の2つの理由が考えられます。
1 コンサルの納品物はパワーポイントでつくるため、ツール操作のスピードが死活問題となる
2 ショートカットを多用して、マウスを使わない操作を身につけている
p173
自分の新人時代を振り返っても、新人のわたしがはじめて「戦力」として認められるきっかけになったのは、数字データの分析でした。
売上のデータを渡されて、それを整形して市場シェアの動向などを分析するよう言われたのですが、
売上データ量が半端なく多く、数十万行にも及び、エクセルではとうてい行数が足らず、動きません。
そこで、どうしたらできるかを聞いて回ったところ、
マイクロソフト・アクセスというデータベースソフトにデータを取り入れ、SQLという言語を使えばできるとのこと。
早速それを学び、得られたデータを、エクセルに入れてグラフ化する、という作業を自動でできるようなものをつくりました。
エクセルもアクセスも、触れたのは入社してからで、学生時代はまったく利用したことがありませんので、
ゼロから学ぶことになりましたが、ツールの効率化は大事で、もしこれを手作業で単純にやっていたら、多分、毎日徹夜をして作業をするはめになったことでしょう。
この経験を通して、データ処理のスピードが非常に上がったことは、一年生で何も武器がない自分にとって大きな自信になりました。
ツール操作のスピードだけは他人より速いので、その分、時間が稼げます。
その間に思考面などをキャッチアップする余裕が生まれます。
それは大きかったように思います。
仕事の速さを2倍速3倍速にする重点思考 p198
コンサルタントはとにかく仕事が速い。というか、尋常でない速さが求められます。
でも、彼ら、彼女らが抜きん出て優秀で頭の回転が速いから、それが可能になっている、というわけではありません。
人に与えられた時間は24時間と平等ですし、どんなにタフで頭の回転の速い人でも、
10倍も20倍ものスピードで作業ができるわけではありません。
そのスピードの秘訣は、「余計なことをやらない」ことに尽きます。
もっとも大事だと思うことのみにフォーカスして、瑣末なことは「たいした影響がないから、とりあげない」と割り切ります。
こういう考え方を「重点思考」といいます。「20対0の法則」ともいいます。
「売上の80%を、わずか20%の顧客がもたらしている」
「エラーの80%は、わずか20%の業務から発生している」
「組織のパフォーマンスは、トップ20%の人の働きによるところが大きい」といった話です。
つまり、その80%という大多数を決める20%の要素にだけ注目して仕事をしましょうということです。
20%だけ検討すればよいなら、スピードは5倍になります。
もしくは、同じ時間をかけるとすれば、20%の重要な部分を5倍の密度で深く掘り下げることができるわけです。
社会人は「消費者」ではなく、「生産者」。いかに会社に貢献するかと、その先の顧客の満足を考える p216
このスタンスの違いは、言い換えれば、「消費者」と「生産者」の違いです。
つまり、学生のうちは消費者でよかったのです。
学生はお金を払う立場ですから、大学の授業やサークル、ボランティア活動も、すべて消費です。
それらを通じて自分の満足を追求するという広い意味での消費活動です。
お金を払っているのだから、自分の期待と違ったときには、「思っていたのと違う」と、落胆します。
消費者の目線で「○○が足りない」という不満が出るのです。
ところが、会社に入っても、消費者のままの人がいます。
「会社が○○してくれない」「会社に○○が足りない」
でも、社会人になったあなたは、消費者の目線のままでいないでください。
あなたは会社のお客さんではありません。お金を払っているのは、あなたではなく会社なのです。
消費者目線でいる限り、会社に対して不満に思うところにばかり目がいき、自分の期待するものと違う、ということになります。
そして、もっといい別の商品がないか(転職)消費者目線で探しはじめます。
しかし、本来のあなたの立場は、生産者です。
会社に入った、一人のプロとしてあなたが行うべき役目は、会社に貢献することであり、
そして、その先にある消費者や取引先を満足させることです。
p225
日本の伝統的な会社では、下手な発言をしてはまずい、という空気があるかもしれません。
ほかにも、遠慮があったり、序列を考えなければいけなかったりという理由で、上司から発言を求められないかぎり喋らない、という慣例の会社もあるでしょう。
しかし、コンサルティング会社の価値観では、発言しない人の価値はゼロです。
方法は問わない。人の手を借りてでも、約束を果たすことを最優先する p252
もうひとつ、わかりやすい話があります。あるコンサルタントの新人研修時の話です。
その研修では、とても難しく、かつ期限に間に合いそうにない大量の課題が与えられたそうです。
あるコンサルタントは、とにかく必死に努力してなんとか課題を間に合わせました。
別のコンサルタントは、必死に努力したけれども、自分の実力ではどうにもならない部分があったので、人に聞きました。
それだけではなく、なんと、一部は他人に頼んで代理でやってもらいました。
その結果、自分では全部できなかったけれども、ちゃんと期日に、課題を完成させました。
2人の評価はどうなったでしょうか?
答えは、「同じ」です。
後者がダメだという評価にはならなかったのです。
これはつまり、約束したことをするのにあたり、当人たちが非力だった場合どうするのかという話です。
自己責任の観点から言えば、「能力が足りない自分が悪い」「徹夜しろ」と個人を起点に考えてしまいますが、
コミットメントの観点ではクライアントを起点に考えます。
ですから、自分たちで手に負えないと判断したなら、ヘルプを呼ぶことが正解になります。
誰かの手を借りてでも、極論を言えば、代わりに誰かにやってもらってそれをそのまま提出して間に合わせてもよいのです。
なぜなら、責任はクライアントに対して発生しているからです。
コミットする対象は、常に、クライアントとの約束です。
クライアントとの約束を果たすことが第一。方法は第二。
約束を果たすことが大事なのであって、一人でやり遂げることが大事なのではない。
自分たちの手に負えないときは、他人にヘルプを求めてでも最後までやり遂げる。
師匠を見つける p260
若いうちは、どのような仕事をするかより、誰と仕事をするかのほうが大事です。
ですから、仕事選びよりも、いっしょに仕事をする人選びを大事にしてください。
人格的に、能力的に、この人だと思う人の影響を受けることです。
コンサルタントは、プロフェッショナルな仕事です。
もちろんノウハウ化できたり座学で学べるようなスキルの部分もあるかもしれませんが、それは、すでに本になって、本屋に並んでいます。
言語化できるような仕事は、すでにコモディティ化(一般化)していて、差別化はできません。
それ以外の言語化できない暗黙知の部分こそがプロフェッショナルにとって大事です。
プロフェッショナルとは、神に宣誓する(プロフェス)というところからきている言葉です。
そこでは、利益や合理性といったものを超えた、非経済的なものが大事になってきます。
だからこそ、医者、弁護士、音楽家、スポーツ選手、なんでもプロフェッショナルと呼ばれる人は、技術のほかに、独自の美学や哲学をもち合わせています。
そして、その美学や哲学は、師匠のそばにいて、師匠の息を感じながらそれを真似ることによってしか身につきません。
この世界はいまだに徒弟制度です。
だから、一年目には、徹底的にそういう人のそばにいる必要があります。
以上は、わたしの言葉ではなく、今回取材をした山口揚平氏(ブルー・マーリン・パートナーズ代表取締役)の言葉です。
わたしもこれに強く同意するため、丸々引用しました。
プロフェッショナルの仕事のうち、言語化できる部分は、すでにコモディティになっていて、差別化できない。
これは茶の湯や武道における「守破離」の考え方です。
茶の湯や武道のような伝統的な師弟関係をとらえた言葉です。
「守」は、守る。まずは、師匠の一挙一動を真似る。息づかいから、何から何まで真似てみる。
「破」は、破る。師匠とは違った考え方や、ほかのやり方も覚えて、幅を広げていく。
「離」は、離れる。最後は、師匠のやり方、ほかのやり方を超え、自分なりの独自の技を生み出していく。
仕事にも応用できる「守破離」
守=師匠の一挙一動を真似る
破=師匠と違ったやり方を覚え、幅を広げる
離=師匠のやり方を超え、独自の技を生み出す
これは、仕事の覚え方にも通じるところがあります。
これでいえば、一年目は、徹底的に「守」、つまり、師匠の一挙一動を徹底的に真似るということでしょう。
今回の取材でも、各コンサルタント出身者が、いかに新人時代に「守」を徹底したのかについての話をよく聞きました。
たとえば、ある方は、マネジャーの喋り方間の置き方・メールの書き方・使っているペンの種類・服装・言葉遣い・食事の食べ方、はたまた怒ったクライアントへの対応にいたるまで、そのすべてを真似たと言います。
そこまで徹底して真似てはじめて、次の段階を目指すことができるということです。
言語化できない暗黙知の部分を、師匠から、徹底的に真似よ。
p266
フォロワーシップについては、象徴的で、とても有名な動画があります。
本書執筆時点ですでにYouTubeで280万回も再生されているので、目にしたことがある方もいるかもしれません。
その動画は、芝生のピクニック会場のようなところで、一人の男が突然、変な踊りをしはじめることから始まります。
彼は最初の提案者であり、リーダーです。黙々と、楽しそうに踊っています。
この段階ではたった一人なので、影響はありません。しかし、次の瞬間、事態は動き始めます。
2人目が、その男のそばに駆け寄り、いっしょになって踊りはじめたのです。
ほどなくして3人目が加わり、4人目が加わり、最後は、ピクニック場の数百人の人が一斉に踊りはじめました。
たった一人の男が始めた踊りが、数百人を巻き込んでムーブメントになったのです。
率先してリーダーをフォローする姿勢を示し、周囲に影響を与える p267
この動画には、2つの教訓があります。
1つ目は、最初の勇気をもって、一人で踊りはじめた男のリーダーシップを称えること。
もう1つは、2人目に踊り出した人の勇気に注目することです。
リーダーが最初一人で踊りはじめたときには、それは奇異なものでした。
おかしな人が踊っているだけ、と見ることもできたでしょう。
周りで見ている人にできることは2つ。
ひとつは、単にそれを無視すること。
もうひとつは、それに賛同を示して、リーダーを支える側に立つこと。
2人目の男は、誰の指示があったわけでもないのに、自分の判断で、最初の男のもとに駆け寄りました。
そして、いっしょに踊りはじめました。
この2人目の行為こそが、最初に踊った男を単なる変人から、リーダーに変えたのです。
そして、3人目のフォロワーが加わり、4人目が加わり、5人目が加わり・・・・・・そうして一気に数百人になりました。
一年目の新人にできることは、この2人目の男に相当します。
自らが新しい提案を創り出すような実力はまだなくても、リーダーを賞賛し盛り立てて、仲間に加わることは自主的にできるはずです。
ムーブメントは、リーダー一人から生まれるものではありません。
リーダーと同じくらいに、最初のフォロワーも大事なのです。
リーダー一人でムーブメントをつくることはできない。
どんな大きなムーブメントも、最初のフォロワーが重要となる。
あなたが一年目だとしても、フォロワーシップを発揮することはできます。
それが、言葉を変えると、「部下としてのリーダーシップ」なのです。
フォロワーシップがある人は、のちのちよいリーダーになります。
またよいリーダーは、先頭に立つこともできますが、一方で、他人をフォローすることも上手なものです。
一年目の仕事のなかでは、まずフォロワーシップを発揮してみてください。
もちろん、上司は選べませんから、たまたま気の合わない上司のもとにつくこともあるかもしれません。
しかし、それでも部分的には、賛同できるところ、盛り立てられるところがあるはずです。
小さいところでもいいので、フォロワーシップをあなたが発揮すること。
そうすれば、きっとチームは一体になっていくことでしょう。
フォロワーシップは、部下としてのリーダーシップ。
よきチームには、よきフォロワーがいる。